第15章 (イラスト込み)

第15章 特定の建物

1、特定の用途のための施設をデザインする:1986~87年アルバータ州カルガリー市ロバート・マククルア合同教会

未来の教会施設のプログラミングとデザインにおいて、信者たちがデザイナーを直接支援しました。

1-1 概要
1986年9月、ロバート・マククルア合同教会の建築委員会は、未来の教会施設の計画とデザインに参加型の手法を取り入れる意思を表明しました。委員会は、信者たちの創造的なエネルギーとアイディアを取り入れることでプロジェクトへの熱意と関心を高めようとしていました。

委員会は、(子供と高齢者を含む)信者全体の参加は有意義なもので、メンバーの「信仰の家族」としての感覚を強めると感じていました。また、カナダ合同教会に申請書を出して資金援助を要請する段階になったら、申請書に盛り込まれたデザイン案は信者全体が共同的な努力をした結果である、という事実はおそらく有利な結果をもたらすでしょう。

1-2 信者の参加を促す

(第1段落)コ・デザインのワークショップは、教会員がデザインの可能性を探ったり、共通の目標を明らかにしたり、優先順位を定めたりするのに役立ちました。信者は100人以上いて、その数はさらに増えつつありましたが、そのメンバーたちが合意を探るための手段となったのです。

(第2段落)信者たちは自らボランティアを組織化する仕事を買って出ました。最初のワークショップは、12月の肌寒い日曜日に建築予定地近くの学校の体育館で行われました。その頃、信者たちはその体育館で礼拝を行っており、ワークショップは礼拝の直後に開かれました。ワークショップ・イベントはまず子供たちから始まり、「壁の町」エクササイズを通して、自分たち自身の環境を計画することの問題と可能性について学びました。

(第3段落)続いて、信者たちは新しい教会で行うであろう様々な活動について考え、それを口々に述べて大きな紙に書き出しました。このエクササイズを通じて、新しい建物が内包することになる様々な機能のすべてが描写され、教会の「一日の暮らし」の完全な輪郭が生まれました。

(第4段落)それから皆が車に分乗し、近くにある建築予定地を訪れました。コ・デザインのアーティストたちの周りに信者たちのグループが集まって、これまで想像の中でだけ温めていたアイディアを熱心に議論し、アーティストはそれをメモに取りました。

子供たちは、新しい遊び場がどのように配置されるかと想像しながら、現地に盛り上げられた土の山の間を跳ね回りました。牧師と聖歌隊の指揮者は、聖歌隊の練習部屋に朝日が当たるように配置するにはどうしたらいいかと議論しました。

婦人信者たちは、例年の七面鳥料理の日に持ち寄った料理を車から運び出すのを便利にするために、搬出口をどのようにしたらよいか、と議論しました。誰もが自分がよく馴染んだ特定の活動との関わりで現地を見ていました。

(第5段落)午後の作画ワークショップは、創造的な議論と絵で賑わいました。コ・デザインのアーティストと信者たちは、活動を書き出したときに挙げられた項目からそれぞれどれか一つを選び、そのための理想的な環境を明らかにする作業を始めました。

夕方には、礼拝、社交的な活動、託児所、子供の教室その他の教育プログラム、運営とサービス、音楽のリハーサルおよびキッチンのための環境など、マククルアの信者たちの暮らしを描いた大きくてごちゃごちゃした絵が体育館の壁に並びました。
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(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市、ロバート・マククルア合同教会)
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(写真)現地の視察:新しい教会のための条件をあらかじめ調べる。(撮影:ジョン・マッケンジー)
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(写真)新しい教会のための作画ワークショップ。(撮影:ジョン・マッケンジー)

1-3 パーツのデザイン
(第1段落)コ・デザインのスタッフは、これらの様々な個々の絵をパーツとして描きましたが、次にこれらを一つの全体にまとめなければなりません。パーツは、そのままではまだデザインの問題への解決策ではありません。それはむしろ、問題は何なのかと明らかにするための、そして信者たちに礼拝の場をデザインすることの複雑さを理解してもらうための一歩なのです。

(第2段落)その後およそ2週間に渡ってコ・デザインのスタッフは絵に含まれるメッセージを分析しました。まず、それぞれの絵に秘められた活動のパターンを探し出し、クリストファー・アレキサンダーの「パタン・ランゲージ」に示されているようにパターンのリストをまとめました。

表れたパターンは、ワークショップで描かれた複数の絵の間に共通項を作り出しました。幾つかの要素が姿を変えながら繰り返し表れていることが分かりました。

(第3段落)続いて、教会の暮らしの中で特に重要なストーリー(側面)を表す絵コンテが描かれました。結婚式のストーリー、牧師のストーリー、日曜学校のストーリー、聖歌隊の練習のストーリーなどです。これらは、様々な活動の間の繋がりを一時的かつ物理的に探る助けとなりました。既に、建築的な形と設計図上の配置という形で、信者たちのコメントの結論が明らかになり始めていました。このようにして、コ・デザインのプロセスはプログラミングとデザインを融合させました。

(第4段落)また、ワークショップの絵と言葉による描写は、物理的な空間の必要条件、空間的な関係、隣接地との関係などの側面からも分析されました。これにはもっと伝統的なプログラミングの手法を使って、ワークショップの資料から情報を数量化し、プログラム的、技術的かつ建築的な用語で表現し直されました。

1-4 優先順位を明らかにする
(第1段落)コ・デザインのスタッフは調査の結果をもって信者たちのところへ戻り、信者たちにあらかじめ番号を振った回答用紙を使ってすべての絵を評価するように頼みました。用紙には、自分の個人的な好みに基づいて活動の優先順位を記録し、また、活動が行われる場所についてのコメントをするように指示されていました。評価は単純化された評価方式(1、2、または3)でなされました。

(第2段落)この2回目のワークショップは少々の時間を置いてアイディアを考え直す機会になり、最初のワークショップで出た多くのアイディアが改変され、あるいは明確化され、あるいは却下されました。信者たちがすべてのアイディアを一度に見直して比べることができたからです。これには活発な議論が伴い、信者たちの間で優先順位に関する討論と質問が交わされました。

(第3段落)「本当に託児所のための別の台所が必要だろうか?」、「これとこれは同じ部屋に組み込むことができそうだ」などです。こうやって信者たちは自分たちの前にあるエキサイティングな可能性に気づき始めました。重要なのは、彼らがこの結論に自ら達したということです。

(第4段落)教会の信者たちのような限定されたグループには、幾つかの特徴があります。おそらく、他のどのユーザー・クライアントグループよりも、彼らはずっと短時間で、非常に高い水準の合意に達することができます。おそらく、価値観の好み、文化的な繋がり、および社会的な背景におけるメンバーの相似が理由です。

これは、そのようなグループには内部の葛藤や相違がないということを意味するのではありません。コ・デザインの手法は、これらの相違に焦点を当てるのではなく、彼らが合意する部分に焦点を当て、内なるコミュニティーの感覚を強めるのを助けます。このワークショップによって、資金援助の申請時にカナダ合同教会に統一した意見を提出した際、信者たちにとって有利な結果となりました。
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(イラスト)ロバート・マククルア合同教会のためのコンセプト画:
A.立面図。
B.平面図。

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by ammolitering7 | 2013-06-22 03:53 | 「コ・デザインの手法」


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