第10章 (イラスト込み)

第3部 コ・デザインのプロセスの実例
第10章 コミュニティー計画

1、千人以上の人々が関わったコミュニティー・レクレーション施設:1985年8月、BC州ビクトリア市エルク・ビーバー湖地域公園
多くの人々に利用されている公園の環境改善計画と意思決定にあたって、地域公園管理課が公園利用者に参加の機会を提供しました。

1-1 概略
エルク・ビーバー湖コ・デザイン・プロジェクトは、首都地域公園課とBC州ビクトリア大学との協力によって実現しました。目的は、エルク・ビーバー湖地域公園のハムスターリー海岸地域の改善にあたって、公園利用者、特別利益団体、および公園スタッフから意見を聞くことにありました。

調査には、一般市民のほかに、ビクトリア大学の環境研究プログラムで環境学を学ぶ25名の学生たちがユーザー・クライアントとして参加し、環境的な側面、そして市民参加に重点を置いた意思決定手法の研究を行いました。

1-2 調査の対象範囲
(第1段落)エルク・ビーバー湖はビクトリア市の中心部から車で15分以内のところにあるレクレーション地区であり、多くの人々に利用されています。ブッチャートガーデンのような人気の観光地や、BC州バンクーバー市やワシントン州アナコルテスへのフェリー乗り場にも近い場所です。

(第2段落)調査では、ピクニック用の建物、飲食物の売店、トイレ、アクティビティー・エリア、商業地区、管理用の建物、駐車場などを含む、エルク・ビーバー湖公園の改善のための建築および造園デザインを行いました。

デザインには、当時は公園内の柵に囲まれた部分に制限されていた身体障害者のための特別施設も含まれました。また、ボート類(モーターボート、帆船、カヌー等)利用者などの特別利用者団体のための施設も含まれました。

1-3 デザインの流れ

デザインはいずれも、以下のような共通の過程に沿ってなされました。

(1)実用的なプログラミングをする。
(2)特別なデザインを考慮する。
(3)内容積と外部物質の関係、建物面の調査、機能的関連性と隣接地、照明、および音響に関する部分をデザインする。
(4)コンセプトデザイン案を用意する。
(5)最初のデザイン基準にのっとった好ましいコンセプトデザインの分析と選択を行う。
(6)クライアントに見せるために、選択されたデザインをスケッチ画にする。

学生たちとのセミナーによって、現地の共感(エンパシー)、動き、景色、黄金率の比率、光、音、テクスチャー、アーチの内側とその上部にある看板の接合部、柱と梁の間の接合部など、デザインの幅広い側面を調査しました。調査の際に行われた議論はデザインの流れの中に組み込まれました。

1-4 コ・デザインのワークショップ
(第1段落)プログラムは、情報とフィードバックの継続的なソースとしてユーザー・クライアントからのインプットに全面的に依存しました。エルク・ビーバー湖プロジェクトは、一般市民と公園スタッフの参加によってインプットの幅を広げました。第一段階では、ワークショップを2回開きました。1回は環境学の学生用、もう1回は一般市民を対象としました。

(第2段落)最初のワークショップでは、ユーザー・クライアント役の学生たちは、コ・デザインのデザイナー役の建築学の学生たちと一緒に作業を行いました。ワークショップの後で、 ユーザー・クライアント役の学生たちは、環境保護あるいは公園の改善のためのアイディアを描写して書き出しました。コ・デザインのデザイナー役の建築学の学生たちは、これを受け取ってパーツのデザインをするときの指標として使いました。

(第3段落)一般市民のために開かれた次のワークショップは、環境学と建築学の学生たちが主導しました。現地での活動を書き出し、現地の視察も行った後で、環境学の学生たちは公園利用者から出された数百ものアイディアを基に議論を促し、描写された事柄を記録しました。建築学の学生たちは、参加者の指示にしたがって描画しました。

1-5 ワークショップの反応を査定する
(第1段落)ワークショップの翌週、環境学の学生たちは二つのワークショップイベントで得られた情報を要約しました。この第2段階では、現地の特別な特徴を考慮するため、そしてアイディアをもっと詳細に描写するために、クリストファー・アレキサンダーの著書「パタン・ランゲージ」を参照しました。そして、コ・デザインの指導スタッフは彼らに、建築学の学生たちがワークショップで描いた活動環境について、自分の好みを詳しく描写するように指示しました。

(第2段落)一方で、建築学の学生たちは実用的なプログラミングの段階を開始しました。これには以下のようなものが含まれます。

(1)現地の査定と機能的な関連性の予備的な図(気泡型ダイヤグラム、関係のマトリックス、その他のシステム)
(2)パーツの予備的なデザイン。それぞれの案に構想計画を伴った詳細な関係図をつける
(3)身体障害のある利用者のための環境やピクニックをする人のための環境など、それぞれのパーツのための予備的なデザイン

(第3段落)最初の週には、建築および環境の分野においてなされる仕事の流れを補足するために、様々な議論がなされました。たとえば、ビクトリア市公園管理課が行った、意思決定と市民参加の手法の調査では、手順計画に関する議論が行われました。管理課の担当者が、地域の公園の管理や融資と予算のための手順について、学生たちに講義をしました。

1-6 パーツをデザインする
第2週は、主に第3段階、つまりパーツのデザインに集中しました。まず、建築学の学生たちがユーザー・クライアントと公園スタッフにパーツのための予備デザインを提示しました。パブ・レストラン、駐車場兼ウィンドサーフィンの準備のための場所、レンタルスペースのある一般用のドックなどのデザインです。

予備デザイン画には、遠近図、設計図、断面図、照明の調査、建築的な細部の調査などが含まれます。ユーザー・クライアントと公園スタッフは、建築学の学生たちによるデザインが利用者の期待に沿うように、最終的な意見を述べ、更なるアイディアを提案した後、優先するアイディアの選択を行いました。

1-7 参加者たちが自分たちで出したアイディアに否定的な反応を示す

(第1段落)この段階で、ユーザー・クライアントは自分たちのアイディアに対して非常に否定的な反応を示しました。彼らは、自分たちの出したアイディアが壮大すぎて、現地の自然な性質を壊しているということに気づいたのです。過剰開発のアイディアが建築家あるいは開発業者の中の何らかの匿名の力ではなく、自分たち自身から発していたことをユーザー・クライアントたちは知ることになりました。

それから彼らは自分たちのもともとの考えを翻し、公園の自然な環境が主体で、商業的な側面はあくまで従属的であるべきだ、ということで同意しました。彼らは、建築学の学生たちが描いてくれた自分たちのアイディアの多くを放棄し、新しい期待を持って対話をやり直しました。

(第2段落)これは、市民参加の手法がうまくいかなかったということでしょうか?そうではありません。普通の開発計画では、模型と詳細なプレゼンテーションを添えた、時間とお金をかけて作った洗練された提案書が作られますが、それでもアイディアは退けられるものです。今回、ユーザー・クライアントが公園の美を守ることの大切さに自ら気づく機会が得られたので、ワークショップは大成功でした。

開発の規模を縮小されることになり、クライアントもデザイナーも、開発に対する新しい理解と繊細さを共有することになりました。結果として以後のワークショップは、現存する自然の性質を引き立てることと、飲食施設と情報センターのためのさらに改善されたデザインを作ることという、2点に集中することになりました。

この時点で建築学の学生たちは、ユーザー・クライアントによる最終的な認可のために、様々なパーツのデザインを提示しました。ユーザー・クライアントは建築家役の学生たちに、作業を続けてスケッチ・デザインの段階に入るように、そしてパーツのデザインを総合的なコンセプトデザインにまとめるように指示しました。

1-8 最終的なデザイン
(第1段落)最後の第3週目には、ユーザー・クライアントからコメントを集めるための一般展示の準備として、最終的に選ばれた案を建築家役の学生たちが入念なスケッチの形にしました。

(第2段落)結果は非常に肯定的でした。それぞれのユーザーは、デザイナーの描画能力を通してプロジェクトの中で特定のパーツを作成することができ、それを別のパーツについて調べていた他のユーザーの結果と比較することができ、さらに、パーツがどのように現地の包括的な計画に適合するかを見ることができました。

最後には、アイディアのすべてが利用できるわけではなく、すべてが適切なわけでもありませんでした。しかし、ユーザーは計画に貢献する機会を得て、自分のアイディアが適切かどうかを自ら判断する機会を得ました。

公園スタッフと地域の公園管理課を含むユーザー・クライアントは、公園の可能性についての高揚感を表明し、「市民参加エクササイズは開発の問題点に対する最も実用的な解決策であり、適切な意思決定のための優れた手段だった」という感想を述べました。ワークショップの結果は行政の基本計画に取り込まれました。
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(イラスト)「パーツのデザイン」を描いた例。
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by ammolitering7 | 2013-06-22 03:34 | 「コ・デザインの手法」


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