付録A (イラスト込み)

付録 A ワークショップのテクニックを学ぶ

1、SAIT(南アルバータ州技術学校)プロジェクト

コ・デザインの指導によって、南アルバータ州技術学校の学生たちはキャンパス改善を目的としたデザイン参加プログラムで助手として働くための技術を身につけることができました。このケーススタディーではその様子を描写しています。コミュニティー・ワークショップとは異なる、教育機関でのワークショップの特別な性質にも言及しています。

1-1 概要
(第1段落)1987~1988年度にかけて、私たちはカルガリー市のSAIT(南アルバータ州技術学校)建築技術学部の学生たちを対象にコ・デザイン・コースを提供し、本書の内容を使用して指導しました。スタンレー・キングが指導にあたり、メリンダ・コンレー、ビル・ラティマー、およびドルー・フェラーリが助手を務めました。

このコースは、複数の学部寮の改善のために、コンセプトデザインを含むキャンパス・プランニングを行うというプログラムの一環でした。コースの間に数回開かれたワークショップには、改善によって影響を受けることになる管理職員、教授陣、一般スタッフおよび学生たちが参加しました。

(第2段落)建築学部の学生たちは、助手としてワークショップに参加して、新しく身につけた技術を活用しました。コ・デザインが行った指導内容は、建築レンダリングと建築理論という二つの分野で通常コースの必修項目の一部に該当しました。当時2年生だった学生たちは、既に遠近法を使った描画法を習得していました。

1-2 調査の目的
コ・デザイン・コースの目的は、学生がデザインに必要な情報を得るためにクライアントと対話する能力を身につけるようにすることでした。クライアントのアイディアを視覚化するために素早くスケッチをする能力も強調されました。

1-3 学習のステップ
クライアント対話の技術を学ぶための過程は以下のようなものです。
(1)デザイン用語を使って既存の環境を知覚的に分析する
(2)デザイン用語を使って想像上の環境を知覚的に描写する
(3)クライアントが望む環境を完全に描写できるように適切な質問をする

コ・デザインのスケッチ技術を学ぶための過程は以下のようなものです。
(1)コ・デザインのワークショップ画の例を調べ、デモンストレーションを見る
(2)人物、物、景色の特徴を知る
(3)モデルを使った人物スケッチと現地スケッチ
(4)景色を視覚化する
(5)一人のクライアントが描写する景色を描く
(6)複数のクライアントが描写する景色を描く

1-4 時間配分

(第1段落)コ・デザインのスケッチ授業は毎週2時間、12週間に渡って行われました。これは、正式なレンダリング技術を学ぶための36時間の建築レンダリングコースの3分の2にあたります。さらに、学生たちは授業と授業の間に毎週およそ2時間の課題を完了しました。

クライアント対話を学ぶための授業時間は毎週3時間、4週間に渡って行われました。これはデザイン基準を学ぶための36時間の建築理論コースの最初の3分の1に当たります。

(第2段落)典型的なスケッチ授業では、最初の30分はウォームアップ・エクササイズを行いました。続く10分間は、学生たちは教室の前方に集まって互いをスケッチしました。次の15分間は、黒板に書かれた指示文に従って景色を描きました。最後に車や植生など特定のテーマでスケッチ法を学びました。

(第3段落)学生たちは、2人一組で作業をすることで、一人のクライアントのために景色を描く方法を学びました。一人の学生がクライアント役で景色を描写し、もう一人がアーティスト役を務めました。トピックの複雑さによって違いますが、10~20分で役割を交代しました。

また、グループで練習したり実際のコ・デザインワークショップを手伝ったりすることで、複数のクライアントのために描く方法を学びました。

1-5 学生と参加者の数
(第1段落)コースには建築技術学部の2年生全員、2クラス合計24名の学生が参加しました。コースの期間中には複数のワークショップが開かれましたが、そのうちの一つは必修項目としてコースのすべての学生が参加しました。各ワークショップに参加した学生の数は、少ないときで8人、必修項目のワークショップのときは最多で、23人でした。このワークショップでは、参加者2~3名に対してアーティストと書記がそれぞれ1名ずつという構成になりました。

SAITは、その他のワークショップにはコースの学生たちを雇用して、参加者4名あたりアーティストと書記が各1名ずつになるようにしました。

(第2段落)講師と学生の比率は、ほとんどの場合1対24でした。時には助手が参加してワークショップのテクニックをデモンストレーションし、実際のワークショップでの指導も行いました。

(第3段落)およそ半数の学生が、ワークショップで見知らぬ人々の前で想像上の景色を描くことに十分な自信を得ることができました。ワークショップでは、彼らがコ・デザインのアーティストの役割を果たしました。まだ自信のない者は書記役を務め、図を描いたりスケッチプランを作成したりしてアーティストを補助しました。

1-6 ワークショップ
(第1段落)ワークショップのためのトレーニングは、学年度を通して行われました。最初のワークショップでは、学部寮の中庭に焦点を当てました。SAITのオープンハウスで行われたこのワークショップは、SAITへの入学を検討している高校生のための学校案内会も兼ねていたため、主に高校生からなる参加者たちの大きな関心を集めました。

高校生たちは建築学部の学生の周りに座ってアイディアを出し、学生がそれを絵に描きました。ときには、学生の周りに高校生たちが何層もの人垣を作って覗き込む様子も見られました。このワークショップでは学校管理職員が審査員となってデザイン審査会も開かれました。審査員たちはコ・デザインのデモンストレーションを見て、そのプロフェッショナルな正確さ、および参加者たちが学生たちと一緒に学習エクササイズに参加できるということの有用性を評価し、賞賛しました。

(第2段落)これに続いて、国際教育、キャンパス外サービス、製図、および自動車・ディーゼルの各学部寮の改善のために、一連のワークショップが開かれました。それぞれのワークショップは1回90分で、これは参加者と学生の双方のスケジュールに合う長さでした。

ワークショップは本書の第2章に示した流れに沿って行われました。テーマとなった現地環境には複雑な作業所や研究所も含まれたため、現地視察の間にアーティストはスケッチを練習し、書記が参加者との対話を行いました。

(第3段落)学校ワークショップの雰囲気は、学生どうしのエクササイズやオープンハウス(高校生が参加した市民ワークショップ)のときよりずっと真剣なものでした。管理職員や教師たち、および一般スタッフは、自分たちの労働環境のデザイン改善のために、非常に熱心に話し合いに参加しました。

彼らは学生たちをプロと見なし、プロとしてのパフォーマンスを要求しました。また、ワークショップの後は学生ではなく資格のあるデザイナーがデザインを扱うことを要求し、その保証も求めました。

(第4段落)教育的な環境における参加者の態度は、市民ワークショップとは異なっていました。学校ワークショップの参加者たちは忙しいスケジュールの中で時間を見つけるのが難しいため、集中して熱心に参加しました。他方で、市民ワークショップでは普通は土曜日の丸一日をワークショップにあてるので、参加者は寛いだ雰囲気になります。

学校ワークショップの参加者たちは正確な大きさと細部に焦点をあて、大量のデータを作り出しました。また、参加者が市民ワークショップでは見られない格付けへの配慮を見せ、話し合いの中で躊躇する様子も見られました。一般スタッフは自分が話す前に管理職員の意見を確かめたがり、反対に管理職員はスタッフの意見を待つ、というようなものです。

(第5段落)コースの必修項目とするワークショップは、「学生たちが通常のコースの必要事項を完了できることができるデザインに繋がるもの」という基準で選定されました。最終的に選ばれたのは、建築技術プログラム学部寮のためのワークショップでした。学生たちは、コースを通して学習した内容を建築技術寮のためのデザイン作りに適用しました。

(第6段落)一連のワークショップで得られた反応は、その後に作成されたキャンパス改善のためのコンセプトデザインの基盤となりました。

1-7 評価

(第1段落)コースの後で行われた評価では、学生たちはコ・デザイン・コースの質を平均以上だと評価しました。実際のクライアントと一緒に実際のプロジェクトの仕事をする機会が得られたことを喜ぶコメントも複数の学生たちから寄せられました。また、二名の学生たちからは、後日「卒業後すぐに住宅の改修デザインを始めたときに、どうやってクライアントと仕事をしたらいいかよく分かっていて良かった」という感想が寄せられました。

(第2段落)自動車・ディーゼル学部と製図学部のためのワークショップ後の評価では、39人の参加者のうちの23人が次のように評価しました。(以下、数字は「強くそう思う、そう思う、そう思わない、全くそう思わない、不明」の順。)

「時間は十分にあった」4.3%、30.4%、48%、13%、4.3%
「個人的にはコ・デザインのワークショップは貴重で肯定的な経験だった」50%、50%、以下なし
「個人的に、自由に貢献して自分の意見をのびのびと言えると感じた」100%、以下なし
「アーティストと書記は私のアイディアを忠実に表した」38.5%、46.2%、7.7%、0%、7.7%

次の質問は学校内での労働関係におけるワークショップの影響を明らかにすることが目的でした。

「学校管理課はワークショップによって効果的なリーダーシップを示すことができた」
4.3%、52%、21.7%、8.7%、13%
「ワークショップによって、SAITは私個人に配慮しており、私の仕事に関する問題や必要性を理解していることが示された」13%、47.8%、26.1%、0%、13%

ある管理職員はプログラムを支援して以下のような文章を寄せてくれました。

「コ・デザインのテクニックには以下のような特徴がある:
*デザインされるスペースを使用することになるすべての人に参加を促す
*個人の考えが目の前のコンセプトを越えて広がるようにする
*フォローアップと厳密な質問によって、些細なアイディアでもデザインに組み入れられるようにする
*スケッチが最初に心に思い描いていたように仕上がらなければ、「気が変わった」と言ってやり直せる自由さがある
*グループの中でこの手法が使われると、批判を恐れることなく非常に寛いで参加できる」(注59)
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(イラスト)学生の一人クレイグ・フレイザーが描いたワークショップ画。中庭のためのアイディア。
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(イラスト)学生の一人スィッド・シュレーダーが描いたワークショップ画。自動車の作業場のためのアイディア。
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(イラスト)学生の一人マイキー・ブラウンが描いたワークショップ画。CADD研究室のためのアイディア。
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by ammolitering7 | 2013-06-22 08:15 | 「コ・デザインの手法」


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