第19章 (イラスト無し)

第19章 コ・デザインに対する評価

1、コミュニティー・デザインのプロセスに参加した人々にとっての価値:イングルウッドでのインタビュー


(第1段落)コミュニティー開発のコンサルタントであるアンドレ・アイフリッグは、過去2年間インドネシアでコミュニティー・ハウジングの仕事をしていました。彼女は、1987年5月にアルバータ州カルガリー市のイングルウッド・コミュニティーで行われた市民参加プロセスの調査を行いました。このケーススタディーは、以下の関係者との4つの会話から成ります。

*デイビッド・マーシャル 
イングルウッド・コミュニティー協会、地域再開発計画(ARP)小委員会の委員長
*ルクレティア・マルテネット 
コロネル・ウォーカー・コミュニティースクールの元スクールコーディネーター
*ピーター・チェッソン 
開発コンサルタント、イングルウッド・コミュニティー協会の長年の会員
*フィリップ・ダック 
カルガリー市都市計画課の都市計画者

(第2段落)インタビューはいずれも、コ・デザインによるデザイン・ワークショップ活動がイングルウッド・コミュニティーでいかに受け入れられたか、という事柄に対して感想を得るために行われました。

1-1 コミュニティー協会にとっての価値
アンドレはまず、イングルウッド地域再開発計画小委員会の委員長であるデイビッド・マーシャルと会い、ワークショップを組織したコ・デザインの努力が新しい計画に対するコミュニティーの人々の理解と参加にどのように貢献したかを話し合いました。

アンドレ:ワークショップとそれに続くコンセプトプランの有効性についての意見を聞かせてください。コミュニティー、ARP小委員会、そして市は、ワークショップ・プロセスからどのように利益を受けましたか?

デイビッド
(第1段落)まず、市から始めましょう。コミュニティー協会が気づいたことの一つとして、市は時としてコミュニティーにとって重要な事柄とは違うものに注目する、というのがあります。例えば、都市計画者は、子供たちにはブランコとプールのある公園のようなレクレーション施設が必要だと考えます。

これに反対する人はいませんが、コ・デザインが行ったスクール・ワークショップの結果をよく見ると、そういうものは必ずしも子供たち自身にとっての優先事項ではないということが分かります。ワークショップの価値は、コミュニティーのデザインに住人たちが協力することで、人々にとって何が大切かということを表す調査結果が得られるということです。

私たちの経験では、ワークショップにコミュニティーの人々が大勢参加すれば、市の反応は良くなります。住人にとって何が重要かを議会が知ることができるからです。ある特定のアイディアやポリシーが多くの人々に支持されていれば、それも市を動かす力になります。

そのため、コ・デザインが大勢の人々を駆り出してたくさんのアイディアを引き出してくれるなら、それは市との交渉のときに有利になるのです。また、ワークショップは寛いだ雰囲気を作り出します。都市計画者はそんな中でコミュニティーの人々と会うので、イングルウッドは単なる道路と排水溝の集まりではない、ということを実感してもらえます。

(第2段落)ワークショップは、委員会にとってもコミュニティーにとっても貴重なものでした。かねてから温めていた幾つかのアイディアについては、ワークショップのお陰でその意味合いを理解することができました。人々の出したアイディアは、コ・デザインのアーティストがそれを絵に描いたときに「本物」になりました。

誰もがアイディアを持っていますが、視覚的に表されるとそのインパクトが増します。また、絵があったので優先順位をつけるのが簡単になりました。コミュニティー協会は住民の好みに基づいて様々な開発案の中から取捨選択しなければなりませんが、絵はそのプロセスをずいぶん簡単にしてくれました。ゾーニングに関連するコンセプトプランの内容を評価するにしても、アイディアとその影響が絵に描かれていると簡単になるのです。

アンドレ:コンセプトプランの作成はコミュニティー協会にとって有益でしたか?

デイビッド:市のフィリップ・ダックが、ARP小委員会とコ・デザイン、そして都市計画課の代表者がワークショップの2~3日後に会って結果について話し合うことを提案しました。コ・デザインが資料を見直してプランを描くのに要する時間に対しては、市が支払いをしました。

出来上がったプランは大変有益でした。ワークショップで作られた絵と直接関係していたので、委員会は住民たちが出した様々なアイディアの素晴らしさとそのインパクトを再確認することができました。たとえば、商店の前のスペースを使ったカフェとブティックというアイディアは、9番街の駐車スペースに影響します。

開店を許可するためには、ゾーニング規制を変更する必要も出てくるかもしれません。コンセプトプランを作成する一環として、委員会はコ・デザインのアーティストと一緒に通りを歩いて視察しました。これに参加したメンバーは、「ワークショップの結果、将来は駐車の問題が発生するという予想を踏まえて、通りの音にもっと敏感になった」と感想を述べました。

アンドレ:市はコンセプトプランにどんな価値を見出しましたか?

デイビッド
:プランではコミュニティーのアイディアが都市計画課の担当者が慣れ親しんだフォーマットで表されているので、フィリップ・ダックは私たちのアイディアを直ちに受け入れて使うことができると思います。

アンドレ
:コ・デザインはワークショップを組織するにあたってどのようにコミュニティー協会を助けましたか?

デイビッド
:コ・デザインはワークショップの前にリハーサルをして、実際にどういうふうなものになるのかを理解できるようにしてくれました。また、理解する上で何か問題があれば、解決を図ってくれました。彼らは助言や提案はしましたが、ワークショップの準備そのものは私たちに任せました。

素晴らしいと思ったのは、コ・デザインは開発のためのアイディアをあらかじめ選んでおくことをしなかったこと、そしてアーティストたちがワークショップ参加者のアイディアをあざ笑ったり除外したりしなかったことです。ワークショップで作るサンプルの幅をできるだけ広げるために、すべての人のすべてのアイディアが受け入れられました。

1-2 子供たちにとっての価値

1987年7月、アンドレはカルガリー市のコロネル・ウォーカー・コミュニティースクールのコーディネーターであるルクレティア・マルテネットにインタビューを行いました。ルクレティアはコ・デザインのスクール・ワークショップの価値について自分の感想を述べました。

アンドレ:今年5月にコ・デザインが行ったようなワークショップが、この学校に特に向いているというのはなぜですか?

ルクレティア:当校は、ほとんどの教育機関が決してしないような方法でコミュニティーの暮らしと統合することに成功しました。例えば、子供のためのコ・デザイン・ワークショップの目的は、この地域でどんなレクレーション設備が必要かということに関して子供たちの意見を聞くことにありました。

住民の意見を聞いてイングルウッドの将来の開発案に優先順位をつけるために、コミュニティー協会がコ・デザインを雇用していたので、子供たちのワークショップはそのプロセスの延長でした。

アンドレ:コ・デザインは子供たちと何回会いましたか?

ルクレティア
(第1段落)学校では3回セッションが行われました。最初はスタンレー・キングが子供たち全員を対象にしてワークショップを開きました。子供たちはみんなで大きな絵を描きました。スタンレーはまず子供たちに、都市には普通どんなものが作られるかを考えて描くように言いました。それから、どんなものが作られたらいいと思うか、アイディアを出すように言いました。大きな絵を描くのは有益なエクササイズでした。子供たちに都市がどうやって発達するかを見せてくれたからです。

(第2段落)スタンレーとの2回目のセッションは美術室で開かれました。子供たちは1クラスずつやってきて、先日作ったアイディアのリストから選んで一人一人絵を描くように言われました。子供たちは、自分や友人たちがしていることを絵に描きました。スケートボード、ダートバイク、ビデオゲームなどです。そして言葉による説明も付け加えました。

子供たちは、このセッションによって「所有」の感覚を得ました。自分はコミュニティーのためにレクレーション設備案の決定に貢献した、という感覚です。普通は子供たちは無視されるものですが、スタンレーは子供たちに、自分の貢献はイングルウッドの開発にとって重要なのだ、と感じさせました。

また、絵と説明文を使用したことで、子供たちはコミュニケーション技術の重要性を実感することができました。視覚的なイメージと文字による描写が優れているアイディアは、そうでないものより大きなインパクトを持つ、ということを知ることができたのです。

(第3段落)最後のセッションは体育館で行われました。すべての絵が貼り出され、子供たちによる評価がなされました。それぞれの絵に評価表がつけられ、子供たちは1から4までの数字を使って評価するように言われました。私たちはあらかじめ子供たちに、全てのアイディアは良いものだが、すべてが実現され得るわけではない、と強調しました。

「1」は、とても良くて実行すべきもの、「2」は良いアイディアだがもっとデザインを工夫すべきもの、「3」は良いけれどお金が掛かりすぎるもの、「4」は良いけれど市内のもっと他のところに向いているもの、という評価区分です。

その後、最も評価の高かった幾つかの絵は、もっと大きなコミュニティー集会で展示され、話し合われました。また、ARP小委員会は将来の参考のためにすべての絵を保存しました。

アンドレ:イングルウッドのためにARPレポートを作成していた都市計画者とコミュニティー協会のメンバーにとっては、セッションはどんな価値がありましたか?

ルクレティア:子供たちの絵から、この地域にはレクレーション施設が緊急に必要だということが分かりました。コミュニティー協会は子供たちのアイディアにとても感心していました。その多くは協会が独自に作成した協議事項にはないものでした。

都市計画者も驚きました。子供たちのアイディアの多くは、彼らが提案するような種類のレクレーション活動ではなかったからです!子供たちの絵が教えてくれたのは、彼らには友達同士でたむろできる場が必要であり、ビデオパーラーやスケートボード場がなければ、おそらく路上でたむろすることになる、ということです。

そして、もしも市が子供たち自身による優先順位を考慮しないなら、都市計画者たちの作る「良い」デザインは子供たちの手で壊されてしまうでしょう!

アンドレ:コ・デザインの仕事には満足しましたか?

ルクレティア:ワークショップの目的は子供たちにはっきりと伝わりました。スタンレーは子供たち全員の協力を取り付けることに成功しました。普通なら斜めに構えた中学生たちもです。結果はすばらしいものでした。子供たちは自分たちの貢献を自覚しており、都市計画者とコミュニティー協会は子供たちが本当に必要としているものを知ることができました。

コ・デザインのプロセスは価値のあるもので、他の事項にも転用できると思います。例えば、イングルウッドで他にレクレーション施設を作ったり、開発に関する意思決定をしたりするときです。この学校は、コミュニティーの中での位置づけを考えると、良い会場です。

1-3 コミュニティー開発における価値
ピーター・チェッソンは古くからのイングルウッドの住人で、コミュニティー協会の会員でもあります。再開発委員会のメンバーとして1973年のデザイン概要の作成にも参加し、市との交渉を経験しました。アンドレは1987年7月にピーターと会い、同年5月に行われたコ・デザインワークショップの役割について意見を聞きました。

アンドレ:コミュニティー協会がコ・デザインのフォーマットに惹かれたのはなぜですか?

ピーター:再開発委員会はコミュニティーの人々の参加を奨励するためにARP案を始動する方法を探っていました。コ・デザインのプロセスは市民参加を促すことを目的としており、絵を使うことで、人々の漠然としたアイディアをもっと焦点の定まったものにします。絵は地図より理解しやすく、即時性があるので、コミュニティーでの話し合いには絵のほうが向いているのです。絵があると、選択肢の中から選ぶのがもっと簡単になります。

アンドレ:コミュニティー協会はワークショップから何かARPレポートの作成の助けになるようなものを得られましたか?

ピーター
(第1段落)協会はイングルウッド地域、とくに地元の施設を改善するための肯定的なアイディアを探していました。コ・デザインは問題ではなく可能性に焦点をあてます。ワークショップ参加者は、レクレーション施設、商店街や川辺などのコミュニティー開発のために、自分のアイディアを出すように促されました。

アーティストたちは参加者のアイディアを忠実に描きました。絵は、選択肢に優先順位をつけるための、そしてARPレポートに含めるポリシーを検討するための第一歩でした。また、ワークショップを通して協会に新しいボランティアも入りました。

(第2段落)ARPレポート作成の次の段階では、コミュニティーの人々をオープンハウス会議に招いて参加してもらい、そこでポリシーの内容と優先順位をもっと詳しく検討します。オープンハウスは、コミュニティー協会が市議会に統一した意見を提出する助けにもなります。コ・デザインは、ARPプロセスに住民の関心を結集することと、住民から多くの良いアイディアを出してもらうことという2点で大きな貢献をしました。

集められたアイディアは、これからコミュニティーとARP小委員会によって審議されます。また、絵は議会とのロビー活動も有利にします。絵はコミュニティー参加の証拠であり、この地域の人々が自分たちの環境に何を望んでいるかということとの力強い表明だからです。

1-4 都市計画者にとっての価値

1986年、都市計画課のフィリップ・ダックはイングルウッド・コミュニティー協会に対し、課が作成する地域再開発計画へのインプットとしてレポートを作成するように依頼しました。アンドレは1987年6月にダックと会って、計画レポートの作成における都市計画課とコミュニティー協会の役割の違いについて尋ねました。

アンドレ:あなたは、市民参加プロセスにおいて都市計画課とコミュニティー協会が果たす役割は異なる、と発言しました。その違いとは何ですか?

ダック

(第1段落)市は様々な理由により地域再開発計画の作成にコミュニティーの参加を図ります。コミュニティーの人々はARPの最終的な結果とずっと一緒に暮らすことになる、ARP計画に関わったコミュニティーは結果に対してより大きな所有の感覚を持つ、そして市はコミュニティーの人々に対して彼らがどのように開発すべきかということを独裁的に指図したくない、というような理由です。しかし、市民参加における私たちの実際の関わりは、法的および実際的な理由で制限されます。

(第2段落)コミュニティー協会にはそのような制限はありません。彼らには、地域再開発計画のための初期レポートを作成するプロセスの一環としてすべての住民の意見を聞く、という任務があります。一般的に、あるコミュニティーが何か計画を立てる場合、彼らはそれが市内の他の地域に与える影響は考慮しません。また、輸送やインフラへのコストも考えません。しかし、市のほうではこれらの事項を考慮しなければなりません。

(第3段落)イングルウッドを例にとりましょう。今年5月にイングルウッドでコ・デザインのワークショップが開かれましたが、コミュニティー協会はそこで出されたすべてのアイディアと作成された絵を調べます。市民によるアイディアと絵について話し合うためのオープンハウスも予定されています。都市計画課は、このような市民参加プロセスそのものを主催する時間がありません。私たちのリソースは限られているのです。そして、地元の住民の参加を促す主体になるのは市ではなくコミュニティー協会であるほうが望ましいのです。

(第4段落)コミュニティーの考えが市のそれとは異なるということは、両者がワークショップの絵の内容をどう扱うかということにも明らかです。コ・デザインのワークショップの参加者は、川岸近くの遊歩道のために特にシェール材(泥板岩)を希望しました。そしてコミュニティー協会は結果的にこれを推薦することになるでしょう。しかし、ワークショップの結果として出された推薦事項の経済的な責任は市にあるため、もしもシェール材を使うのはお金が掛かりすぎるなら、別のものを検討しなければならないかもしれません。

アンドレ
:それでは、都市計画者の扱う情報はコミュニティー協会のそれとはどのように異なっている必要があるのですか?

ダック
(第1段落)都市計画者は一般に絵よりも言葉を好みます。これはおそらく、彼らのアカデミックな背景によるもので、レポートを効率的に作成する助けになるようなデザインデータを好むのです。市民ワークショップで得られるような編集されていない絵の束は、都市計画者にとっては不適切なデータ・パッケージと言えます。

(第2段落)都市計画課が好むのは、コンセプトプランおよび関連する絵が少数添えられて、コミュニティーの望みを要約したフォーマットのデザインデータです。コンセプトプランは、輸送課など市の他の課とコミュニケーションを取る上でも効果的なツールです。

例えば、コミュニティー協会が提出した、商店街やレクレーションエリアの再開発や住宅地域の保存に関する最終的なレポートがあれば、都市計画課のスタッフはその提案の経済的その他の関連をすばやく査定することができます。

アンドレ
:コ・デザインは地域再開発計画の作成にどのように役立ちますか?

ダック
:コ・デザインのメンバーたちは、都市計画者とも、そしてワークショップ参加者とも対処することのできるアーティストや建築家です。コ・デザインのアプローチによって、市民からデザインに対するより協同的で高度なインプットが得られます。また、最終的な作品はプロフェッショナルなものなので、市にとっても理解しやすい形になります。結果的に、コミュニティーと都市計画者の双方から高い評価が得られます。

例えば、イングルウッドのためのコンセプトプランは都市計画者と役人たちに深い感銘を与えました。彼らは、コミュニティーの人々が自分たちのアイディアを描いた絵と、それをコ・デザインがプロフェッショナルに表した作品の両方に感動したのです。さらに、コミュニティーの人々はデザインワークショップの結果に勇気付けられ、地域の開発プロセスにもっと積極的に参加するようになりました。
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by ammolitering7 | 2013-06-22 04:09 | 「コ・デザインの手法」


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