第16章 (イラスト込み)

第16章 子供たちと一緒にデザインする

1、子供たちが自分たちで運動場をデザインする:1986年5月アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校

教育委員会、都市計画者、政治家など様々な関係機関と協力し、子供たちも参加して、より良い運動場を作るためのデザインをしました。

1-1 概要

(第1段落)ブライアー・ヒル小学校の運動場は、官僚的な実利主義の対象となっていました。風に舞い上げられる砂埃をコントロールするために、教育委員会が運動場全体を舗装してしまっていたのです。治療が病を悪化させるということの良い例です。コミュニティーの人々と学校長は、もっと良い解決策があるはずだと感じていました。

(第2段落)コミュニティー委員会も運動場の改善に関心を持っていました。高速輸送機関の拡張によって公園用地が失われたことに対する補償金もあり、委員会はその資金を運動場の改善のために使うことを検討していました。公園用地は行政と市民との苦い戦いの後で接収されたので、落胆していた市民もこのプロジェクトで精気を蘇らせるかもしれないという期待もありました。

(第3段落)さらに、都市計画課はコミュニティーが将来的に必要なものを明らかにするための計画を開発中であり、運動場に関する議論を通じて出されるすべてのアイディアを歓迎する姿勢を見せていました。コ・デザインは、運動場の改善のためにアイディアを出すことに焦点を当てた一連のワークショップと、別に二つの市民ワークショップを開くように依頼されました。

(第4段落)ワークショップは春の間に一回45分のワークショップのシリーズとして開かれ、まず「壁の町」の絵で始まりました。学校の体育館に90人の子供たちが集まり、賑やかでエキサイティングな描画エクササイズを通して大きな町の姿を描きました。

(第5段落)自分では住みたくないような都市を描いてしまったことに気づいた子供たちは、自分たちが楽しめるような運動場を作ることに集中しました。最初の回は、改善された運動場での活動を書き出したところで終わりました。

(第6段落)体育館での次のワークショップの間、生徒たちは自分が描きたいと思う活動を選び、教室に戻ってそれぞれの描画を続けました。絵は20インチx30インチ(およそ50センチx75センチ)の紙に油性パステルで描かれました。

(第7段落)第3回目では、生徒たちはコ・デザインのスタッフに自分の絵を見せて語り、絵をさらに説明するために言葉を加えました。
f0239150_3564115.jpg

(写真)ブライアー・ヒルの改善前の運動場。(撮影:ビル・ラティマー)
f0239150_357541.jpg

(写真)改善前、この運動場は完全に舗装されていた。前後の写真を比較のこと。(撮影:メリンダ・コンレー)

生徒たちは次に絵を評価するための基準を定めました。アイディアはどれも良いものであり、以下のように評価されました。

(1)実現しよう!
(2)もっとデザインが必要だ。
(3)お金が掛かりすぎるようだ。
(4)運動場より他のところに向いている。
f0239150_3573487.jpg

(イラストの写真)生徒たちは自分たちの描いた絵に投票し、空中ケーブルを最優先事項として評価した。そして望み通り、空中ケーブルが作られた。(撮影:ビル・ラティマー)
f0239150_358229.jpg

(イラストの写真)水飲み場も子供たちの最優先事項の一つだった。(撮影:ビル・ラティマー)

アイディアは、造園に関する単純なアイディアから、大観覧車とビデオアーケードがある大いに込み入った賑やかな中道まで、幅広いものでした。最も人気のあったアイディアは、水飲み場、芝生、小山、木、空中ケーブルなどシンプルなものでした。
f0239150_3583436.jpg

(イラスト)子供のワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市イングルウッド地区)
f0239150_3592419.jpg

(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校)

1-2 子供、葛藤、そして合意
(第1段落)子供のワークショップのあとに行われた市民ワークショップには子供も含めた大勢の人々が参加し、より良い運動場のために多くの、時として相反するアイディアが出されました。例えば、あるグループは別のグループが静かな遊びのために取っておいた場所にアクティブな陸上スポーツを描きました。

(第2段落)そうした相違は、ワークショップで出されたすべてのアイディアをを大まかなデザインとしていくつかの部分にまとめることで解消されました。その後、コ・デザインのスタッフは一週間かけてワークショップの絵を分類しました。例えば、アイディアの一部は親が子供を送り迎えするときの待合場所に関するものでした。階段式の観覧席というアイディアもありました。こうしたパーツは、現地のおよその場所をあてがわれ、必要とされる空間の大きさが現地設計図上に吹き出しで示されました。重複、あるいは相反する用途が描かれた場所もありましたが、この時点では直接的な解決策を出そうとはしませんでした。

(第3段落)次に開かれたワークショップでは、前回の参加者たちが再び出席して、コ・デザインのスタッフが作成したこれらのパーツやコンセプトを評価しました。以前のワークショップからしばらく時間が経ち、考えを見直すことのできた参加者たちは、冷静にパーツの評価を行いました。

一旦時間を置くことの利点は多大なものがあります。これによって現地の用途に関する将来的な葛藤を排除し、何が最良かということについて一致した見方を得ることができました。
f0239150_3595999.jpg

(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校)

1-3 その他のユニークな側面
ブライアー・ヒルのワークショップは、その他の面でもユニークでした。まず、建築予算があらかじめ分かっていました。通常、コ・デザインのワークショップが開かれるときは実際の予算はまだ認可されていません。面白いことに、これは提案の種類や幅にあまり大きな影響を与えませんでした。予算によって制限されている、あるいは抑え付けられていると感じた人はいなかったのです。

また、ボランティアとして参加した造園建築家がプロセスの最初から最後まで深く関わりました。彼女の専門的な知識が得られたのはとても価値のあることでした。

1-4 結果
(第1段落)おそらく、コミュニティーにとって最も必要だったのは、新しい運動場そのものではなく、士気の高まりだったのでしょう。人々は何よりも達成感と満足感を求めていました。これはコ・デザインを雇用したコミュニティー委員会が初期の段階で述べたことでした。

人々は確かに士気の高まりを手にしました。参加した人々は皆、勇気付けられ、意気揚々とワークショップを後にしました。最終的なデザインと建設に向けて前進する心の準備ができたのです。

(第2段落)コミュニティー委員会は、このワークショップの結果、最終的なデザイン、融資、および建設を進めるための貴重な参照点として機能する基本的なコンセプトプランを得ました。コンセプトプランは、市、教育委員会、隣接する土地の地主たちなど、運動場の改善に実際に関わる多くの関係機関と対処する上で便利なツールです。

また、コンセプトプランには、最初に提示された必要条件が満たされていることを確認するために建設の結果を照らし合わせるときに使う評価基準も含まれています。

(第3段落)カルガリー市教育委員会とカルガリー市公園レクレーション協会は、ブライアー・ヒルのコミュニティー委員会と協力して新しい運動場の設計と建設を実施しました。唯一、子供たちの希望がそのまま満たされなかったのは、草で覆われた小山の代わりに岩の小山が作られたことです。カルガリー市の乾燥した気候の中で子供たちが頻繁に使うと、草の小山はすぐに埃になってしまうだろうと考えられたためです。

(第4段落)運動場は1987年秋にオープンし、子供たちがピエロと一緒にパレードしたり風船を空に飛ばしたりしてお祝いされました。
f0239150_402746.jpg

(写真)空中ケーブルが設置された。(ソース:アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校)(撮影:メリンダ・コンレー)
f0239150_41149.jpg

(写真)ワークショップは運動場の設計者に明確な方針を与えた。希望が多かったのは、待合用のベンチと登って走り回るための小山だった。(撮影:メリンダ・コンレー)
f0239150_412874.jpg

(写真)岩の小山。(撮影:メリンダ・コンレー)
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-22 04:02 | 「コ・デザインの手法」


<< 第17章 (イラスト込み) 第15章 (イラスト込み) >>