リバービューワークショップ1

今日はけっこうたくさん雨が降っていましたが、そんな中をはるばる遠くまで出かけていきました。
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鉄道の建設工事が進んでいるコキットラムという郊外の町に行ったのです。バンクーバーにはあんまりたくさん鉄道がないので、増えると便利になっていいです。
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コキットラムのどこに行ったのかと言えばこちら、ダグラスカレッジという学校です。
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構内を歩き回ったわけではないのでよく分からないのですが、幾つもあるらしい建物の一つであるこちらの、、、
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中央ロビーのようなところが目的地です。さて、ここで、、、
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100人分ほどの椅子を並べるのが私の最初の仕事です。そう、何でもやって稼ぐのがポリシーの私は、今日は都市計画ワークショップの書記兼雑用係という仕事をしにやってきたのでした。
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ワークショップのテーマはこちら、半ば放棄された形になって久しい精神病院です。本来ならワークショップは現地の視察を含み、ワークショップそのものも現地がその近くで行われるのが普通なのですが、今回は安全性に問題があることから別会場で行われました。ワークショップの主催者は病院の所有者である州政府と住宅省、都市計画会社、および私がお手伝いしているCo-Designという組織です。

Co-Designというのはときどきこのブログにも出てくるイギリス人の建築家スタンレー・キングさんの非営利会社で、都市計画に関して市民の声をくみ上げることで開発を潤滑にすることを専門としています。今回の件では住民側と行政の対立に加えて原住民グループも積極的に利権を追及する姿勢を見せているため、助けてくれ~ということでCo-Designにお声がかかったのでした。大きな問題に対処するので、今回のワークショップには大御所のスタンレーさんに加えてCo-Designの百戦錬磨のベテランスタッフが大勢顔を揃えました。怒鳴り合いや殴り合いの大騒ぎになることもあるので90歳近いスタンレーさんは前線からは一応引退したはずなのですが、これだけ大きなプロジェクトとあってはやっぱりじっと黙って見ていることはできなかったのでしょう。

リバービューというこの病院は244エーカーという広大な敷地があります。エーカーで言われても分からん、と思って調べてみたら987 432.967 m2だそうですが、それでもやっぱり分かりません。要するにものすごく広いのです。この辺りは郊外で、1904年に病院ができたときには周囲に建物などもなく、早い話が町から遠く離れたところに精神病の患者を隔離して閉じ込めておいたわけです。あまりに隔絶していたので病院は自己完結している必要があり、敷地内に発電施設も作られました。農園も学校も郵便局もあったそうです。

病院ができてから90年くらいたった1990年代には、当時の政府の中に「精神病患者はもっと家庭的な環境で治療されるべきだ」という声が強まり、多くの患者がグループホームと呼ばれる小さな施設に移されました。それは別に良さそうな気もするのですが、実際には監視の目の行き届きにくい施設が住宅地の真ん中いたくさんできてしまったこと、スタッフの労働状況が悪くなって不規則な長時間労働が増えたことなど、いろいろ問題がありました。

そして何より、グループホームにも移れず、病院にも残れず、ただ単に道端に放り出された軽度の精神病患者が大量のホームレスとなり、行政にとってはホームレス対策で余計にお金と手間がかかる、という馬鹿げたことになってしまいました。冗談でしょう、と思うほどひどい政策ですが、本当なのです。

グループホームに入れられないほど重度の患者たちはそのまま病院に残され、その数は現在64名だそうです。ただ、今はそのうちの一人が脱走して行方不明になっているので、警察から警報が出されています。何というタイミング、と思います、ほんとに。でも、危険でワークショップが現地で開けない、というのは別にそれが原因ではなく、建物が老朽化していて安全性が確保されないためです。地震対策は全くできていないし、水漏れもしているし、コンクリート自体も風化してもろくなっているのです。
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人が住まなくなると建物は急速に生気を失うように見えます。
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なんとなく後味が悪くて嫌なのですが、この病院は閉鎖されてからホラー映画などの撮影に頻繁に利用されています。幽霊も出るそうなので、理想的かもしれませんけれど。
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病院のジオラマ。
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往時の精神病院。静かな森の中の壮麗な建物です。治療方法は古くて効果も薄かったかもしれませんが、こんな環境の中に患者を置くことそのものは悪くないのではないだろうかと思ったりします。
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会場にはこういうパネルが何十枚も用意されていました。行政が行う通常の公聴会では、こういう情報パネルがずらりと並んでいて市民がそれを見て意見書を書いて投書する、という形が多いようです。Co-Designが違っているのは、投書箱の代わりに生身の人間が話を聞いて、市民が心に描くものをその場で絵にしてくれることだと思います。
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会場の準備をします。話し合いのルールを書いた紙を張り出します。これはCo-designのワークショップのときのルールですが、どんな対話にでも当てはまることだと感じます。1、「私たち」ではなく「私」と言うこと。自分の意見はあくまで自分ひとりの意見であり、何人分もの価値があるように見せてはいけません。2、解決策を見出そうとしないこと。いろんな可能性を考慮する柔軟性があればこそ、最終的には最善の解決策も結果として生じるものと思います。3、他の人の意見を非難しないこと。その代わりに「自分はこれを望む」という別の意見を出すことで、考慮の枠が広がります。ワークショップでは人々が心に描いているものを紙の上に描き出しますが、「これをしている」は描けても「これをしていない」を描くことはできないのです。
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この大きな紙もワークショックを特徴付けるものです。弧を描いた線は一日の時間の流れを表していて、参加者は「理想的に出来上がった現地で、ある日あるとき、自分は何をしているか」というアイディアを出していきます。
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「秋祭り」など、一年一度だけのような特別な行事は「スペシャルイベント」として別に書き出します。
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人々が出したアイディアをこの紙に描いていきます。こういうパネルを用意するのも雑用係りの仕事です。
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アイディアをリストにして評価するための紙もあります。
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会場にはテレビも用意されていて、現地の事情を説明した短いビデオが繰り返し流れます。
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参加者の目となり手となるアーティストたちは実戦前の腕ごなしをしています。これは私の引越しの様子です。私が家や庭や門の様子を語り、アーティストがそれを描いていく、というものです。話を聞いて絵にするというのはなかなか難しいものです。
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ぼちぼち人が集まり始めました。熱心にパネルを読んでいます。今回登録した参加者は77名ですが、通りがかって参加した人もいたので、実際は100名前後というところでしょうか。このほかにも、招待されて参加した地元の偉い人たちなどもいました。
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by ammolitering7 | 2014-09-28 13:57 | ワークショップ


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