コ・デザイン デザイン参加の手法1

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「Co-Design、デザイン参加の手法」
スタンレー・キングおよびメリンダ・コンレー、ビル・ラティマー、ドルー・フェラーリ

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Co-Design(コ・デザイン、「一緒にデザインする」の意)は、地域共同体の中で人々が協力的かつ共同作業的に考えを寄せ合ってデザインする、というものです。Co-Designの作業には基礎的なスケッチと視覚化の技術を用い、一般の人々を招いて計画ワークショップを開きます。本書「Co-Design、デザイン参加の手法」は、デザインに関わるすべての人々がアイディアを視覚的に共有することによって、都市計画者、建築家、デザイナー、そして地域社会が確かなコミュニケーションを取れるようになる方法を示唆します。

人々が自分たちの周りの環境のデザインや計画にもっともっと積極的に関わる姿勢を強めている昨今、「Co-Design、デザイン参加の手法」は地域社会が都市計画に創造的に関わる上で有効な手法を提供します。本書ではCo-Designプログラムの全容を詳細に紹介しており、環境デザインへの既存の市民参加方法とは異なった効果的な方法を容易に習得できます。

地域社会の人々が持つデザインのアイディアをどのように議論し、焦点を当てるか、人々をデザインの過程でいかに導くか、人々のアイディアをどのようにデザインに生かすか、そして視覚化によってコミュニケーションを豊かにするための方法など、結果的に建築に役立つ過程を紹介しています。

Co-Designプログラムの基盤は、組織化すること、教えること、そして技術を伸ばすことにあります。市民参加型のデザインの背後にある理論、並びに、地域社会で開くデザイン・ワークショップで使う簡単なスケッチの技法を順を追った分かりやすい説明は、デザイナーと都市計画者にご活用頂けるものと思います。田舎の町の公園から都会の中心地まで、実際に行われたワークショップを例にとって生き生きとCo-Designの様々な活用法をご紹介します。教育的なコースやワークショップでの活動の例も多数あります。

本書は建築家スタンレー・キングの20年に渡る経験に基づいてまとめられました。197回の公開デザイン・ワークショップには延べ1万人以上が参加しました。過去10年間にはCo-Design協会として共著者たちとの協力によるチーム研究を行い、ワークショップの方法もさらに洗練されました。ワークショップの準備、トレーニング、コミュニケーション、公開デザインへの参加のすべてにおいて、有効な方法を確立するため、継続的な努力がなされています。

本書は、ワークショップの実例、インタビュー、分かりやすい解説、200点以上のイラストや写真などで構成されています。「Co-Design、デザイン参加の手法」は、対話型のデザイン作りを成功させるための斬新で有効的な手法として、建築や都市計画、造園デザインやプログラミングなどに携わるプロの方、地域共同体や企業、政府などで政策や方針の決定に携わる方、これらの事柄に関する活動をする学生や教育者など、幅広い分野の皆様に活用していただけます。

「著者および共著者について」
スタンレー・キングは建築家であり、南アルバータ州立技術学校(Southern Alberta Institute of Technology)の教師でもあります。彼はブリティッシュ・コロンビア州立大学で建築学の修士号のための論文を書いていた1969年にCo-Designの手法を作り出しました。その後20年間、スタンレー・キングと彼の独創的な手法は国際的に高い評価を受け、研究およびデザインの分野で多数の賞を受賞しました。

スタンレー・キングは、地域共同体が自分たちの環境を明確にデザインする手助けをするために、1979年に非営利団体Co-Design協会を設立しました。カルガリー大学の建築学の学生であって建築技術者でもあるメリンダ・コンレーとドルー・フェラーリ、さらに建築家であってエンジニアでもあるビル・ラティマーが加わり、Co-Design協会の中核メンバーとして活動を始めました。彼らは協力してCo-Designの技術を教え、熱意と興味を示した大勢のデザイナーやアーティストたちにトレーニングを施し、市民が参加した多数のワークショップを記録して本書の基礎を作りました。

表紙:1973年にバンクーバー市民1,000人を対象に行われたワークショップで最も人気の高かったイラスト。このワークショップのテーマは、当時荒れ果てた工業地帯跡地だったフォールスクリークの再開発だった。

左上:そのワークショップの結果として実現した造園デザイン。

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「Co-Design、デザイン参加の手法」
スタンレー・キングおよびメリンダ・コンレー、ビル・ラティマー、ドルー・フェラーリ

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本書をカナダおよび米国各地でワークショップに参加してCo-Designの手法の発達を促した1万人以上の若者たちと大人たちに捧げます。

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目次 (省略)

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「はじめに」
本書は、最終的に環境を利用することになる市民と共にデザインをイメージすることに関するものです。私たちは視覚化に重点を置いており、それが他の市民参加型のデザイン手法とは一線を画するところです。内容の大部分はスケッチ技術を育てることに当てられています。本書は私たちが行った190回のワークショップ経験に基づいており、それらを通して育んだガイドラインと技法をご紹介しています。

私たちが依頼されたワークショップのテーマは、大きな都会、地域社会の中のレクレーション・エリア、小さな町、都心部の住宅地、大学の学部、学校、協会、オフィス、商業センターなどです。それらに共通して必要だったのは、自分たちの環境をデザインする上での手助けであり、様々なアイディアを一つの概念のもとにまとめる方法でした。

私たちは本書において、人々がアイディアを議論するときに中心となる主題を提供する方法、デザインの過程を通して人々を導く方法、アイディアにデザイン的な側面から肉付けする方法、そしてコミュニケーションを視覚化によって容易にする方法をご紹介します。一言で言えば、建築を容易にする方法を描写しています。

さらに、参加者がデザインの過程に加わりやすくなるような「分かりやすい」絵を描く方法を教えます。私たちは、対話を促し、のちに正確なデザインのデータを提供するものとしての建築技術である、「その場で情景を描き出す絵」を描くことに重点を置いています。アーティスト訓練のコースを開いたときに最もリクエストの多いのが、スケッチ技法です。スケッチに関する本は多数出回っていますが、それらではカバーされていないこうした技法を本書では詳しく説明しています。読者としては、基礎的な遠近法と人物画の技術のある方を想定しています。スケッチの入門書ではないことをご了承ください。

本書の全体を通して使用されるCo-Designという言葉は、地域社会における(Community)、協力的(Cooperative)で共同作業的( Collaborative)なデザイン、という意味を総合したものです。私たちがCo-Designのアーティストについて語る場合、私たちが指しているのは他者の指示に基づいて人々や情景を描く高度な技術を持った人のことです。Co-Designのアーティストには、建築された環境のデザインに関する基礎的な知識があること、つまり建築、都市計画、建築技術、造園建築、インテリアデザイン、都市デザイン、立体造形などの素養が必要となります。本書では「建築」という言葉を広義で用いており、これらの職業技術のすべてを含みます。「環境デザイン」という言葉でなく「建築」を使うのは、本書の著者が元来建築家であり、他国における同様の業績が建築家によってなされているからです。ボランティアとして本書の制作に参加したライターたちはプロのライターではありません。ワークショップの概念を理解して記録を取るためのトレーニングを受けた、地域社会の人々です。

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「Co-Designの名前の由来」
地域社会における(Community)、協力的(Cooperative)で共同作業的( Collaborative)なデザイン=Co-Design

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「本書の読者想定、および望み」
本書は以下の5つの種類の読者を想定しています。
1、プログラミングおよびデザイン建築、プランニング、都市デザイン、インテリアデザイン、および造園デザインを職業とする人。顧客およびユーザーにデザインに参加してもらう上で有効なガイド、および大きな地域社会と生産的にコミュニケーションを取る方法を示します。

2、上記の職業を目指して学んでいる学生には、それぞれの分野でのデザイン手法の開発に役立つガイド、デザイン対話を導く方法、そしてデザイン・スケッチの技術を伸ばす方法を教えます。本書を活用することによって、将来的に顧客やコミュニティーと創造的に働く技能を身につけることができます。

3、地域社会、企業、および政府で方針や政策の決定に携わる人、ならびに人々を意思決定に参加させる手法において多数の成功例を求める市民による計画委員会の人々。

4、企業の中間管理職にある人、および彼らが市民参加プログラムを実行する上でアシスタントとなる人。本書は組織化の過程をステップ・バイ・ステップで紹介し、作業の遂行を容易にします。

5、小学校から大学にいたるまで、様々なレベルで教育に携わる人。本書は学生が自分たちの学校や近隣の地域や都市内のエリアのデザインに関わった多数の事例を段階を追って説明しています。
市民が意思決定に参加することの重要性がますます認識されるようになってきている現在、本書は読者が環境を創造的にデザインする際に人々を効果的に導く能力を育みます。

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空白

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「謝辞」
Co-Designは子供たちと共に始まりました。彼らは怒りに燃える目で私を取り囲みました。彼らの中には私の息子もいて、彼は「ブルドーザーが僕たちの遊び場を壊しているよ。そんなことが許されているの?どんな決まりがあるの?」と叫びました。大人にとってはただの空き地でしたが、子供たちにとってはそれは、自分たちで切り開き、木の上に砦も作って自分たちの領域と決めた大切な場所でした。彼らの環境を破壊し、それなのにその意思決定に彼らを含めなかった開発に対して、彼らは強い疑問と怒りを感じていました。それがCo-Designのきっかけとなったのです。

これは、Co-Designの過程がシンプルであることや、使われる言語が直接的であること、そのイメージ、そしてそのデザイン認識が知性を通した経験というより感覚的なものであることなどに反映されています。1960年代半ば当時、モントリオールには建築ブームが起こっていて、多数の古い建物が取り壊されていました。市内のそうした古い住宅地を訪れて美しい建物のスケッチをするにつれ、私は自分が破滅の使者であるかのように感じ始めました。私が訪れると、まもなくこれらの建築物は取り壊され、無味乾燥で世界中どこにでもあるような大規模開発の建物に取って代わられるのです。住人たち、とくに子供たちは、こうした破滅を食い止めるには自分は無力だと感じていました。

私は彼らの不安や疑問に対応しようとしました。そのとき以来、私は家族や友人たちや、やがては建築学その他でプロとして働く同僚たちの助けを得て、答えを見出そうという努力を続けています。私は彼らと共に本書を著しました。

最初は、教育を通した答えを目指しました。美術教師である妻のマーガレットと3人の子供たちと共に多くの学校を訪れ、教育資料を作成し、都市開発の過程を説明するために配布しました。これには多くの教育者のご協力を頂きました。特に、BC州立大学のエメリタス・フランク・ハードウィック教授、バンクーバー教育委員会のゲイリー・オンスタッド氏、サイモン・フレーザー大学のミルト・マクラレン教授、そしてビクトリア大学のマーク・ベル教授です。

国立芸術寄金のアース・エリクセン氏は、建築された環境に関する教育というご自分の研究で手助けしてくださり、建築家と教育者の会議で私が自分の研究を発表する手配をしてくださいました。イギリスの「都市と田園計画協会」の教育担当者であるコリン・ワード氏は、私の研究および同様の研究をしている他の人たちの仕事に関して文章を書き、激励してくださいました。子供たちと一緒に行った研究は実際のデザイン問題に関するものであり、親たちや他の大人たちも参加しました。

(挿絵)遊び場がブルドーザーで壊されているよ。どんな決まりがあるの?

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カナダ政府からは、1970年代にこの手法をさらに発展させるために補助金を授与していただきました。都市問題に関する担当大臣であるロン・バスフォード氏、都市問題に関する担当大臣代理であるピーター・オバーランダー氏、首相室のコートニー・タワーズ氏からは、特筆すべき助力を賜りました。また、国立映画局の局長であるバリー・ハウエル氏は、私のワークショップの様子を収めた「チェアズ・フォー・ラバーズ(恋人たちの椅子)」という映画に多大な励ましを下さいました。

また、建築と都市計画に関わる大勢のプロの皆さまから積極的な支援を頂きました。特に、共にバンクーバー市の都市計画部長であったウィリアム・グラハム氏、続いてレイ・スパックスマン氏、カナダ地域計画協会のヒルダ・サイモンズ氏、ジョン・デス氏、ならびにガイ・スペンサー氏、ブリティッシュ・コロンビア州立大学の建築学部の部長であるヘンリー・エルダー氏、そして当時そこで学ぶ学生だったメリー・ベッカー氏とキャサリン・アーバネック氏からは、特筆すべきご協力を賜りました。

1979年、アルバータ州のカルガリーで建築ブームが起きていた頃に研究の規模は拡大しました。非営利団体Co-Design協会を設立したのはこの頃です。中核メンバーには、アーティスト、建築家および建築技術者がいました。メリンダ・(ミンディー)・コンレー氏は、この中核グループの会計係兼秘書のボランティアとして継続的かつ効率的な奉仕をしてくださいました。

ワークショップでのアーティストの技能が優れていれば参加者からの反応が大きいことが分かると、私たちはカルガリー、およびブリティッシュ・コロンビア州のビクトリアとペンダー・アイランドでスケッチのクラスを始めました。中でも特に才能があって熱心に勉強を続けた生徒たちであるメリンダ・コンレー氏、ビル・ラティマー氏、およびドルー・フェラーリ氏は、やがてワークショップの運営や協会組織の中心として指導的な活躍をするようになりました。彼らは現在では本書の共著者であり、彼らの協力なくして本書はあり得ませんでした。

カルガリーの南アルバータ技術学校の建築技術コースの指導主事であるフレッド・クリングベール氏からは長年に渡る支援を頂きました。また、同学校の他の多くの同僚たちや学生たちからも様々に支えていただきました。

カルガリー大学の環境デザイン学部のタン・リー教授およびロバート・カービー氏は、一時的な宿泊の手配やコンピューターの使用などを通して支援してくださいました。また、本書の共著者であるメリンダとドルーの研究作品を、同大学における建築学の修士課程で指定学習材料の一部として使用していただきました。また、同大学では、図書館でのコンピューターを使ったリサーチにマイク・ブリッジズ氏が、そして絵の複製ではランディ・ハドレー氏が協力してくださいました。カナダ都市計画従事者協会のアルバータ支部は、私たちの研究に激励と資金面での多額のご協力を賜りました。
Co-Design協会のメンバーたちは皆、アーティストあるいは運営担当者として多くのワークショップを行いました。中でも特記すべきは、妻のマーガレット、オードリー・クリスティー氏、ジーニー・カリン氏、エリザベス・アレン氏、ピーター・ウォルシュ氏、ワレン・ガウル氏、ロバート・アグニュー氏、そしてチャック・スミス氏です。娘のシリアは研究およびワークショップ現場での写真撮影で協力してくれました。

フリーランス作家のリン・マクダウエル氏、タン・リー教授、そしてアンドレ・アイフリッグ氏は、原稿の編集において洞察の深い助言を下さいました。カルガリー市役所の都市計画者であるフィリップ・ダック氏は、地域社会とプロの都市計画者の間に架け橋を作る上での激励とご指導をくださいました。
本書を作るまでに、カナダとアメリカで若者たちと大人を合わせて1万人ほどの人々が参加しました。彼らの一人一人が、反応や熱意や激励を通してこの研究に貢献しました。彼らは自分たちの好みをはっきりと表し、その結果、何百という公共の場がもっと人間的なものとして完成しました。おそらく、これこそが25年前に私の息子と彼の友人たちが求めていた答えなのだと思います。彼らの怒りのこもった苦情は、場所を利用する人々、特に若い人々は、その場所の未来について議論するときに積極的に参加したちと思っていることが私には今では分かるのです。彼らの訴えは正当なものであったことが、こうしてはっきりしました。

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第1部 市民参加の必要性に応える

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by ammolitering7 | 2013-01-22 14:52 | 「コ・デザインの手法」


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