カテゴリ:「コ・デザインの手法」( 36 )

第5章ー2 (イラスト込み)

2-6 視覚、光、色
「見る人の目がその場を眺める。そして動きの中で建築が生まれるのを見る。言い換えれば、設計は抽象的な要素ではなく、視覚的な経験を組織化する体系である。それは動きの中に生じ、時間と共に現れる・・・『建築的な散歩道』の脚本である。」ル・コルビュジェ(注22) 

書記の質問:周りに何がありますか?自然な光、あるいは人工的な光がありますか?その向こうにはどんな景色がありますか?色の幅はどうですか?青、赤、あるいは黄色ですか?色は暖色ですか?寒色ですか?光の当たるところにいますか?影の中にいますか?

(第1段落)これらの質問への答えは、位置づけ、窓や人工的な照明の種類や位置、表面の始末、屋外のスペースのまとまり方に影響します。視覚的な知覚にとっては、光が鍵となります。ハイライトと影とで物体の存在を形作るのは光です。

光は不透明なものに対して透明なものを浮き上がらせ、色の感情に訴える性質を気づかせてくれます。音楽的な調和を喜ぶように、人間の目は光の中にある比率、線、リズム、繰り返し、そして色の視覚的な調和を知覚します。また、感情的な反応を引き起こす特別な種類の光があります。ネオンのエキサイティングな点滅、木々の葉を通した柔らかな日の光、ロマンチックな気分を誘うロウソクの光と月光などです。

クリストファー・アレキサンダーはこう述べています「人は本質的に向日性だ。人々は光に向かって動き、じっとしているときには光の方を向く」(注23)。

このように、光と動きは関連しています。人が暗い森の中で明るい開けたところに向かって歩くように、光の好みもまた、デザイン用語に翻訳できるイメージを呼び起こします。ある場所に日の光が欲しいという希望は、法律によるどんな高さ制限よりももっと強く、周りの建物の高さに影響します。

日の出や夕日を見たいという希望が述べられれば、それは自然と建造物の位置づけに影響します。語り合うという活動は、頭の形がシルエットになって見えるときより、顔に光が当たっているときのほうが格段に楽しいものです。したがって、前景は背景より明るくなければなりません。

「彼らは修道教会の大きな本堂に入って座った。高い、涼しいアーチ型の屋根。その有名な扇状のはざま飾りは、彼の心にまるでそれが緑したたる静寂の中の枝葉が茂った景色であるかのように感じさせた。そして、それと共に彼の魂は、風に運ばれてはるか遠くへと漂う、多くの葉のあいだの一枚のようだった!その高い屋根にはかすかに緑色がかった霧がかかり、下にある色つきの窓から入り込む水平な日の光の柔らかな温かさと相まって、洞窟の中のような対照の効果を出していた。」ジョン・カウパー・ポーイズ
(注24)

(第2段落)審美的な価値とは、主に人間に共通的な生理に基づいているために共有されるものです。二つの目による視野と、目と目の間の距離のため、人間は特定の相対的な比率を好みます。かつて、ある大きな建物の前に座っていたとき、私たちコ・デザインのアーティストはその比率について考えました。その建物をスケッチしていて、主な特徴と他の特徴の比率を知る上で座標として使うために、私たちは水平あるいは垂直の主な線を探しました。

しかし、座標として機能するような強調された垂直の線も水平の線もありませんでした。この場合は、ある特徴と別のそれとの比率を計るのは困難でした。1:3と2分の1、1:4と4分の1、1:5と2分の1など、変わった比率だったからです。その建物をスケッチしようとする試みは非常にいらだたしいものでした。ひどく嫌な感覚がして、もう見ることができないほどでした。

しかし、他の場所でスケッチしたときは大きな喜びを感じました。そして、簡単に描くことができました。これらの建物は、1:1、1:1と2分の1、1:2などの比率があり、主な特徴の間には1:1.6という黄金比が使われていました。つまり私たちは皆、ある構図が美的な感覚を満足させるかどうかを潜在意識で知っていたのです。

「物がぴったりと
高いか低いか
平べったいか曲がっているか、それを知ること
これははっきりと見るという性質に他ならない
そして私は幸いにも物をはっきりと見ることができる
そうでないということはありえないのだ」アントニオ・ガウディ
(注25) 

(第3段落)別のときには、BC州のペンダー島でのスケッチ教室のときでしたが、私たちは景色の大きさや比率をあらかじめ調べることなく、単に魅力的だからという理由である景色を選びました。最も好ましく見える場所に身を置いてから、私たちは自分たちがスケッチしたばかりの景色の主な特徴の間の比率を測ってみました。どの場合も、比率は私たちが人間の目にとって特に好ましく映ると知った比率と全く同じでした。

それはまるで、ちょうど音楽家が音楽の中に調和を作り出すように、私たちも比率の中に調和を選んだかのようでした。私たちがスケッチするのを楽しむ比率は、私たちがある建築において美しいと感じるものと全く同じであることが証明されました。
f0239150_875296.jpg

(図)視界の区分:ゾーン1~4

(第4段落)現地の描写は、人間の視界の4つのゾーンすべてにおける経験をカバーする必要があります。

*普通の円錐状の視界
*高齢者や子供が最もよく経験するゾーン。足元に近い、床のテクスチャーや段差に注意。
*頭上の気づかれないゾーン
*背後の部分。一方通行の道を振り返ってみると、全く新しい視覚的な経験が現れます。

(第5段落)色は私たちにとって強い感情的な含意を持つことが多く、気分に影響します。

「もしもこの壁、あるいはあの壁が青だったら、それは引っ込んで見える。もしも赤だったら、平坦なままだ。または茶色。私は黒にも、あるいは黄色にも塗ることができる。色は設計図や区分けと同じように建築の力強い手段だ。もっと言えば、色は設計図や区分けの要素そのものだ。」ル・コルビュジェ
(注26)

(第6段落)緑色は寛ぎをもたらします。明るい青の中にいると、精神的に明晰になるのに役立ちます。赤は身体的な活動と落ち着きのなさに繋がるかもしれません。色の強さ、または色度は、狭い場所を視覚的に広くしたり、がらんとした場所の空虚な感じを抑えたりすることによって、建築スペースに影響します。

2-7 触覚
「イメージの世界は、単に几帳面な感覚器官だけに刻まれるのではない。むしろ、対象を見るとき、私たちはそれに近付こうとする。目に見えない指で私たちは自分の周りの空間を動き回り、離れたところにあるそれに近付き、それを触り、捕まえ、その表面をなぞり、輪郭を辿り、テクスチャーを調べる。それは大いに動的な行為だ。」ルドルフ・アルンハイム(注27)

書記の質問:あなたは何の上に立っていますか?または座っていますか?どんなテクスチャーですか?空気の感じはどうですか?温かいですか?ひんやりしていますか?肌に雨や日の光が当たりますか?屋内にいるなら、温かさは暖炉のような熱源からきていますか?それとも空調設備からですか?

(第1段落)環境の知覚は、それに最初に触れたときから始まります。つまり、足元の床です。提案されている環境を、立つ床や座る椅子から始めて考えてみてください。作業用の長靴を履いて産業的な鉄格子の冷たい鉄鋼の上を歩くのは、裸足で太陽に温められた砂の上を歩くのとは正反対です。歩く表面にはいろいろあります。玉石、レンガ、アスファルト、木、草などです。ガラスや磨いた大理石の滑らかさは、木の板や小石の入ったコンクリートの粗さとテクスチャーが正反対です。

(第2段落)温度、湿度、テクスチャー、形のかすかな違いの差異において、肌、細胞膜、そして末端神経の生理的な知覚は非常に敏感です。それらは私たちの視覚的な知覚を強化あるいは変化させるかもしれません。意識的にとは限りませんが、私たちの環境の理解の多くは触覚を通して経験されます。

顔に受ける日の光の温かさ、海で泳ぐときの冷たいショック、地下鉄の鉄格子から吹き付ける熱い風、アパートのバルコニーを渡る涼風、、、どれも環境のデザインについて何かを示しています。温度の好みも、暖房や空調の必要性をデザイナーに示します。

(第3段落)触覚とテクスチャーに関する発言は、デザイナーに使用する資材(ベルベットのカーテン類、石のベンチ)に関する情報も与えます。そして、ある一人との親密な触れ合い、または群集が押し合いへし合いしているなど、他の人々との接触も示します。

2-8 味と匂い
書記の質問:近くに食べ物や飲み物はありますか?海や植物からの自然な匂い、または人工的な匂いはありますか?

(第1段落)味は飲食と活動を関連付けます。匂いは記憶の想起のための最も強力な媒体です。ある物事に対する私たちの反応は、過去の活動を思い出すことに基づいています。思いがけなく樟脳の匂いを嗅げば、祖母の家の屋根裏の様子を思い出すかもしれません。あるいは、通りすがりの人の香水や過去の恋を思い出させるかもしれません。

味と匂いの知覚は動きと関わることもあります。居間の隣にある台所、1ブロック離れたところにあるレストラン、または自然の中でのキャンプなど、 飲食物は普通、今いるところとは別の場所で得られるからです。匂いは自然なもの(植物、動物、天候、土、人々)から機械的なもの(油、ゴム、排気ガス、熱い金属、ペンキ)まであります。

(第2段落)昔ながらの商店街では、表のドアから換気します。そのため、歩道を歩くと中の活動の嗅覚的なカタログを体験することになります。靴作り職人の店、パン屋、八百屋、タバコ屋は、どれも独特の匂いがします。しかし現代的なショッピングモールでは、一定した匂いのない内部環境を維持するため、建物の背後から換気します。

嗅覚による知覚が購買活動にとってとても重要であると分かれば、テナント店はモールの管理人に換気扇を逆向きに回すように頼むかもしれません!

3、遊歩道のためのサンプル対話
以下のメモは、BC州バンクーバー市フォールスクリークのデザインの参加者たちとのインタビューから抜き出したものです。参加者の反応の例として紹介します。

「人々」
ここに住みたい。プライバシーが欲しいが、他の人たちの近くに住みたい。何らかの共同のリビングルームとキッチンがあるが、プライベートな部屋もある。ボートがたくさんある。夜は停泊し、小さな旅館やホテルやホステルのように、ボートの中に泊まれる。でも、ボートで埋まって水が見えないほどたくさんではない。

「動きと循環」
ボートのある景色の中で、動きがたくさんある。入ってきたり、出ていったり。漁船もあり、魚を売っていて、近くにレストランもある。殺風景ではなく緑がたくさんある。小さな塊の緑。緑地は線状になっていて、皆が少しずつの緑のそばに住むことができ、すぐに行けるようになっている。自転車を停めるところがある。道路わきに自転車を停める余地がある。
f0239150_88343.jpg

(イラスト)屋外レストランのある歩行者道路のコンセプト画。

「時間」
一日24時間開いている。夜通し続く活動。活気があり、かつ都会的。

「気分と雰囲気」
小さくてカジュアル。おいしい食べ物や、人々が集うことで知られるような場所。インテリアでではない。友達に会えるから行くようなところ。どんな種類の人でも集える。コミュニティーの中で一日を過ごせる。(コーヒーなど)飲み干したらすぐに出なければいけないのではなく、その場の雰囲気を十分に満喫するまでいられる。

「音」
音楽、子供が遊ぶ声、母親が呼びかける声、ときどき車の音がする。タグボートの笛の音。交通の音はしない。

「視覚、光、音」
夏は明るい色、ひさしの色、どの階にも植物がある。色とりどりの衣服。でも冬にはもっと森のような色になる。緑、灰色。3階建て。バルコニーに子供たちの姿が見える。家庭と外部を繋げるためのバルコニー。居間の延長のようなもの。でも、少しプライベート。裏庭がある。でも前庭や無駄な脇の庭はない。どこにも繋がらない無駄な袋小路はない。緑がたくさん、でも公園ではなく、一つのエリアから別のエリアへ繋がって楽しむために散在している。結びつき。

「触覚」
私の足くらいの大きさで、パターンがあるものの上を歩く。イスラム風、またはムーア(北アフリカ)風、どこから見てもほんの少し違う。場所によって、へこみと出っ張りの差異を感じられる。自転車はあるテクスチャーの上を行き、歩行者は別のテクスチャーの上を行くのがはっきりと分かる。水際にはフェンスがない。単に歩道が高くなっている。ほんの小さなガラスの板、レンガ少々、滑らかな手すり、子供が手を洗うための小さな噴水、彫刻の顔を触る。

「味と匂い」

食べ物、中華、ギリシャ料理。靴屋の革、ボートと海の匂い、香水店、売っている物すべての匂い。

4、現地視察での知覚経験を強めることに関して

(第1段落)ある予定地をグループで知覚しようとするとき、目的は私たちが共通して持っている価値観を見出すということです。それは意見の一致を探る行為です。担当者の仕事は、そうした価値観を指摘して明確化し、ワークショップの参加者がその性質にはっきりと気づくのを助けることです。

(第2段落)人は往々にして環境を部分的に知覚します。現地の視察では、特定の性質が抜け落ちることのないように注意し、景色がすべての感覚を活性化するようにする必要があります。無駄話はせず、経験に関して互いに意見を交換するだけにします。このためには、一列になって、あるいは一人で歩くのが効果的です。

また、現地が持つ膨大な情報を分類するためには、一度に一つの活動に集中することです。この活動に関連する現地の性質、特徴、そして制約に注目します。

(第3段落)可能であれば、現地で皆でピクニックランチを食べるのが良いでしょう。商業地域であれば、地元で食べ物を買います。こうすることで地元の商売人に会ったり他の客たちの活動を観察したりすることができます。ランチを食べるときには座って食べるための場所を探すので、現地とそのスペースを視覚的に観察することになります。また、静かな場所を選ぶので、動きのある道や群集の循環を知覚します。

また、日の当たる場所を探すことで、光、影、そして位置づけの様子を観察することになります。座るところを見つけると、表面の様子とテクスチャーと資材を調べます。食べている間は喋らないので、その場の音を聞きます。食べ物の味と匂いは、環境の中でのこれらの感覚の知覚を呼び覚まします。
f0239150_891880.jpg

(写真)ワークショップの準備のために現地をスケッチする。(撮影:ビル・ラティマー)
f0239150_894426.jpg

(イラスト)現地スケッチ。

5、現地をスケッチする

(第1段落)コ・デザインのアーティストは、市民とのワークショップ・デザイン討論で使うための景色の要素を学ぶため、現地をスケッチします。コ・デザインの描画の真髄は、一群の人々のために想像上の景色を作り出すというワークショップの中で出来上がるものです。

そこで描かれる光景は、その場所の理想的な未来の姿です。しかし、それはもちろん、コミュニティーの中央大通り、開発されていない空き地、放置された建物など、実際の場所に基づいて描かれた姿です。コ・デザインのアーティストは、現地の現状のおよその姿を描き出すことができなければなりません。

記憶に収めた現地の状況を完全に描き出すために、歴史的な建造物、現存する植生の種類と塊、独自の地形、隣にある建物の種類など、現地の特別な特徴を記録しておく必要があります。

(第2段落)スケッチブックを持って市民ワークショップの2~3日前に現地に行くには他にも理由があります。描くこと以上に対象をよく見るように強いるものはありません。写真、ビデオを撮影したり、たくさんのメモを取ったりすることよりも、アーティストはスケッチすることによって現地をもっと深く学ぶことができます。

現地をスケッチすることで、アーティストは真剣に、そして注意深く現地を観察します。さらに、数分の間じっと立って絵を描く必要があるので、現地の美しさや欠点、その雰囲気、匂いと音、そして通り過ぎる人々の動きについて気づく機会にもなります。現地をスケッチすることで、あとでワークショップで同じ要素を描くときの練習になります。

(第3段落)アーティストはワークショップの前に少なくとも一度は現地を訪れるべきです。冬なら、車の窓から描くのでも十分です。現地を訪れる理由は、完成された立派なスケッチ画を描くことではありません。あとでワークショップで討論をするときに役に立つ現地の要素を観察して記録することです。知覚するためにはしばらくの間じっとしていることが必要なので、環境をもっとよく感じ取ることができます。
f0239150_8102294.jpg

(イラスト)メモを書きこんだ現地スケッチ画。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-21 08:11 | 「コ・デザインの手法」

第5章ー1 (イラスト込み)

第2部 技術を身につける
第5章 個人的な経験と知覚(PEP)

1、知覚に関する共通する言語を開発する
「人々の創造性に焦点を与え、個人が自分の勘と知識を具体的なアイディアに変えるのを助けるための言語が必要です。それは一般の住人の視点と建築家の技術的な思考や専門用語との間の溝を埋めることのできる言語でなければなりません。」リン・ニューマン・マクドウェル(注14)

コ・デザインで描かれる絵は、どれも言葉から始まります。絵は単に言葉を促すための触媒として存在します。言葉は視覚的なイメージを補って、参加者たちが想像する理想的な環境をもっと完全な形で描写します。参加者はアーティストを通じて自分のイメージを発展させます。人、動き、時間、雰囲気、音、光、質感、味、匂いに関する非視覚的な提案が出されたら、書記が記録します。

こうした対話はデザインの最初の段階でなされます。それはすべての可能性が考慮される段階であり、情報は多ければ多いほど良いのです。

2、個人的な経験と知覚(PEP)の価値

(第1段落)参加者たちからは、専門的な訓練がないのにどうやって専門用語を操る建築家やエンジニアや都市計画者との対話に入れるのか、という質問が出ることがよくあります。しかし、正しい質問が示されれば、参加者たちは専門知識がなくても環境に関する問いに対して有益な情報を提供することができます。

コ・デザインでは、人々の個人的な経験と知覚に関する質問をします。人々は、環境の中で起こる現象に自分がどう反応するか、ということに関して、皆がエキスパートなのです。参加者たちは自分たちの好みを詳細に、的確に答えます。

(第2段落)答えの中には、「普遍的なコメント」とも言うべきものがあります。私たちは皆、そのような反応、感傷、そして共通する価値観を共有しているので、そのようなことは都市計画に当然含まれるものと考えられがちです。しかし、単純なことであっても、見落とされることが多いのです。

私たちの暮らしの中でこれらの基本的な価値観が将来に渡って大切にされるように、意識的にイメージの中に取り入れます。
f0239150_844818.jpg

(PEP図と書記の質問)
視覚、光、色 - 周りに何がありますか?自然な光ですか?人工的な光ですか?スポットライトですか?蛍光灯ですか?向こうに何が見えますか?色調はどんなものですか?青、赤、あるいは黄色がかっていますか?温かい色合いですか?冷たい色合いですか?陽の当たるところにいますか?日陰にいて日向を見ていますか?

 - 何が聞こえますか?自然な音ですか?機械的な音ですか?音楽、会話、子供の声ですか?高い音ですか?低い音ですか?静かな音ですか?耳障りな音ですか?

触感 - 熱:放射するような熱ですか?全体的な温かさですか?空気、風、日光、雨、雪の触れる感じは?何の上に立っていますか?何に座っていますか?地面の表面はどんなものですか?

時間 - この場所をいつ使いますか?どれくらい頻繁に使いますか?どれくらい長くそこにいますか?決まった時間に来ますか?ふらりと訪れますか?季節による違いはありますか?

雰囲気、気配
 - 活動的、静寂、気楽、エキサイティング、陰気ですか?場所の感じはどんなふうですか?

味覚、匂い - 近くに食べ物や飲み物はありますか?活動の匂いはありますか?自然な匂い、それとも人工的な匂いですか?

人々 - 周りに何人くらいいますか?一人でいる人、二人連れ、それともグループですか?規律のある集団ですか?それとも何となく連れ立っている人たちですか?人々が集う場所ですか?それとも一人でいるような場所ですか?

動きと循環 - どうやって訪れますか?徒歩、自転車、あるいは自動車ですか?その場所ではどうやって動き回ったり通り抜けたりしますか?小道や歩道はどんな感じですか?上ったり下りたりはしますか?


(第3段落)コ・デザインの作画では、こうした基本的な好みに関するコメントをないがしろにしません。デザイナーにとって重要なヒントを含んでいるからです。たとえば、ある場所に日の光が欲しいというコメントがあれば、それは南側の建物の高さを制限するようなデザインにする、ということにつながります。

屋外のレストランで会話をしたいので道路の騒音が聞こえないのがいい、というコメントなら、デザイナーが道路の位置を決めたり道路わきに特別な処理をしたりするヒントになります。このように、絵は人々が活動に関する自分の知識を環境計画者やデザイナーにとって有益な情報に翻訳する助けとなり、人々とデザイナーの間に協力関係を作ります。

(第4段落)これは、患者に日常の経験に関する質問をして、その答えを専門的な医学用語に変える医者の診察に似ています。コ・デザインのワークショップでは、デザイナーが参加者に彼らの活動の好みと、それぞれの活動を取り巻く物理的な状態について質問します。参加者の日々の活動に関する質問をすることによって、デザイナーはその後、答えを専門用語に直すことができます。

(第5段落)アーティストと書記は、参加者が自分たちの好みをより広く考えることができるように、頻繁に可能性やアイディアを提案して議論を拡大します。アーティストと書記の用意した可能性が多ければ多いほど、参加者との対話も豊かになります。

デザインに関して豊富な知識を持つ建築家と都市デザイナーは、参加者が建築環境のための代替案を踏査するのを助けることができます。デザイン分野に馴染みのない方には、クリストファー・アレクサンダー他著の「A Pattern Language(パタン・ランゲージ )」(注15)をお勧めします。

同書は様々な活動に適した環境に対して豊富なアイディアを提供します。私たちの経験から、「A Pattern Language(パタン・ランゲージ )」のアイディアはコ・デザインの対話の中で質問のための指標として使ったときに非常に効果的であるということが言えます。

(第6段落)ワークショップで人々に質問をするときは、私たちの感覚が周りの環境から得続ける様々な知覚に焦点を当てます。PEP値は、自分の考えをデザイン用語を使って表すことに慣れていない子供や大人たちが周りの環境を知覚する上で、そして理想的な想像上の環境を描写する上で、有効な枠組みであることが実証されています。

PEP値は、人、動き、時間、雰囲気、音、光、感触、味、匂いに分類されます。これらの分類には、私たちが特定の環境を理解しようとするときに押し寄せる様々な感覚的な刺激を理解して整理するのに役立つ非視覚的な知覚も含まれます。

2-1 人
「私たちは暮らしの『解釈』が建築の本当の役割だと知っている。なぜなら私たちは、建物は暮らしのために、住むために、幸せに住むために作られていて、その暮らし、喜び、そして生きた美しさに貢献するようにデザインされていることを知っているからだ。」フランク・ロイド・ライト(注16) 

書記の質問:周りに何人くらいいますか?一人ですか?二人連れですか?あるいはグループですか?カジュアルに集まったグループですか?それとも何かの規則性のある集団ですか?そこは人々が集うための場所ですか?それとも一人でいるための場所ですか?

(第1段落)これらの質問への答えは場所の大きさを示し、したがってだいたいのコストを示します。

(第2段落)自分がその場所にいる様子を視覚化することは、活動に関する幾つかの重要な初期的なデザイン基準を定めることになります。屋外のカフェで飲食をするということであれば、パラソルの下にテーブルがあって、その周りに椅子がいくつかある、というのがスペースのユニットを決定します。

ビジネスのグループや家族連れなど他の人たちがいるなら、それに応じて空間的な必要性も大きくなります。テーブルとテーブルの間の距離に対する好みと他の客の数も、必要とされる空間の大きさをさらに詳しく定めます。カフェテリアに集う学生たちのグループは、肩寄せ合って話したり勉強したりすることを好み、一人当たり12~15フィートの空間を必要とするでしょう。

一方で、ビジネスの会合や恋人たちのデートの場所になる洗練されたレストランでは、テーブルとテーブルの間に広い空間があって自分たちだけの会話ができます。おそらく一人当たり17~22平方フィートが必要でしょう。

(第3段落)一部の劇場では、客が入ってくると互いを見ることができるように配慮されています。夜のイベントの大きな要素は、誰が何を着ていて誰と一緒にいるかを見ることだからです。人が集って出会い、あるいは他の人たちがそうするのを見る場所は、往々にして明らかに劇場あるいは競技場の形をしています。

周りにいる人たちの性質は、私たちの感情に直接的な関係を持っています。私たちは時として都会的な場面の匿名性、通行人のつかの間の存在を楽しみます。同時に、他の場合には共同体の暮らしに加わることを楽しみます。成功する場所はいつでも、訪れる人に他者との関わり、あるいは関わらないでいることという選択肢を残しています。

2-2 動きと循環
「ワシントンは期待通りに優雅なところだった。緑の公園の向こうの白い柱、広々とした通り、くね曲がった細い道。。。彼女は毎日、木蓮の香りが漂い、後ろに中庭のある黒っぽい四角い家の横を通った。2階のカーテンのある高い窓の向こうから、いつも女の人が外を見ていた。」シンクレア・ルイス(注17)

書記の質問:どうやって訪れますか?徒歩で、自転車で、あるいは車でですか?その場所ではどうやって動き回りますか?小道や歩道はどんな様子ですか?上ったり下りたりはしますか?

(第1段落)すべての要素の中で、動きは周囲に最も強い定義を与え、建築に最大の関わりを持っています。動きとは、例えば入り口や階段から入ること、そして軒先の下やドアを通って動く連続性を指します。空間の中での私たちの動きは、周りの環境からの刺激に対応する小さな判断の連続に基づき、その時々の勘と気分によって決まります。

人々が部屋や空間をどのように動くか観察してみてください。部屋の真ん中を堂々と横切りますか?それとも端っこのほうを密やかに渡っていくでしょうか。動きに関する気分は、子供たちにおいて顕著です。楽しそうに歩道のヒビをスキップして飛び越える様子、そして叱られたあとに足を引きずるようにして歩く様子などです。

子供たちは踏み台(何と大きいことでしょう!)に上ってみた感覚に感動します。道を歩くときは、商店の入り口の引っ込んだところに一軒一軒必ず入ってみます。板塀の表面や地下鉄の排気用の鉄格子に棒を当てながら歩いたり、低い塀の上や噴水の縁をバランスを取りながら歩いたりします。屋外の階段の手すりの端っこの柱の上にある真鍮の滑らかな球体は、それを触ってみた無数の子供たちの(そして大人たちの)手で光ります。

子供たちは、床のレンガの模様、歩道を歩くときに駐車中の車の窓に映る景色など、自分たちに近いものに最もよく気づきます。

(第2段落)人々が都市ではどう動くかに注目してください。歩いていますか?自転車に乗っていますか?タクシーに乗っていますか?バスに乗っていますか?スケートボードやカヌーに乗っていますか?人々は異なる状況の下で異なるふうに動きます。用事と用事の間にぶらぶらする人々は、先を急ぐ通勤時の人々のそれとは異なる環境を持ちます。

他のタイプの動きについて考えてみましょう。例えば、私たちの目は異なる状況で異なるように動きます。細かい彫刻が施された壁の上ではじっと見つめますが、つるつるしたタイルの滑らかな繰り返しの上ではすぐに目が移ります。

私たちの目は、風が木の葉を動かす様子、動く水の上で輝く日の光、炎が揺れ踊る様子、遠くの高速道路を行く車に光が反射して動く様子に惹かれます。

(第3段落)建築的な空間の中には、目が周囲のリズムを辿るのを促す動的な性質を持つものがあります。エジプトのスフィンクスの道は、砂漠、巨大な壁と寺院の入り口、中にある薄暗い、巨大な柱が何本も聳え立つところ、その向こうにある礼拝堂の赤い輝きへと順に目を導きます。

ゴシック式の中庭の先には圧倒するような聖堂があり、それに続く入り口のアーチ、そして中に入ると天井の高い本堂が祭壇の上のステンドグラスの薔薇窓へと視線を導きます。ルネサンスの柱廊式玄関は、大きな階段がシャンデリアに照らされた舞踏室に続くロビーへと目を導きます。

2-3 時間
「都市はそれを作るのに100万人が力を合わせる生きた存在だ。
都市を作る最初の一歩は個人だ。
人はその隣人を、彼らの力を知らねばならない。
彼らのうちの誰が、一杯のコーヒーを共に味わうために時間を割いてくれるのか。
あるいは、子供の涙のために。
そしてそのような大きな、あるいは小さな繋がりから、近所が生まれる。
そしてそんな近所から都市が生まれる。」ハッサン・ファシー
(注18) 

書記の質問:いつこの場所を使いますか?どれくらい頻繁に使いますか?どれくらい長くいますか?カジュアルな時間ですか?決められた時間ですか?季節によって違いますか?

(第1段落)都市の空間は、その使われ方によって独自の時間を作ります。朝早く通勤する人々、買い物客で混みあう前のしばしの静けさ、サンドイッチを食べるために陽の当たる場所を探す昼食時の人々。一部の場所は夕方になると閑散として、他の場所では劇場に向かう人々の群れが見られます。

ある場所で過ごす時間の長さは、そこで必要とされるアメニティーを決定します。一時間半以上であれば、トイレが必要です。3時間以上であれば、食べるものが必要です。このように、私たちの体の内部のサイクルが私たちの建築環境で必要なものに影響します。

(第2段落)ダウンタウンのアパートに住んで、毎日店の前を通るなら、毎日買い物することができるので、家での収納スペースは少なくて済みます。郊外に住む人々が毎週一度スーパーで買い物をするなら、食糧を入れておく場所がもっとたくさん必要です。

田舎の農家にある季節の貯蔵庫は巨大で、建築物の大きな部分を占めます。このように、食糧生産と消費の一時的なサイクルは、間近な環境に影響を与えます。季節による変動も考慮する必要があります。特定の環境を使用する時期や、季節による天候の変異のために使われない時期などです(スケートリンク、スキーロッジ、屋外プール、屋外カフェなど)。

(第3段落)効率的な仕事のために必要なものは、レジャーのときのデザインに必要なものとは異なります。ある場所(劇場、教室、オフィスなど)は人々が皆、決められた時間に到着したり帰ったりするスケジュールに応じてデザインされる必要があり、別の場所は人々が中心的な活動を妨害することなくランダムに来たり帰ったりするオープンな場所としてデザインされます(ショッピングセンター、レストランなど)。

また、暮らしの中で特別な時、頻繁ではないが宗教、社会、政治、あるいは経済面で共同体の継続にとって重要な場面があります。祭り、歩行者天国、パレード、青空市場、大集会などの特別なイベントは、カレンダーに特別な位置を占め、ある特定の場所と関連づけられます。また、特別な状況で静寂の時が持たれる場合もあります。

「影が長くなり、日の光が雲から雲へとだんだんかすれていき、平原の空にかすかな、そしてもっとかすかな雲のギザギザの線を映し出す。ぽつんと建った農家の窓が一瞬明るくなる。平原はもっと柔らかな、もっと黄色っぽい光に照らされ、沈みゆく太陽は輝く球になり、やがて平原の縁の黄金の光になる。」W.O.ミッチェル(注19) 

2-4 気分と雰囲気
「地球にこれほど美しいものは他にない。
見る者の魂は言葉を失う。
感動の美しさ。
この街は今、衣装のように着飾る。
朝の美しさ、静かな砂浜、
船、塔、ドーム、劇場、そして寺院が
平原に、空に浮かび上がる。
煙のない空に光と輝きが溢れる。
太陽はかつてこれほど美しくまっすぐに上がったことはない。
その初めの美しさの中に、谷と岩と、あるいは丘。
私はこれほど深い落ち着きをかつて見たことも感じたこともない。
川は自らの甘い意志で流れる。
親愛なる神よ、家々は眠っているように見える。
そしてその偉大な心臓は、まだ静かに横たわっている!」ウィリアム・ワーズワース
(注20) 

書記の質問:その場所の感じはどのようなものですか?活動的、静か、気楽、エキサイティング、あるいは陰鬱ですか?

(第1段落)この質問の答えは建築スタイルと建材の選択を考慮するのに影響します。ある場所は特定の雰囲気を醸し出すかもしれず、あるいは人は経験したことのある感覚と特定の場所を関連づけるかもしれません。例えば、愛する者がそこに葬られていなくても、墓地には後を引くような憂鬱さがあります。

子供の頃に遊んだ川の土手は、たとえ今では水が汚染されて土手が雑草に覆われていたとしても永遠に温かい気持ちを呼び覚ますでしょう。

(第2段落)一日中スキーをしたあとで行くスキーロッジを想像してみると、火の横で温まってその日の冒険を語り合う、寛いで和やかな雰囲気を思い出すでしょう。建築要素を巧みに操作することで、デザイナーはその場に望ましい雰囲気を作り出します。スキーロッジでは、寛いだ知覚を強めるために、水平の要素を強調するかもしれません。

照明は落ち着いた穏やかな効果を出すために注意深くコントロールされます。色はスペクトルの暖色に限られます。茶、赤、オレンジなどです。建材は、寛いで気楽な雰囲気を増すために自然な環境に呼応するもの(木や石など)が選ばれるでしょう。

(第3段落)別の状況を考えてみると、街の中心地にある銀行のデザインでは、全く異なる効果を出すために異なる建築要素が使われるでしょう。この場合は威厳を出すために垂直の要素が強調されます。照明は、銀行の事務を行い、保安性を高めるために非常に明るく機能的になされます。色は寒色で金属的なものになるでしょう。

威厳があって緊張感があるビジネスライクな雰囲気を求めることは、床やカウンターに磨きぬかれた建材を使うことに繋がるかもしれません。

2-5 音
「今日は、すべての人工の音は、テラスのある庭園の横を流れる、溢れる川の水音にかき消されました。それは変わることのない継続的な、低い唸るような音でしたが、すべての自然の音のように、耳障りになるでもなく、会話の邪魔にもなりませんでした。それは心地よいものでした。時を超えた力、純粋で汚されることがありません。醜さと暴力の世界の中で、人間が無頓着に地球を汚すのに抵抗していました。」ルース・レンデル(注21) 

書記の質問:何が聞こえますか?自然な音ですか?人工的な音ですか?音楽、会話、子供の声はありますか?高い音、低い音、静かな音、または騒々しい音ですか?

(第1段落)これらの問いへの答えは、場所の形、建造物のタイプ、異なる活動の間の関わりに影響します。音は環境の中で最も気づかれない要素の一つですが、それは人の環境との関わりに非常に多くの重要な鍵を提供します。

コミュニケーションにおいて他者の声を聞くことは人間同士の繋がりであり、そのため、会話や音楽を聴きたいという欲求の表明は、特定の観測しうるデシベルが得られる必要がある、あるいは特定の音響性が必要である、というデザイン用語に翻訳されます。

聴覚には3つの基本的な音域があります。中間の波長は背景の音として知覚されます。波、風、火の音、ラジオの空電、エアコンが唸る音などです。高周波音は、女性や子供の声の中に存在します。そして低周波音は、男性の声の低くて深い響きの中にあります。

建築環境によって影響されるのは、これらの3つの周波のバランスです。行進する音楽隊には音を反射する建物があったほうがいいし、バロックのホルンの音楽には公園が適していて、水の上だと音がよく渡ります。

(第2段落)内部のスペースは音の性質にもっと影響します。安普請の小さなカフェには、普通、つるつるして掃除のしやすい表面が使われます(タイルの壁、人工素材の表面、ビニールの床など)。そして軽い木または金属の壁があります。音を反射しやすい表面は、皿が触れ合う音やレジの音などの高周波音をカフェに跳ね返し、ぺらぺらの壁は低周波の音を外に漏れさせます。その結果の音は、甲高くてバランスが崩れています。

反対に、高層ビルの下の階にある値段の高いレストランでは、厚いカーペットとカーテン類が高周波の音を吸収し、分厚いコンクリートの壁は静かな会話の低周波の音を跳ね返します。ここの雰囲気は、落ち着いてバランスの取れた音です。

同様に、内部の空間の形は音響効果に影響します。ショッピングモール、劇場、そして教会で咳をしたときの音を比べればすぐに分かります。このように、音響の好みに関する描写は、資材の種類や環境のアレンジを示します。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-21 08:06 | 「コ・デザインの手法」

第4章 (イラスト込み)

第4章 建築例

1、コ・デザインのワークショップから受賞歴のあるデザインが生まれる
「ワークショップのアイディアは理想主義的に聞こえるかもしれませんが、その結果の前には反論を引っ込めざるを得ません。単純なコミュニケーションによって、地域社会の感覚と達成に多大な貢献ができるように見えます。コ・デザインのプロジェクトが終わってから何年も経っても、それがどうやってできたかが語り継がれます。そしてその精神も生き続けます。」リン・ニューマン・マクドウェル(注13)

1-1 BC州バンクーバー市ロブソン広場

(第1段落)この有名な広場が作られたときには、人口250万人の大きな国際都市全体で大きな関心を集めました。政治的な論争も過熱しました。直前に政権を握ったばかりの新しい政府はこの場所を「人々の場所」にする意図を宣言しましたが、そこには以前の政府が50階建ての高層ビルを建てる計画を発表していました。

(第2段落)複数の市民グループがこの場所のデザインについてアイディアを声高に述べ始めました。あるグループは市民によるデザイン・ワークショップを行うために私たちを招きました。ワークショップは現地から都市区画で半ブロック離れたキリスト教会聖堂で開かれました。会場の選択も更なる論争を引き起こしました。人々に愛されていたこの古い建物を取り壊す計画も発表されていたからです。

(第3段落)新聞、テレビとラジオでワークショップが予告され、大勢の記者が詰め掛けました。カナダ映画省がワークショップの様子を撮影して記録映画を作製したほか(”チェアーズ・フォー・ラバーズ〔Chairs for Lovers〕")、イベントの様子は全国のニュースでも放映されました。

(第4段落)市民の声を聞く姿勢をアピールするために政治家も参加しました。また、計画に抗議する人々はプラカードを持って会場の外をパレードしました。通りの向こう側のホテルで行われていた会議に参加していた建築家たちも飛び入り参加し、すべての利益団体が参加していました。

(第5段落)現地の近隣および周辺の学区の学校訪問も行ってワークショップに参加する子供たちを手配し、大勢の子供を含む200名以上が二日間にわたるイベントに参加しました。

(第6段落)ワークショップで出された提案には、ガラス張りの天井があって、冬は氷を張り、夏はローラースケート用にしたスケート場というものがありました。また、気楽にパフォーマンスを楽しめる屋外型劇場、パラソルを出した屋外型のレストラン、悪天候のためにガラス張りにした屋根、噴水、木を植えた散歩道、木の下で座れるところ、などのアイディアもありました。

(第7段落)全国的に有名なバンクーバーの建築家アーサー・エリックソン氏がワークショップでのインプットからデザインコンセプトを作り、現場近くに特設された場所で展示しました。エリックソン氏は、見る人たちにコメントを寄せるよう奨励しました。彼がそこから生み出したデザインは様々な賞を受賞し、市民参加から素晴らしいものが生まれるということを証明しました。

(第8段落)今ではロブソン広場は、ちょうどワークショップ参加者が描写したように、大人も子供もガラス張りのドームの下で大きな音楽に合わせてスケートできる場所です。(ドームの上でスケートをするというアイディアも出されましたが、それは建築家にとって技術的に難しすぎるものでした。)

さらに、広場の階段は下にあるステージで行われるパフォーマンスを座って気楽に見ることができる「ギリシャ風劇場」になっています。
f0239150_7573347.jpg

(写真)コ・デザインのアーティストと子供たちがロブソン広場のスケートドームのアイディアの核心をスケッチしている。(写真:カナダ映画省提供、”チェアーズ・フォー・ラバーズ 〔Chairs for Lovers〕")
f0239150_758262.jpg

(写真)バンクーバーのロブソン広場。ワークショップで出されたローラースケートのアイディアが実現した。(撮影:シリア・キング=ベンダー)

1-2 フォールスクリークのイメージ調査、BC州バンクーバー市
(第1段落)バンクーバーのダウンタウン半島の入り江沿いにある住人3,000人の住宅地フォールスクリークのデザインには1,000人が参加し、できあがったデザインは数々の賞を受賞しました。1970年代初め、老朽化した海辺の産業地帯だったこの場所をバンクーバー市が買い取りました。

市民投票の結果、この場所は住宅・商業地域になることが決定され、コンセプト作りのために地元の建築家が委託されました。

(第2段落)1973年、バンクーバー市はコ・デザインに市民のデザイン嗜好を調べるように依頼しました。私たちは夏の間の3ヶ月を使って、およそ1,000人の人々にイメージ調査を行いました。調査はフォールスクリークに作られた一時的な公園、および市内の他の幾つかの公共の場所で行われました。公園内には建築デザインが展示されました。

(第3段落)参加者には、北米の暮らしの側面を手描きのイラストで表した5インチ(12センチ)x7インチ(18センチ)のカラーイラストのカードが配られました。人々はそれぞれにイラストを3つに分類しました。
(1)今の自分の暮らしにあてはまるもの
(2)(1)に入らなかったものの中から、してみたいこと
(3)フォールスクリークで自分がしていると思える活動
f0239150_7583715.jpg

(イラスト)1973年、フォールスクリークのために市民が選んだ活動の第1位はサイクリングだった。1976年にフォールスクリークのウォーターフロントがオープンしたときの様子と比較のこと。
f0239150_759912.jpg

(写真)フォールスクリークのサイクリング道。(撮影:シリア・キング=ベンダー)
f0239150_7594867.jpg

(イラスト)1973年、フォールスクリークの市民投票で上位10位内に入ったファーマーズマーケット。その後、1978年にフォールスクリークにオープンしたグランビル・ファーマーズマーケットと比較のこと。
f0239150_8044100.jpg



f0239150_81169.jpg

(イラスト)子供のワークショップ画。完成した子供の遊び場と比較のこと。
f0239150_814089.jpg

(写真)フォールスクリークの子供の遊び場。(撮影:スタンレー・キング)

(第4段落)それから参加者は、ワークショップと同じやり方でフォールスクリークの環境デザインの好みを議論しました。インタビューはそれぞれ約1時間に及びました。

(第5段落)結果として人気があったのは、自然な植栽のある場所、それを取り囲む集合的な低い住宅、サイクリングと歩行者のためのウォーターフロント、そしてマーケットでした。この結果は、高層建築とショッピングモールのある大いに都会化されたウォーターフロントという以前の建築デザインとは対照的でした。

(第6段落)さらに、住宅共同組合とのワークショップ、学校と遊び場のデザインのために子供や親たちを対象としたワークショップ、地域社会全体の人々を対象にして近くのグランビルアイランドのコミュニティーセンターのデザインをテーマとしたワークショップも開きました。

(第7段落)市は、受賞歴のある開発をデザインした建築家のチームを集め、イメージ調査の結果に沿ったデザインで計画を実現しました。

(第8段落)公園は自然の景観を見事に模倣したため、ビーバーが棲み付いて何本かの木を切り倒してしまい、捕獲して移動させねばなりませんでした。

(第9段落)商業的には、小さな商店と有名なグランビルアイランドマーケットがあります。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-21 08:01 | 「コ・デザインの手法」

第3章ー3 (イラスト込み)

7-4-2 市民ワークショップのスケジュール
普通は、コミュニティーで他に大きなイベントのない土曜日に行います。午前遅くから夕方くらいまでです。詳しいスケジュールは以下のようなものです。

9:30-10:00AM  ボランティアが到着し、会場と託児エリアを整える
10:30  参加者が到着する。資料を受け取り、コーヒーやクッキーなどをつまむ
10:45  司会者が開会の挨拶をする
11:00  コ・デザインの担当者が子供たちを対象にして「壁の町」エクササイズを行う
11:30  タイムラインに一日の活動を記入し始める
正午  現地視察と戸外での昼食(悪天候の場合は現地視察の後で会場に戻って昼食を食べて温まる。)
1:00PM  現地視察から戻って参加者の発言を書き出す
1:15  イメージ作りを開始する。ミュージシャンが演奏を始める
3:15  優先順位を決めるための投票を行う
4:00  司会者が閉会の挨拶をする。同時にコンセプト・デザインのための集中作業スケジュールと展示会のスケジュールを発表する。
4:15  後片付け担当のボランティア・グループが絵を回収し、会場を片付ける

7-5 ワークショップに必要なもの

およそ40名が参加するワークショップに必要なものは以下の通りです。

(紙) 幅48インチ(1.2メートル)長さ200フィート(60メートル)のものを1巻き。(新聞用紙よりも厚みがあること。)
18インチ(46センチ)x24インチ(60センチ)のベラム紙(上質紙)50枚
または36インチ(90センチ)x180フィート(55メートル)のベラム紙1巻き。

(フェルトペン)
 黒のフェルトペン15本、先細タイプ。
色付きフェルトペン10セット、先が平らになったタイプ。

(鉛筆) 柔らかい消しゴムがついたHBの鉛筆 1ダース

(マニラフォルダー) レターサイズ(21.59 × 27.94 センチ )のファイルフォルダー20個

(テープ) 4分の3インチ幅(2センチ弱)のマスキングテープ2巻き

(スチレンボード) 市民ワークショップ用 19インチ(48センチ)x 24インチ(60センチ) 20枚
子供ワークショップ用 同10枚
ワークショップのタイトルと写真用 同10枚

(写真) カラースライドフィルム 36枚撮り 4本

(案内用紙) 人々を会場に導くための張り紙

(見取り図)
 大縮尺の見取り図を壁に貼る。

(アセテート) 30インチ(76センチ)幅1巻き。絵を覆って保護するのに使う。

(資料) 組織委員会とコ・デザインが資料を用意する。参加者を歓迎する言葉、計画の内容の説明、その日のプログラムと将来の計画イベントを盛り込む。

8、 話し合いの決まり
とても大切な3つの決まりごとがあります。これによって参加者の間に共通の理解のための枠組みができ、ワークショップが滑らかに進行するようになります。

8-1 「私たち」ではなく、「私」と言う
(第1段落)代理人は誰もいません。自分についてだけ語り、他の人のことは他の人に語らせます。直接的な経験と個人的な反応に焦点を当てることによって、人々が自分の利害のために巧みに言葉を操りあうような事態を避けることができます。

つまり、ある人が他の人たちの意見を代表していると主張して議論を支配する危険を減らすことになります。ある人が他の誰かの意見を正確に代弁することはできません。そのため参加者たちに、自分自身の経験に基づいて自分自身の望みを自ら語るように頼みます。

他の人たちがどう感じているかを第三者が推測するということがないので、対話はもっと直接的で正確で正直なものになります。

(第2段落)この決まりを守ることで、参加者は自分の個人的で私的な意見が尊重されたという厚遇の感覚を得ることができます。これは彼らの個人的な権威の感覚を強めます。

特に子供にとっては、自分の意見には価値があると感じて成長するために、これは非常に大切です。
自分の意見は当然軽んじられるだろうと思っている人々についても同様です。こうすることで、彼らは権威者が自分の言うことを認めるかどうかとびくびくする必要がなくなります。

(第3段落)「コミュニティー全体に対して何か立派な意見を言うことを求められている、何か都市計画者らしいことを言わなければ」と感じて意見が出せなくなってしまう人々もいます。その場合には、「あなた自身は何を望みますか?」と尋ねることで、議論の流れを自由にすることができます。
f0239150_7504144.jpg

(写真)参考資料があると便利。この場合は現地の地図と写真。(撮影:スティーブン・ヘイワード)
f0239150_75127.jpg

(イラスト)話し合いの決まり:
A、「私たち」ではなく「私」と言う
B、解決策を見出そうとしない
C、他の人のアイディアを批判しない


8-2 デザインの解決策を決めようとしないこと
(第1段落)デザインが生み出す効果についてのみ語り、解決策を決めるのは後回しにします。「解決策」とは、すべてのアイディアをコンセプトにまとめることを意味します。この時点では、それらは互いに無関係なパーツに過ぎず、大いに異なってさえいますが、それぞれが独自の状況において価値あるものです。

(第2段落)形成的な段階では、すべての可能性が考慮されます。そして、自由にアイディアを考えることが奨励されます。ワークショップはインスピレーションを得て視覚化する段階に当たるため、デザインの解決策を決めようとせず、すべてのアイディアが有効であることを確認し、アイディアの流れを奨励します。

(第3段落)こうすることで、コミュニティーの人々が後で取捨選択をするときの幅が広がります。これは創造性の二次的な段階に先行する一次的な段階なのです。デザイン作りに向けての再考、編集、コストの削減は次の段階でなされます。この第二段階は投票の後で行われ、コミュニティーの人々が投票したアイディアを優先度の高いものから取り入れてコンセプトデザインを作ります。早急に第二段階に入ってしまうと、踏査の段階が切り詰められ、考慮の幅を狭めます。

8-3 他の人のアイディアを批判しないこと
(第1段落)ある提案が気に入らないなら、自分は何が好きかと考えて自分なりの前向きなアイディアを出します。アイディアが流れ出るのを阻まないようにします。

(第2段落)コミュニティーが何らかのアイディアを本気で作り出そうとするときは、投票のためのたくさんの案が必要です。選択肢は多いほど良いのです。

最終的に実現されるアイディアの質を高めるため、コ・デザインのプロセスは前向きで非競合的であることを目指しています。あざ笑われることを恐れて発言を神経質に抑制するような雰囲気を助長することなく、調和と一致のある部分に焦点を当てることで前向きな雰囲気を作り出し、可能性について考えることを奨励します。

また、明確な発言ができない人々にも自分のアイディアを発言することを勧めます。これによって他の人々はそのあいまいなアイディアに更なる考慮を加えることができます。

9、起こりうる問題 - ワークショップでのトラブルの対処法
時として、他の人の見方を省みずに自分の意見を言う参加者がいて、問題が起こることがあります。よくあるパターンは以下のようなものです。

*政治的な発言や抗議をする
*既に完成された案を出す
*グループの中で支配的に振舞う
*法外なアイディア

9-1 政治的な発言
(第1段落)ワークショップを政治的な発言の場として利用する人々が参加している場合もあります。その場合には、新しい場所で行う活動に関する質問をします。政治的な返事を考えている人々は、「周りにもっと広い場所を取らないでいて、新しい場所のことなどどうやって考えろというのですか?」などと反論したり、もっと限定的に「市は町の中心部に母子家庭のための住宅を作る用意がありますか?」などと聞き返したりします。

(第2段落)そのような質問に対しては、彼らの政治的な心配事は十分に解決されたという前提で考えるように指示し、そしてその状態では現地で何をしていると思うか、と問いかけて場を和らげます。こうすれば参加者は一時的に政治的な事柄から離れることができます。

(第3段落)また、遅れてやってきて抗議をしたがる人々もいて、言いたいことをぶちまけたがります。その場合は現地図の横に貼っておいた白紙を示し、フェルトペンを渡して抗議の内容を書き出してもらいます。そうすれば対立的な心理状態が消えるので、それからグループに参加して一緒に作画してもらいます。

ワークショップの焦点である開発計画に関して政治的な論争が過熱している場合は、この目的のために大きな紙が必要になる場合もあります。参加者には、ワークショップでの反応は抗議も含めてすべて記録してレポートに含められることを伝えます。

9-2 完成された計画案
ときとして、イラストや模型など完成された計画案を持ち込む人がいます。その場合はそれを展示するのを手伝います。完成した計画案が口頭で述べられる場合は、ボランティアの書記をつけて詳細を書き取ります。あとで投票するとき、ワークショップで作られた他の絵と一緒にこれらも展示して、コメントを集め、投票を行います。

9-3 支配的な参加者
(第1段落)絵を描いているグループの中で、ある参加者が他の人たちのアイディアに同意せず、議論の流れを止める場合があります。集団力学の世界では、この人物はブロッカー(遮断する者)として知られています。そうなると、他の参加者は黙りこんでしまうかもしれません。目的は皆のアイディアを得ることなので、この場合の解決策はグループを分けることです。

(第2段落)ワークショップのときには、このようなトラブルに備えて控えているアーティストたちがいて、会場を見回っています。あるグループの議論の中にブロッカーがいることに気づくと、彼らはしばらくの間は議論の流れに耳を傾け、それから口を挟んで支配的な参加者にこう言います。「あなたのアイディアは力強いので、それを発展させましょう。あなただけのイラストを作りましょう。こちらでどうですか?」
f0239150_752439.jpg

(写真)ある参加者が支配的になると、コ・デザインのアーティストはいったん手を止める。この状況では、別のアーティストをあてがうことが最良の対処方法である。(撮影:ジョン・マッケンジー)

(第3段落)その参加者をグループから離し、1対1のセッションを提供します。グループの他の人々は、これでブロッカーの脅しを恐れずに自分たちのアイディアを進めることができます。支配的な参加者は非常に確固たるアイディアを持っていて、イラストが自分のアイディアを厳密に反映していることを要求しがちなので、能力の高いアーティストが必要とされます。また、ブロッカーは自分の強いアイディアを視覚的に表すことに困難を感じる場合もあります。

9-4 法外なアイディア
ときには、コミュニティーの人々を憤慨させるようなアイディアを表明する人もいます。繰り返しますが、ワークショップの目的はすべてのアイディアを引き出すことです。この問題の対処法は投票にあります。本当に法外なアイディアは、投票で「ここではなく他の場所にふさわしい」という評価を得るものです。

こうすることで、その参加者は自分の心からのアイディアを表すことができ、「悪いもの」ではなく単に「もっとデザインに工夫が必要」あるいは「このコミュニティーではなくもっと他の場所に向いたアイディアだ」という理由で、他のアイディアと同じような優先順位を得られない、ということを知る機会が得られます。

9-5 十代の若者を巡る問題
(第1段落)十代の若者たちは、性的な落書きなどを含む多少反抗的な振る舞いをすることがあります。それでも彼らにも耳を傾ける価値があります。アーティストをあてがわれて議論をするように導かれたなら、彼らは往々にして最も創造的なアイディアを出します。

(第2段落)内気で無愛想で、仲間同士で固く結びついていると見られがちな彼らは、抜きん出て価値のある参加者です。社会のしきたりに対する彼らの反抗の態度は、創造的なアイディアの基盤であり、彼らの過度な感情は現状への敏感さから生じてきます。

往々にして、最も賢明なアイディアはそのような若者たちから出されます。彼らは通常、計画の初めから除外されるので、コ・デザインはまさに彼らのためにあるようなものです。
f0239150_753170.jpg

(写真)子供たちが誇らしげに自分たちの絵を展示し、アーティストは背後に退けられる。参加者たちは、絵が本当に自分たちのものだと感じる。(撮影:スティーブン・ヘイワード)
f0239150_7532040.jpg

(写真)若者たちから創造的なアイディアが出される。(撮影:ジョン・マッケンジー)
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-21 07:53 | 「コ・デザインの手法」

第3章ー2 (イラスト込み)

6-3 高齢者
(第1段落)高齢者の中には、「若者たちのいいようにさせたらいい。私たちの時代は終わった」と言って参加を渋る人たちがいます。彼らは往々にして、現地の歴史や過去の様子や問題について語ることのほうを好み、そうすることで大きな役割を果たすことができます。高齢者の語ることはこれから起こる変化を歴史的な継続性に基づいたものにする助けとなるほか、過去に現地で改善に向けて働いた多くの住民たちに対し、コミュニティーとしての尊敬の念を強めることができます。

(第2段落)グループでの話し合いの中で、高齢者たちはしばしば若者たちへの親近感を見せ、彼らのアイディアを喜んで受け入れます。そして若者たちもまた、高齢者の経験に喜びと驚きをもって耳を傾けます。普通は若者と高齢者は互いに大いに楽しみながら参加します。しかし、一部の高齢者は、若者たちのエネルギーに当惑し、彼らがいることに怒りのこもった抵抗感さえ示します。若者たちがいることで、会合が正式なものではなく、議論も取るに足らないと感じるのです。そのため、イベントを組織する段階で、この会合には若者たちも参加するということを知らせておく必要があります。

(第3段落)社交的なイベントとして計画されているこのワークショップでは、高齢者のために特別な手配がされています。それは無料の軽食です。これは往々にして高齢者を惹き付けるための重要な要素になります。さらに、現地の歴史について語ることを希望する高齢者のためには、ボランティアの書記を用意します。明確な発言のできる高齢者が希望する環境について語るときは、特に注意深く記録します。それは普通、黄金とも言うべき知恵の言葉です。長い経験と人生に対する深い理解に基づき、誰に対して偉ぶるでもなく語られるからです。それは特に強調するでもなく小さな声で語られることが多く、繰り返して語ってもらえない場合もあります。したがって、書記は注意して聞き、必要であればよく聞き取れるように他の人たちの議論を静めます。

6-4 政治家と都市計画者
コ・デザインのワークショップでは、政治家は現地を市民と共に楽しんで利用するコミュニティーの一員として受け入れられます。彼らは明確な発言ができ、各地に旅行した経験も豊富である場合が多いので、すばらしい参加者になります。彼らにとっても個人的な好みを語る機会が得られ、喜ばれます。政治家の存在はコミュニティーと政府の間の結びつきを強め、政府がコミュニティーのアイディアを認識するような雰囲気を作ります。

同様に、都市計画者の存在は、ワークショップに続く実践的な計画に関する議論への継続性を作ります。都市計画者は、コミュニティーが目的を達成するのに必要なデータを提供します。そして、コ・デザイナー(特別にコ・デザインの訓練を受けたアーティストたち)は、コミュニティーのために自分たちの才能を共有し、自らの表現能力を高めます。

6-5 メディア
(第1段落)コ・デザインのワークショップは新聞やテレビその他のメディアによって好意的に取り上げられます。市民、特に子供たちが建築家と一緒に絵を描くということは、ニュースにする価値のある事柄です。さらに、ワークショップはしばしば政治的な議論のある中で行われます。

(第2段落)アーティストが人々のアイディアを目に見える形にして描いているところは、テレビにとって格好の主題になります。ボランティアによるワークショップが放映されると、それは後に続く市民ワークショップにとって格好の宣伝になります。

(第3段落)ジャーナリストも参加者として加わって対話の一部として記者会見を行うと、一般への周知に役立ち、最高のデザイン材料を作り出すことにもなります。ジャーナリストたちは描写能力に優れており、公けのイベントを報じてきた経験から公共の場所の性質について深く知っているからです。

6-6 開発者にとっての利点
(第1段落)開発者たちがコ・デザインのワークショップを主催する場合もあります。これは経済的な理由によります。コ・デザインを行うのにかかる費用は、開発案のイラストができる、そしてそこで営まれる暮らしのイラストができる、ということで正当化されます。

そのようなイラストは、開発者が政府の都市計画責任者や近隣の住民や将来的な投資家や賃貸人にデザイン提案をするときに役立ちます。初期の段階で市民を交えることは、開発アイディアのための市場を、多額の投資をして資材を確保する必要が生じる前の段階でテストすることになります。

(第2段落)開発プロセスの初期における市民対話によって、デザイン要素に対する反対意見を早期に発見して、時間の余裕をもってそれらに対処することが可能になります。反対する開発の要素に変更を加え、それをデザインの長所として取り込むこともできるので有益です。

市民対話によって調和と意見の一致が可能になります。それがなければ反対する市民の声は硬直した立場になることを余儀なくされます。そして、市民による反対運動が非常に高くつくことは、開発者なら皆よく知っています。

(第3段落)コミュニティーにデザインへの助言を求めることで、開発者はもっと実質的なことでも利益を得ます。例えば、参加者の中には引退したエンジニアや経験豊富な管理職の人々もいるかもしれません。そのような参加者たちは、地元に関する知識に基づいた確固たるアイディアを喜んで提供してくれるものです。

開発者たちは、普通なら高いコンサルタント料金を払わねば得られないこうした広い経験を無料で得られます。先立つものが不足しているとき、これは多大な利点です。このようにして貢献を依頼された参加者たちは、提案や開発計画や開発者を自分のものと感じるようになります。

コミュニティーが開発によって利益を受けることが分かると、「彼ら」が「私たち」となります。そして、計画が受け入れられることが確実になります。

7、組織化の段階
組織化には、大きく分けて4つの段階があります。

(1)準備
(2)ボランティアを集める
(3)ボランティアによるワークショップ
(4)市民ワークショップ(子供ワークショップ、早朝ワークショップ、イメージ作りを含む)

7-1 準備
コ・デザインのワークショップを開催するための議論は、およそ3ヶ月前に始まります。中心委員会と関心のある住民が出席する最初の会議でコ・デザインが準備とプロセスについて話し、ワークショップの段取りを説明し、過去のワークショップの例とその結果を紹介します。

生徒が参加する「壁の町」エクササイズについて、学校の担当者への説明も行われます。こうしたプロジェクトの詳細は契約書の中で説明されていますが、内容はケースによって大いに幅があります。通常、ワークショップの料金はこれらすべての段階を含む均一料金です(準備、ワークショップ、展示、レポート)。

しかし、中心委員会がボランティアの役割を果たしてワークショップの組織化を行うなら、割引料金が適用されます。ワークショップの組織化そのものに委員会を招き入れることによって、皆でワークショップを行うという感覚がさらに強まります。

7-2 ボランティアを集める
(第1段落)ワークショップのおよそ6週間前、中心委員会がワークショップの組織化に責任を持つ少人数のボランティアグループを作ります。このグループは中核グループと呼ばれ、強いチームワークでワークショップを可能にします。

(第2段落)コ・デザインの代表者は、コミュニティーの中核グループのメンバーと頻繁に顔を合わせます。最初の頃の会議では、ワークショップの目的は何か、ボランティアの役割は何か、ボランティアはどういう段取りで行動するのか、組織するにはだいたいどれくらいの時間がかかるのか、などの疑問に答えます。

(第3段落)中核グループの役割は2つあります。
(1)ワークショップをコミュニティーのイベントにすること
(2)ワークショップにできるだけたくさんの人を集めること

40人~100人分の参加者の助けを必要とする多数の小さな仕事が明確化されます。ワークショップの準備にたくさんの人が関わると、これらの人々が実際のイベントに参加する可能性が高まります。

(第4段落)中核グループは、最初に最大60人のボランティアを集める必要があります。これが不可能だと考える人もいます。「ボランティアをしようという人を60人もどうやって集めたらいいのか?委員会の会議に出る人を集めるのだって難しいのに!?」しかし、これは案外簡単に実現できます。

(第5段落)まず、コ・デザインとの準備会議に出席する中核グループのメンバーは、ワークショップで使われる市民参加のプロセスについてよく理解している場合が多く、ボランティアを集めるのに長けています。

ボランティア候補者に打診するにあたっては、参加したくなければ断ってもよい、ということを分かってもらうことが大切です。また、他にもその仕事ができる人はたくさんいること、参加したいなら仕事が一つある、ということを知らせます。

コミュニティーで既に積極的にボランティア活動をしている人は、他の人々にその役割を譲るために辞退するかもしれません。それでも彼らは通常、このイベントに大きな関心を寄せ、成功すると安心するものです。

(第6段落)ボランティアを集めるときの要点は、あまり煩わしくない仕事、誰にとっても楽しい仕事、というものです。次に挙げるボランティアのリストは、およそ40人の参加が見込まれるワークショップのものです。それぞれの役割を果たすために必要なボランティアの人数(合計40人)は括弧の中に記されています。
f0239150_7394380.jpg

(図)ボランティア構成:
中心委員会組織委員会
進行係アーティスト
コ・デザイン
広告チーム電話チーム受付司会者 カメラマン書記軽食担当者
音楽担当者レポート作成チーム準備・後片付けチーム

f0239150_7402563.jpg

A、組織委員会イベントを計画し、レポートの作成を監督する(4~5名)
f0239150_7405223.jpg

B、広告チームポスターを作って掲示する(4~5名)
f0239150_7411889.jpg

C、準備・後片付けチーム壁に紙を貼り、あとで絵を丸めてラベルをつける。椅子を並べる。受付のテーブルを用意する。イベントの後で会場を片付ける。(4~5名)
f0239150_7414775.jpg

D、電話チームすべてのグループとコミュニケーションを取り、全員にワークショップへの参加を忘れないように連絡する。(4~5名)
f0239150_7422158.jpg

E、受付参加者を迎える。資料を手渡す。遅れてきた人たちを会場に案内する。(2名)
(イラスト)「本日、コ・デザインのワークショップを開催」
f0239150_7424891.jpg

F、司会者ワークショップの開会、目的の説明、コ・デザインの進行係を紹介する。ワークショップの閉会(1名)
f0239150_7432214.jpg

G、ワークショップ進行係タイムラインにすべての活動を記入し、アーティストを紹介する(コ・デザイン)
f0239150_7435821.jpg

H、書記現地の視察でグループに同行し、発言を記録する。また、現地の様子を描写する少人数のグループでの話し合いをリードし、参加者がアーティストに描画の指示をする間、絵では表せない知覚的な発言を記録する。(10名以上。参加予想人数の4分の1)
f0239150_7443145.jpg

I、アーティスト参加者の指示に従って活動の様子を描写する。(コ・デザインのアーティスト、参加者4人に対し1人)
f0239150_7445955.jpg

J、軽食担当飲食物の購入、並べる準備、ドリンクの用意(4~5名)
f0239150_7452772.jpg

K、音楽担当ギター、フルート、ハープなどで緩やかな音楽を演奏して議論の流れを和やかにし、デザインワークショップに穏やかなBGMを作り出す。ミュージシャンの手配ができない場合は、静かでリズミカルな音楽を録音したもので代用する。(1名)
f0239150_745522.jpg

L、カメラマンイベントの様子や、ワークショップで作られたデザイン画や表をレポートのために記録する。(2名)
f0239150_7462296.jpg

M、レポートチームレポートを書いてまとめる。(4~5名)

書記、軽食担当者、音楽係、カメラマンなどは本番のワークショップの間は仕事で忙しくしているので、通常一週間前に行われるボランティアのためのワークショップに招いて参加してもらいます。

7-3 ボランティア・ワークショップ
(第1段落)ボランティア・ワークショップは、典型的なワークショップを予行する形で行われます。これによってボランティアは自分のデザイン・アイディアを表すことができます。(本番のときには時間がないため。)また、これによって市民ワークショップ当日の流れを知ることができます。

(第2段落)3時間のセッションの間、コ・デザインのアーティストを補助する地元のアーティストたちは、それぞれに描画を練習します。その後、イメージ・ワークショップの間、アシスタント・アーティストはコ・デザインのアーティストが大まかに描いた絵を完成させます。

(第3段落)コ・デザインのアーティストは、地元のアーティストと書記を含むボランティアグループと一緒に、アイディアを視覚化するためのセッションを行います。コミュニティーのアーティストらは、これによってグループ・ディスカッションの流れや描画、描画に必要なメモの取りかたなどを実地に経験します。

それぞれのグループの絵が完成したら、コ・デザインのアーティストと書記はコミュニティーの人々と交代します。別のドローイング・ボード(フォームのついた厚みのある画用紙)を使って地元のアーティストと書記がコ・デザインのプロセスを練習し、参加者たちが絵と文章の作成を指示していきます。

大勢の人々の前で絵を描くことに尻込みする人もいますが、それを楽しむ人々もいます。練習を重ね続けることによって、人々に作画能力を試されているという感覚は消えていきます。

(第4段落)セッションはとても心楽しいものです。ボランティアたちは自分のアイディアを発言する機会を得るし、市民ワークショップへの期待が高まってきます。そして自分たちのアイディアがすべて市民の声の一部として本番のイベントで展示されることにもわくわくしてきます。

7-4 市民ワークショップ
本番のイベントは大きなホールや体育館などの場所で開きます。窓やドアのない壁が少なくとも一面あること、40人以上が座れるように椅子を並べる広さがあること、アクティビティーに必要な明るさがあること、軽い飲食のための設備があること、が条件です。

コミュニティーの中での位置づけも大切です。地元の学校の体育館、教会の地下室、公民館などが向いています。そのような場所がないときは、テントを立ててワークショップを開く場合もあります。

7-4-1 イメージ作りのための参加を促す
参加者は4人ずつ半円状に詰めて座り、アーティストが一人ついて絵を描きます。アーティストは、参加者からの提案に応じて絵を描き加えていき、デザイン作りを行います。参加者と軽く目を合わせ、人々が提案に同意しているか、そして作画が参加者の意向に沿って進んでいるかを確認します。4人より大きなグループだと、素早く目を合わせることが難しくなります。
f0239150_747624.jpg

(イラスト)ワークショップのための典型的な会場の間取り:
*子供たちのための作画エリア
*ステージ
*ミュージシャン
*作画タイムのときに子供たちが描いた絵の展示
*アーティストと書記のトレーニングの際に描かれた絵の展示
*アーティストと書記、および4~5人の参加者、「デザイン・タイム」のステージ用
*軽食エリア
*受付
*入り口(1つ)
*案内エリア
*PEP図、3つの決まり、現地見取り図、現地写真、スケッチなどを大きく展示
*タイムライン上のリストのための長くて白い紙
*進行係
*開会時および活動をタイムラインに記入する時に使う椅子を並べる

f0239150_7473249.jpg

(写真)実際的な理由により、グループの最大人数は参加者4人およびアーティスト1人に留める。この写真のような大きなグループだと、どうしても1人や2人の視界が遮られ、積極的な参加が難しくなる。(写真提供:SAIT電子メディアサービス)
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-21 07:48 | 「コ・デザインの手法」

第3章ー1 (イラスト込み)

第3章 組織化の原則

1、コ・デザインのワークショップの性質

「建築の専門家と都市計画者に自分たちが何を欲しているかを述べることによって、住民たちは創造性、コミュニティー精神そして政治的な影響力の驚くべき潜在力を発揮した。」(注9)リン・ニューマン・マクドウェル

(第1段落)コ・デザインのワークショップに参加した何年も後で、参加者たちが私たちにワークショップでの経験について語ることが本当にたびたびあります。彼らは、結果としてできた建造物に誇りを感じ、「私はこれを作るのに関わったのだ」と言うことができます。疎外感はありません。彼らは現地を自分たち自身のものとして捉え、現地は人々の生命力に溢れます。それを使う人々によってデザインされたからです。

(第2段落)結果として、注目に値するような建造物ができます。アーサー・エリックソンがデザインしたバンクーバーのロブソン広場、そしてバンクーバーの建築家チームと都市および造園デザイナーたちがデザインしたフォールス・クリーク住宅団地は、すばらしい例です。これらについては後で詳しく述べます。

(第3段落)建築担当者として活動するコ・デザインのアーティストたちにとっては、ワークショップは気分が高揚するような経験です。いったんそれを経験すると、他のすべての建築デザイン過程は不十分で、使用者が提供する必要不可欠な要素に欠けている、と感じられます。住民との話し合いはデザイナーの能力を引き延ばします。伝統的な方法を取るときよりももっと優れたデザイン能力が必要とされるからです。また、建築教育においてデザイン教育を集中すべき箇所が明らかになります。これはデザイナーにとっては、非常のやり甲斐のある課題です。多量の情報を交換する中で、幅広いデザイン能力が必要とされるからです。プランニング、都市デザインそして造園建築のデザイン能力すべてが活用されます。

(第4段落)ユーザーによるデザイン参加は、どのような環境改善の場合にも可能です。コ・デザインのプロジェクトは、大きな都市空間から小さなレストランまで、そして大自然からとても小さな公園まで、様々です。環境の種類は住宅地、商業地域、教育的、レクレーション、宗教的、そして公共の用途まで含みます。ワークショップは、どの場合でも同じ基本的な形式を取ります。
f0239150_732453.jpg

(写真)バンクーバーのロブソン広場。建築家:アーサー・エリックソン(撮影:スタンレー・キング)
f0239150_7331516.jpg

(図)ワークショップ・プログラムの段取り:
*現地での活動を列記する
*現地の視察
*アイディアを視覚化する
*優先課題を採点する
*コンセプト・デザインを作成する
*コミュニティーで展示する
*目的を達成するための方法について報告する



2、コ・デザインプログラムの段取り
以下の7つの基本的なコ・デザインワークショップの段取りは、環境を改良するために参加者のアイディアを集める際の指針となります。

(1)現地が正しくデザインされた場合に行われるであろう活動を列記する
(2)現地を視察してその特質を理解する
(3)それぞれの活動に適したアイディアを視覚化して描写する(「パーツ」)
(4)パーツの優先事項を採点する
(5)パーツを組み合わせ、コンセプト・デザインにする
(6)コンセプト・デザインをコミュニティーで展示し、さらなる意見を求める
(7)目的を達成するための方法を議論するために、コンセプト・デザインを報告書にまとめる

様々に異なる市民が参加する場合、別個にワークショップを開いてアイディアを視覚化し、コンセプト・デザインに貢献するのも良いでしょう。典型的には、子供のため、ボランティアのため、そして一般市民のためという3つのワークショップが開かれます。また、商店主たちは朝食会を兼ねたワークショップに出席して、それから店に戻るのが都合が良い場合が多いようです。

3、コ・デザインのワークショップの対象
街中や広場など、コ・デザインのワークショップで考慮の対象となる場所は、歩いて見て回るのに適している場合がほとんどです。参加者たちが考える活動は大抵は1マイル(約1.6km)四方で行われ、そのほとんどは歩行者を想定しています。例外としては、自転車や乗馬のための専用道路、ボートやクロスカントリースキーのルートをデザインする場合などがあります。

4、ワークショップを行う時期
(第1段落)コ・デザインのワークショップは、デザインの早い段階で行われます。コミュニティーを改良するという提案がなされてからコンセプトがデザインされる間のことです。専門的な用語で言えば、コ・デザインはプログラミングとコンセプト・デザインを繋ぐ役割をします。

(第2段落)この段階では、個人またはグループでアイディアを構築します。プランニングや建設委員会、コミュニティーの委員会、市の建設課、公園課、市民グループなどです。

(第3段落)一般には、彼らの仕事はアイディアが実現可能であるかどうかを調べてコンセプトを構築することです。細かく言えば、プロジェクトに関心を集めること、利害の対立する複数のグループから寄せられる関心をコントロールすること、プロのデザイナーに指示を与えること、資金繰りをすること、コミュニティーと市の必要性に合ったコンセプトを構築することなどです。コ・デザインのワークショップを開くことについて議論が行われるのは、この時期にあたります。

5、ワークショップの目的

コ・デザインのワークショップは、コミュニティーが特定の目的を達成する手助けをします。都市計画委員会や市民グループがコ・デザインが自分たちの必要性に適っているかどうかを議論するとき、以下のようなワークショップの性質が検討されます。
f0239150_734778.jpg

(図)個々のワークショップの関連

準備→ボランティア・ワークショップ、子供ワークショップ、早朝ワークショップ、市民ワークショップ→コンセプト・デザイン→展示→報告書


(1)都市計画の実現と同時に、イベントとしての性質があること
社会的、そしてアート性のあるイベントとして、多くの人を惹き付け、長期的なプランニングのプロセスに参加し、自分の時間を注ぎこもうと思わせること。

(2)ボランティアと支持者を惹き付ける

コ・デザインのワークショップには大きなボランティア・プログラムがあり、それぞれのボランティアに何らかの小さな仕事が割り当てられます。これは積極的な支持者の大きな集まりを意味しており、プロジェクトの最初の段階と融資の成功のための大きな要因です。

(3)都市計画者の能力の向上に貢献する
プログラムは通常、コミュニティー団体と市から部分的に財政的な支援を受けているので、これに参加することで都市計画者のプロとしての能力が高まります。

(4)たくさんのアイディアを生む

大人も若者も、ワークショップに参加する人は皆、能動的な参加をすることができます。アイディアは相反するものであってもすべて受け入れられてイメージ化され、コミュニティーに提示されます。

(5)議論を集中させる
議論は、新しい場所、あるいは新しくされる場所で経験される生活に焦点を当てます。どんな活動がなされるか、いつ何人が参加するか、どんな場所であるべきか、などの質問をするのです。これらの問いに集中することで、参加者はそのコミュニティーに関する自分の経験と知識に基づいて議論に貢献することができるようになります。

(6)参加への障害を取り除く

マネージメント方針を知らないこと、都市計画や建築に関する専門知識がないこと、年齢なども、参加への妨げにはなりません。主に視覚的なプロセスなので、言葉の壁を越えることができます。政治的な事柄に関して意見が述べられた場合は、「もしも他の目標がすべて達成されたなら、この場所で何をしていますか?」と尋ねることで焦点を戻すことができます。

(7)コミュニティーの人々がアイディアの意味合いを理解するのを助ける
アイディアは、それに添えられた絵と言葉によって理解しやすくなります。そして、それぞれの住民の暮らしの中での実際の経験として想像しやすくなります。

(8)重要な事柄を浮き彫りにする
参加者は、どのアイディアを優先するかということを決めるために投票をします。アイディアとそれを描写する絵と言葉がたくさんあると、コミュニティーの優先事項が定まりやすくなります。

(9)人々が建築計画を理解する助けになる

計画パーツのそれぞれが市民のアイディアと関連しています。パーツは計画の現実面を表しており、個人の経験の中ではそれが何を意味するのかということを分かりやすくします。

(10)アイディアに再考の機会を与える
ワークショップの2、3日後にコンセプト・プランを展示すること、そして最終的な展示の前にコミュニティーを巡回して展示することによって、もう一度見直し、膨らみすぎたアイディアを静め、もっと現実的に実践する方法を探ることができます。

(11)強く一体化した提案を可能にする
ワークショップに多くの人が参加すること、多くのアイディアが出されること、優先順位を決めるための投票をすること、そして作品をコミュニティーで巡回することによって、市の担当者や融資機関に説得力のある提案ができます。

(12)住民の希望をプロの手で目に見える形にする
コ・デザイン・チームは、そのプロとしての専門知識や経験によって、コミュニティーと都市計画者との間の橋渡しをすることができます。また、住民の希望を現実的に形にしたものとして、担当者に深い印象を与えることができます。

(13)意思決定を導き、将来的な開発を促進するための絵を作る

絵は、新しい場所でのライフスタイルに加えて、その雰囲気や特性も示します。計画に添えられた絵を見た融資担当者、開発者、企業らは、市民が描いたこれらの絵を将来的な開発案を提出する際にガイドラインとして用いて、安心して仕事を進めることができます。

(14)コミュニティーの活力を増す
ワークショップでは、大勢の人が集まって自分のたちのアイディアを表明し、共有し、そして優先すべき事柄は何かと探ります。それぞれの人が得意とする分野に議論の焦点を当て、可能性を可視化させ、アイディアをまとめてコンセプトにする手助けをします。

(15)コミュニティーの価値観を尊重する

コミュニティーの価値観とは、共有される理解と希望を指します。人々は、コミュニティーに受け入れられるだろうと感じるアイディアを出します。多くのこのような個々のアイディアをまとめてみると、それがコミュニティーの理想の表明となります。それはコミュニティーの価値観という認識を目覚めさせ、人々がその真価を再評価するきっかけとなり、生き生きとした力強いコミュニティーの姿を浮き上がらせます。

(16)ワークショップに続くデザインに創造的な広がりを与える

デザイナーたちは、コ・デザインのワークショップでコミュニティーの人々が予想以上に多くのアイディアを出すことに驚くものです。また、ワークショップによってユーザーのニーズをよりよく知ることができるため、時間の節約にもなることに気がつきます。ある造園建築家は、子供向けのコ・デザイン・ワークショップのあとで、「すばらしい、ほんとうに楽しめた。子供を含むのは本当に良いことだ」と語りました。子供を除外すると、デザインは「子供がくれる刺激を欠くことになる。私は疎外されたように感じる。」しかし子供が入ることで「デザインをもっとずっと簡単に思いつく。」(注10)


6、参加者:人々を集める
都市計画会議に人を集めるのは、コミュニティーの大小に関わらず、繰り返し起こる問題です。コミュニティーの都市計画会議は、担当者があらかじめ人々に知ってもらおうと大変な努力をしたにも関わらず出席者が少ない、というのが普通です。コ・デザインのプロセスには、人集めに役立つ2つの特徴があります。

(1)ボランティアとその家族や友人
(2)現場で絵を描くこと

まず、40人以上の大きなボランティアグループを作り、それぞれに小さな仕事を与えてワークショップを組織します。彼らがポスターを作って配り、会場を整え、軽食と音楽を用意し、書記や現地視察のガイドとして働き、または仕事の一部としてワークショップに参加します。ボランティアはワークショップイベントの当日に家族や友人を連れてきます。第2の特徴は、アーティストがその場で絵を描くという点です。これらの特徴によって、ワークショップがイベントの様相を呈するようになります。準司法的に行われる正式な計画会議と違って、参加者のアイディアを尊重する祝いの場になるのです。

氷点下40度の真冬の吹雪の中で行われたあるワークショップには、100人以上が参加しました。このワークショップについて、カルガリー・ヘラルド新聞のボブ・シールズ記者がこう書いています。「冷やかしにきた多くの人々が信奉者になった。たしかに、妙なアイディアに思えた。市の中心地にあるハイ・リバー地区のイメージを改善するにはどうしたらいいかということについて、アイディアを持っている人たちが招かれ、アーティストたちと一緒に提案を絵にしていく---最も人気を集めたのは、その場で絵ができるということだ。人々は町を改善するためのアイディアを出し、アーティストたちがそれを絵にしていった。」(注11)

6-1 ユーザーの貢献

(第1段落)現地を利用する人々はとても豊かな情報源となり得ますが、大抵の場合、デザイナーはそれにアクセスすることができません。コ・デザインはユーザーの参加を3つの段階に分類します。

(1)現在の環境を固定したプロジェクトではなくプロセスと捉えること
(2)環境の「現実」を経験すること
(3)「理想的な」目標へ向けて環境の開発への次のステップを踏むこと

(第2段落)ユーザーたちは次のような分野においてデザイン作成のプロセスに貢献します。

(1)暮らしのあり方
ユーザーたちは現地での暮らしのあり方を細部まで詳しく知っています。そして彼らは、建築物に必要な詳細な機能について最良のアドバイスをしてくれます。

(2)現地の価値
現地に住む者、あるいはそこで働く者として、彼らは現地とその価値を熟知しており、現地データの書類よりよほど効率的に、早く、そして詳しくその知識を伝えてくれます。彼らの知識は、現地で行う活動に焦点が当てられています。

(3)時間
ユーザーは、現地の暮らしについて、朝、夜、そして一年中の様子、さらに何事もないときの様子、華やいだときの様子など、すべてを知っています。

(4)歴史
ユーザーは、現地の過去、懐かしい思い出、愛してやまないものを知っています。

(5)循環
ユーザーは、歩道や近道について、歩いたり自転車に乗ったりするときの流れについて、自転車で行くときの一番便利な道順などについて知っています。

(6)費用
私たちの経験では、大金のかかることを要求するかもしれないという恐れにも関わらず、ユーザーは費用を抑えることに協力的です。彼らは、何が必要か、どこを節約したらいいかを知っています。普通車で十分なときに高級車は要りません。また、費用は税金となって跳ね返って自分たちの懐から出て行くことを知っているため、担当者が過度な出費をするのを止めようとします。行政の担当者は、往々にして私たちが「ナポレオン風」と呼ぶ壮麗な建物を建てたがります。これは自分の業績の集大成として偉大な記念碑を残したいという心理によります。

(7)現実的な配慮
ユーザーたちは、何が実現可能か、そして未来に持ち越すべきは何かについて、経験に基づく適切な判断を下します。彼らの考えは現実的です。

6-2 若者たち
「都市計画の理想は、子供たちが町を利用できるようにすることだ。なぜなら、これは自分たちの町だという感覚を持った市民を育てられない都市は統治可能ではないからだ。」ポール・グッドマン(注12)

(第1段落)変化する環境に対する不安と抗議の声を上げた子供たちとのやり取りがコ・デザインのプロセスのきっかけとなりました。それはプロセスの特徴を形作ることにもなりました。難解な専門用語を避けること、議論のベースとしてその環境における個人の経験に焦点を当てること、そしてイメージを使うことによって、子供たちも大人と一緒に参加することができます。
f0239150_73555.jpg

(写真)ワークショップに託児サービスを設けるのは良いアイディアだが、子供たちが大人と一緒に参加したがる場合も少なくない。ここでは、アーティストが幼児とその母親のために描画をしている。(撮影:スティーブン・ヘイワード)
f0239150_7354290.jpg

(写真)ぬいぐるみを持って参加している子供。(撮影:ドン・ワイズ)

(第2段落)子供が参加した最初の2回のワークショップは1972年にカナダのノヴァ・スコシア州で開かれました。最初のワークショップがポート・ホークスベリーで行われたあと、それに参加した中学生の少年3人はヒッチハイクして、200マイル(およそ320km)離れたハリファックスでの2回目のワークショップにもやってきました。

(第3段落)次の二つのワークショップはバンクーバーで開かれました。2回目のワークショップでは、1回目のワークショップに参加した小学5年生の少年7人が再び参加していました。市街地を25区画歩いて来てくれたのです。このような反応がその後も繰り返されました。

(第4段落)子供たちには二つの特定の傾向が見られたため、彼らがデザイン・ワークショップに参加する前に行う特別イベントを開発しました。一つの傾向は、彼らは建築環境が変化するのを受け入れることができない、というものです。彼らは人生の早い段階で安心と安全と必要としています。非常に幼いときには、両親は部屋を出て行っても戻ってくるということを、そして後には、自分が近所に出かけて戻ってきたら家がそこにあるということを、知る必要があります。子供に共通して見られるこの傾向のために、彼らは環境が変化するプロセスを認識できず、変化を見るとそれを恐れと嫌悪を持って見るようになるのかもしれません。

(第5段落)もう一つの傾向は、子供に限ったことではありませんが、変化に対して「彼ら」という存在に責任を転嫁する傾向です。遠く離れた「彼ら」とは、政府、開発業者、エンジニア、建築家、そしてブルドーザーさえも意味します。この見方を取り除くために、コ・デザインでは「壁の町」と呼ぶ特別なイベントを行います。そこでは、小さな村が大都会へと発展していく様子を子供たちが大きな紙の上に描きます。

(第6段落)子供たちは都市化のプロセスと結果を自分たち自身に、そして見る人々に示します。彼らは、開発とは異質な力がやってきて環境を駄目にしてしまうというものではなく、私たち自身の行いだということを知ります。最初はのどかな村でしたが、賑やかな町になり、やがて高層ビルが立ち並び、高速道路といろいろな産業と人口過多でごみごみした巨大な都市になります。子供たちは自分たちが描いた都市を見て、それを嫌い、自問します。「どうしたらもっと良い町が描けるだろう?」

(第7段落)プロセスの次の段階は、現地を実際に歩いて視察することです。これによって子供たちは開発に参加しているという実感を得ます。彼らは自分たちの住むコミュニティーをとてもよく知っています。そこは彼らの遊び場であり、彼らは大人たちを時間を忘れて楽しめるような特別な場所に案内してくれます。子供にとって安全な場所は、すべての人にとって安全なのです。

(第8段落)身体的な感覚をデザインの基盤とすることを通した議論のあり方によって、子供も参加することができます。動きと地面の様子には足、トイレと食事の時間と間隔にはお腹、友人や身近な人のためには心臓、雰囲気には頭、風景には目、音には耳、空気の動きと物の表面の感じには顔と手、そして匂いには鼻。子供たちは大人よりずっと感覚的です。コミュニケーションに絵を使うことによって、子供たちは自分の意見を言うときの気後れを乗り越えることができ、安心して参加することができます。

(第9段落)1974年にバンクーバー市内の住宅地マウント・プレザントの開発のために行われたワークショップでは、私たちは若者たちの興味の度合いを知る機会を得ました。このコミュニティーの人口構成は、子供から高齢者まで均等に配分されていました。調査の最初の頃には、25歳から34歳までの人々がコミュニティーの未来について議論するのに最も積極的でした。その次は15歳未満のグループでした。第3は15歳から24歳でした。高齢者グループを訪問したりビジネスマンとの会合を持ったりもしましたが、調査の間中、この割合は変わりませんでした。年長の人々を惹き付けようと努力すればするほど若者たちが集まる結果となったのでした。興味を示した参加者たちの80%以上は34歳以下の人々でした。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-21 07:37 | 「コ・デザインの手法」

第2章 (イラスト込み)

第2章 コ・デザインのワークショップ

1、典型的なコ・デザインのワークショップ

(第1段落)この情景を思い描いてください。土曜日の朝、コ・デザインのワークショップの日です。コミュニティーの人々は、大きなイベントに期待を寄せながら何週間も計画を立ててきました。レクレーション・センターであれ、公園の計画であれ、大通りの活性化計画であれ、学校の新しい施設であれ、ワークショップの主題に取り組もうという希望で人々は心躍らせています。

(第2段落)参加者が会場にやってきて、すっかりワークショップの用意が整っている様子を目にします。コミュニティーのボランティアの人たちが挨拶をして、その日のプログラムを手渡し、脇に用意されたテーブルでコーヒーやスナックでもてなし、小さな子供たちを託児室に連れて行きます。

(第3段落)別のボランティアの人たちが壁にコミュニティーの大きな航空写真と地図を貼ります。他の人たちは壁に大きな白い紙を貼り、その前に半円状に椅子を並べ、やってくる参加者たちに着席を促します。行政府の議員たちが挨拶をして周ります。参加者たちの間に記者たちが座り、最後の準備が進んでいます。

(第4段落)コ・デザインのアーティストたちは芯にフォームが入ったスケッチボードに製図用紙を貼り付け、色とりどりのフェルトペンを揃えて絵を描く準備を整えています。彼らの周りの壁には、あらかじめ現地周辺を視察したときに描いておいたスケッチが何枚か貼ってあります。ワークショップの始まりが告げられ、地元のギター奏者の演奏が止まります。

1-1 ワークショップを始める
コミュニティーの町長など、地元の有力者を司会者として招き、開会の挨拶をしてもらいます。司会者は参加者に歓迎の言葉を述べ、その日のイベントの趣旨、ワークショップで取り扱われる都市計画問題の状況、そして長期的な都市計画プロセスにおける参加者の貢献を説明します。それから司会者は、これからワークショップを指揮するコ・デザインの進行係を紹介します。担当者はワークショップで行われる活動の順番を説明し、子供たちを前方に招きます。ワークショップは子供たちから始まるのです。

1-2 壁の街
(第1段落)子供たちは壁に貼った長くて白い紙の前で床に座ります。そして、自分たちなりに原野が都会へと変わっていく様子を絵に描きます。子供たちは、海に突き出した想像上の場所を訪れて想像するように促されます。コ・デザインの担当者が誰もいない場所の様子を描き、子供たちは自分がそこにカヌーでやってきて水辺に小さな家を建てる様子を想像します。次に子供たちは、そこに友達もやってきて近くに家を建てて住みたいかもしれない、と告げられます。ここで子供たちは村の発展の始まりを見て、新しい村で人々が何を必要とすると思うか、と尋ねられます。店、教会、あるいはスケート場かもしれません。子供たちが思い思いの答えを叫ぶと、彼らは前へ出てクレヨンで自分のアイディアを紙に描くように促されます。10分もしないうちに、50人もの子供たちが紙の前で押し合いへしあいしながらコミュニティーで必要なものを描きます。
f0239150_1150481.jpg



(イラスト)海に突き出した土地
f0239150_11504854.jpg



(写真)「壁の街」エクササイズで友人たちが近くに家を建てている。(撮影:ジョン・マッケンジー)
f0239150_11512179.jpg



(写真)子供たちが店を描いている。(撮影:マーガレット・キング)

(第2段落)「壁の街」エクササイズは、都市が発展する中で生じる多くの人間的な特徴を微細なレベルで表面化させます。子供たちは互いを押しのけてダウンタウンのスペースを確保します。街の真ん中に無理矢理高速道路が作られます。公園が無くなると不満の大声が聞こえます。ある子供はまだ空いているところに木々に囲まれて馬が家などがある緑の島を描き、その上に何か建てようとする子供から土地を守ります。別の者は脇に立って、他の子供たちがわいわいと我先に振舞う様子を疎ましそうに眺めます。自信たっぷりの子供は紙に突進し、他の子供たちもそれに続いて都市の破滅をもたらします。また別の子供は仲間たちに「ちょっと待って。どんな街にしたいか考えなくちゃ」と発言します。そして彼らがそう言ううちにも、その後ろにいる子供たちは描き続けます。(注8)
f0239150_11515565.jpg



(写真)教会。(撮影: ジョン・マッケンジー)
f0239150_11523692.jpg



(写真)レストラン。(撮影:ジョン・マッケンジー)

(第3段落)一歩離れて自分たちの作った街を見ると、子供たちは直ちにがっかりした顔をします。自分たちの作った街に住みたいか、と聞かれると、彼らは決まって「住みたくない!」と答えます。30分の間に子供たちは街の始まりから破滅までを見ました。そして、指導者は、私たちの環境を滅ぼすのはどこかから来た宇宙人ではなく、私たち自身なのだ、と説明します。
f0239150_1153945.jpg



(写真)コ・デザインの進行係が子供たちに自分のアイディアを描き加えるように促す。(撮影:ドン・ワイズ)
f0239150_11533918.jpg



(写真)子供たちは自分たちが描いた「壁の街」を見てがっかりした様子を示す。(撮影:ジョン・マッケンジー)

1-3 活動のタイムライン

コ・デザインの進行係は、新しい紙に太陽の動きを表す螺旋を描いた時間線を引き、昼と夜を表す時間を書き込みます。そして「新しい場所で、何が行われますか?午前6時には?7時には?」と尋ねます。聴衆は、自分たちの日常の生活に照らした活動を返答します。「朝寝坊」、「ジョギング」、「歩いて仕事に行く」などです。それぞれの返答が時間線の対応する場所に書き込まれます。指導者は質問を続けます。新しい場所での平日と週末、祝日や特別なイベントのある日、すべての季節での生活のすべての側面をリストアップするように促します。もしも聴衆からの返答が多すぎて担当者が正しく記録できないなら、書記を選んで返答を進行係に伝えたり、すべての返答を記録したりして、誰も見落とされないようにします。
f0239150_11541660.jpg



(図)活動のタイムライン(ル・コルビュジエのアイディアに基づく)
f0239150_11552140.jpg



(写真)参加者は現地の様子を想像して、思いつく活動を発言する。(撮影:チャック・ニズベット)
f0239150_11555832.jpg



(写真)ワークショップの進行係がタイムラインに活動のアイディアを書き入れる。(撮影:チャック・ニズベット)

(第2段落)これが終わると、参加者たちは書記一人あたりに3人のグループに分かれて、リストアップされた活動の中からどれか一つを選ぶように促されます。それからグループごとにコ・デザインのアーティストを選び、皆で軽食テーブルに行ってサンドイッチをつまみます。
f0239150_11563396.jpg



(写真)活動リストの詳細。実際のワークショップで作成された活動タイムラインの一部。参加者の発言が多く、多岐に渡ることが見て取れる。その中で、例えば「バスが子供たちをピックアップする」、「車が止まる」などの活動が、そのあとに続くイメージ・ワークショップのテーマとして丸で囲まれている。(撮影:ドン・ワイズ)

1-4 現地を歩く
(第1段落)次に、天気がいい場合には、グループは昼食を持って現地に赴きます。それぞれのグループは、自分たちの選んだテーマに関わりのある特質に留意しながら現地を視察します。アーティストと筆記係は、参加者たちに体の動きや行動、時間や季節、周囲にいる人数、場所の雰囲気、光、方角、眺め、音、手触り、匂いなどの観点を考慮するように促します。残すべき特徴や改良すべきこと、制約などを書き留めます。

(第2段落)書記はすべてのコメントを記録し、そのコミュニティーの地図に特徴を書き込みます。会場に戻ると、それぞれのグループが壁に貼った大きな地図にコメントを書き入れます。その際、ギター奏者が静かな音楽を奏でています。椅子は5つのグループ別に配置し直されています。それぞれのグループは、コ・デザインのアーティストを中心として座ります。

話し合いの決まり
続く話し合いの間、参加者は3つの決まりを守るように言われます。

(1)自分自身の意見だけを述べる。「私たちは」ではなく、「私は」と言い、他の人のことはその人の発言にまかせる。
(2)否定的な発言をしない。もしも誰かが挙げるコメントが気に入らないなら、代替案を挙げる。
(3)この段階で解決策を導こうとしないこと。その代わり、すべての案を記録しておく。アイディアが自然に流れ出るにまかせること。

1-5 イメージ図を作る

(第1段落)アーティストがスケッチ・ボードの上部に活動の名称を書きます。最初はその活動を行っている人物を描き、そしてアーティストはグループの指示に従って更に人物を加えます。質問と返答を通して、参加者たちは(屋外)家具や植え込み、車、建物その他の環境要因を示唆します。そのどれもがイメージ画に加えられます。示唆されるたびに、アーティストは参加者の目を見て、イメージが正しく描かれているかを確かめます。計画、メモ、その他の描写項目はイメージ画の横に列記されます。
f0239150_1158591.jpg



(写真)現地の視察。書記はクリップボードを持ってアーティストと参加者たちに付き添い、デザイン課題の設定条件を自分の目で見る。(撮影:チャック・ニズベット)

(第2段落)書記は絵の作成と同時進行でコメントを記録し、「体の動きと行動」、「人々」、「時間」、「雰囲気」、「景色と光」、「色」、「音」、「手触り」、「味わい」、「匂い」などの項目の下に書き込みます。相反する提案がなされたときは、速やかに解決策が出されない限り、代替案も書き込みます。
f0239150_11585385.jpg



(漫画)「8時には何をしていますか?」「ご飯を食べています。」「食べる」、と書き込む。「温かい色」「光と色」の項目に「日光、日中の光、夜にはロウソクの明かり」と書いてある。「どんな入り口ですか?」「アーチ型の、丸みのある入り口です。」

活動のリストからイメージ画までの流れ:
A.活動リスト
B.グループが一つの活動を選んで詳しく調べる。
C.現地を視察したあと、アーティストが活動の名称を書く。
D.参加者が情景を描写する。
E.F.アーティストがグループのアイディアを絵にする。


(第3段落)イメージ画の線画が完成したら、アーティストはグループに色やテクスチャーを加えるように促します。最後に、参加者が自分の名前を記入します。アーティストは最後にグループに促されてからサインをします。完成した絵とそれに添える説明書きを壁に貼ります。その横には今日のプログラムの最後の項目である採点評価のための用紙を貼ります。

1-6 優先順位を決めるための投票
(第1段落)参加者は軽食を手に会場を歩きまわり、たくさん貼り出された絵を見ていきます。彼らは互いにそれぞれの絵の特別な特徴を説明し、、アイディアの意味について議論します。

(第2段落)アーティストが絵の横に立って、採点方法に関する質問に答えます。参加者たちは、時間線の上の自分たちがテーマに選んだ項目を丸で囲みます。それから絵に添えられた評価表に、それぞれのイメージについて4段階の評価を行います。

(1)すばらしい。ぜひ実現したい。
(2)もっとデザインに工夫が必要だ。
(3)費用がかかりすぎる。
(4)ここには向かない。

評価の要点を強調するためにコメントを加えます。項目の横にたくさんの印がつけられるので、人気のあるアイディアはすぐに分かります。
f0239150_11593991.jpg



(イラスト)情景ができあがっていく。
f0239150_120894.jpg



(写真)イメージ・ワークショップは多くの人々を結びつける。(撮影:ドン・ワイズ)
f0239150_120457.jpg



(写真)公共デザインには誰でも参加できる。コ・デザインのアーティストが子供のアイディアを絵に描き、グループの議論に参加させる。(撮影:ジョン・マッケンジー)
f0239150_1211884.jpg



(写真)アーティストが熱心なグループのために2枚目の絵を描き始める。(撮影:ドン・ワイズ)
f0239150_122225.jpg



(写真)参加者がアーティストを手伝っている。(撮影:ドン・ワイズ)
f0239150_1223878.jpg



(写真)子供たちの中には自分で絵を描きたがる者もいる。(撮影:ドン・ワイズ)
f0239150_1231157.jpg



(写真)参加者たちが自分たちが作り出した絵を評価して採点する。(撮影:ドン・ワイズ)

1-7 ワークショップを終える
コミュニティーの代表者がプログラムの次の段階を説明してワークショップを終える。この後は、市民全体が見て採点できるように絵を展示され、都市計画者、デザイナー、そして行政府に報告書が提出されます。ボランティアたちが絵とコメント表を集め、地図と活動リスト図を丸め、会場を片付けます。
f0239150_1234932.jpg



(写真)アーティストたちとコミュニティーの住人たちがアイディアを集めてコンセプトプランに練り上げる。


2、アイディアを有効化する

2-1 コンセプトデザイン最終仕上げの討論

(第1段落)コ・デザインの中心的なアーティストたちがワークショップの後日に集まり、アイディアを持ち寄ります。都市計画専門家と一緒に社会計画、交通、経済などの事柄について議論します。コミュニティーの都市計画委員会も出席します。

(第2段落)アイディアを視覚化するセッションの結果は現地を何度も視察して議論を行いながら解析されます。コ・デザインのアーティストは、イメージと言葉を相応のデザイン用語に翻訳します。例えば、ワークショップの参加者が静かに会話を交わせる場所を望んだ場合、これは音響状態を意味し、交通の騒音を無くしたり抑えたりする必要性を意味します。日光があるほうがいい、という希望があれば、それは南側の建物の高さを制限する必要性を意味します。活動に参加する人々の推定数は、必要とされる広さを示しています。徐々に、ワークショップの優先的なアイディアは「デザインパーツ」へと発展します。それから部品はコンセプトデザインへと組み合わされ、大きな設計図が描かれます。イメージとして表現されたそれぞれの優先項目がコンセプトプラン内に番号で示されます。
f0239150_1243674.jpg



(写真)ワークショップで作成された絵と、それに基づいて作られた構想計画が市役所のロビーに展示されている。(撮影:ジョン・ハート)

2-2 一般展示
絵、説明書き、コンセプトデザインが一般展示で公表されます。その後2~3週間、展示物はコミュニティーの会合などで順次展示されます。計画委員会が募集したボランティアがすべてのコメントを書きとめます。

2-3 報告書

(第1段落)報告書にまとめられたワークショップ・プログラム全体の結果はコミュニティーのアイディアを記録しています。報告書は、アイディアを現実に翻訳する意思決定者、開発会社、都市計画者、都市デザイナー、および建築家のための参照資料となります。

(第2段落)報告書にはボランティアと参加者の名前がたくさん挙げられ、ワークショップの進行の様子が記載されます。報告文には、ワークショップで描かれた絵や撮影された写真も添えられます。それぞれの絵の特徴の環境的な性質を表す表も作られます。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-19 12:04 | 「コ・デザインの手法」

第1章 (イラスト無し)

第1部 市民参加の必要性に応える
第1章 背景

1、需要の広がり
(第1段落)建築とはコミュニティー全体に関する事柄である、というのは、古くからある考え方です。私たちの社会でも昔はそうでしたし、多くの発展途上国では今でもコミュニティーを作ることや納屋などを建てること、教会を建てることなどは、社会生活で大切な部分を占めています。彼らは単に建物を建てるだけではなく、コミュニティーの活力をも築き上げるのです。これらの社会では、コミュニティーの公共の建物がないということを社会的な退廃のしるしであると見なします。(注1)

(第2段落)現在、典型的なコミュニティーでは、人々は滅多に自分たちが使う公共の建物を建てる作業に参加することはありません。私たちの都会生活は、社会的な疎外と非人間的な環境で特徴づけられます。コ・デザインは、コミュニティーの人々を自分たちの環境をデザインするという作業に引き込むことによって、この動きに対抗しようという試みです。

(第3段落)歴史的に、コミュニティーに関わりを持つことは社会的、文化的な重要性が非常に高いとして認識されてきました。ケネス・クラーク卿は古い言葉を引用しています。

「1144年だと伝えられているが、まるで魔法のように塔が空へ向かって建てられていたころ、信仰深い人々は石を運ぶ荷車に体をくくりつけ、石切り場から大聖堂へとひっぱっていた。

情熱はフランス中に広がった。男たちも女たちも、労働者のためにブドウ酒や油やトウモロコシなど重い食料を持って遠くからやってきた。領主たちや貴婦人たちもいて、他の人たちと一緒に荷車を引いた。人々は完全に統制が取れた振る舞いをし、そこには深い静寂があった。すべての人の心が結びつき、誰もがそれぞれの敵を許した。」
(注2)

(第4段落)劇をするときやクリスマスツリーの飾りつけをするときなどには、私たちもこのような、共に何かを達成する感覚を味わいます。私たちは互いに対する好意的な感覚に輝き、互いに成功を祝い合い、それほどうまくできなかった者がいれば励まします。私たちのグループあるいは家族としての生命力が強まります。

(第5段落)コ・デザインのワークショップでは、私たちは同じ輝きを、参加者の間の友好的な感覚を、そしてコミュニティーの健全な生命力を目の当たりにします。共同的な創造性は、ないがしろにされていた公共の建物や広場に命を吹き込みます。器物破損行為はなくなります。芸術に社会が関わることの重要性について書いた文章の中で、フランク・アヴレー・ウィルソン(訳注:1914-2009 、イギリスの抽象画家)はこう述べています。

「個人が癒され、社会全体が癒される。個人の体と心の状態が癒されるに留まらず、グループや社会の関係全体の病への癒しが生じる。」(注3)

(第6段落)都市デザインと造園を含む建築は、その規模と社会的な影響の面で他のすべての芸術を超えています。特に公共の建築は社会に設定条件を提供し、私たちの日常生活の様々な側面で不可欠な役割を果たします。芸術における社会の関わりの源として、その大きさと恒常的かつ直接的な接触という点で、建築は他に比べるものがありません。公共の建築物のデザインは社会全体の生活に影響を与えるため、誰もが関心を持つ権利を有します。

(第7段落)デザインに参加した後は、人々はその成功に自分が貢献したことを誇りに思うことができます。そして、そのことについてのちのち何年も、日々、思い出すことができます。社会の中の建築物が人々の共通する価値観を反映するとき、人々はコミュニティーの一部であるという感覚を育むことができます。建築デザインへの参加は疎外感を打ち消します。

2、公共建築への関心の高まり
(第1段落)建築の公共の側面は昔から認識されています。ルネッサンス建築の創始者の一人であるレオン・バッティスタ・アルベルティは1450年代に建築は社会的な関心事であると書いており、建築が完全に公的な活動であるという見方をしたことで知られています(注4)。

1800年代の半ばには、ジョン・ラスキン(訳注:1819-1900、イギリスの芸術評論家)はこう主張しました(注5)。

「建築はすべての人が学ぶべき芸術である。なぜなら、それはそれはすべての人に関わる事柄だからである。」

1900年代の初めには、ウィリアム・モリス(訳注:1834-1896、イギリスのデザイナー)は次のように述べて、市民が建築に責任を負うよう促しました。

「建築の偉大さは、、、人の人生全体を包み込む。私たちは、自分たちに関わりのあることを一握りの学識のある人々に任せて、彼らに何から何までさせておくわけにはいかない。、、、私たち一人一人が(建築が)環境に対して公正であるか、そして私たちの街の住み心地の良さが確保されるか、ということに目を光らせていなければならない。」(注6)

(第2段落)今、私たちは一世紀に及ぶ公共教育のお陰で、比較的平和な世界と知識の高まりという新しい状況を手にしています。人々は自分たちの環境に対して発言権を要求しており、かつてないほど強く意思を主張します。アルヴィン・トフラー(訳注:1928年~、アメリカの評論家、未来学者)は、参加型民主主義について書いた文章の中で次のように述べました。

「状況は国によって違うが、適度に教育があり、全体としてこれほど多種多様な知識を備えた人々がいたことは、歴史上かつてなかった。これほど多くの人々が非常に高い水準の豊かさを楽しんだことはなかった。それは不安定ではあるかもしれないが、社会的な関心事や行動に時間とエネルギーを注ぐことができるようになるのに十分なほどの豊かさである。これほど多くの人々が外国に旅をしたり外国人と意思を疎通したり、他の文化からこれほど多くを学んだりしたことは、かつてなかった。」
(注7)

人々の知識と明確な主張がコ・デザインのエネルギー源となります。人々は、自分たちの住むコミュニティーをデザインするプロセスに参加するために、私たちに手助けを求めます。コ・デザインのプロセスは、そのような必要性に応じて、そしてデザインに関する議論の過程で生じる状況に応じて発達します。

伝統的な建築教育でも、建築の現場でも、市民と共にデザインをするためにはどうしたら良いかは教えられません。建築学の教育の場において、社会的な事柄やコミュニティーの組織化、大人数のグループと意思の疎通をするための方策と技術を含めた教育がなされる必要があります。同時に、高度な視覚化の技術が習得できるように訓練する必要がありますし、建築デザインの技能にはインテリアデザインや都市計画や都市デザインも含めなければなりません。コミュニティー・デザインに対する新しい見方に対応する新しいプロセスを開発する必要があります。

(第3段落)一面では、新しいプロセスは従来のやり方に反する場合もあります。例えば、間取り図に始まって完成予想図で終わる伝統的な建築コミュニケーションの過程を辿るのではなく、コ・デザインではその過程を逆に行います。

人が過去の記憶を呼び覚ますときは、それは心の目に浮かびます。未来の様子も同じようにして想像することができます。このように、未来の情景に関して意思の疎通を図るときに重要なのは視覚化です。コ・デザインのプロセスでは、見る人がその未来の情景の中で経験することを想像する手助けとなるよう、完成予想図を先に描きます。そうすることで、より良い理解をもってその場所のデザインに関する議論を深めることができます。情景がデザインされた後で、私たちは部屋なり空間なりの見取り図を描き、情景を説明し、それを立体化します。

3、伝統的なプロセスの危険性
(第1段落)提示された開発計画について行政府が市民に意見を求める際の伝統的な方法は、往々にしてデザインという目的に照らせば不十分なものです。一般投票、公聴会、意見交換会などは、コミュニティーデザインに関心のある人々の心に「デザインが本当にコミュニティーの人々の意見を反映したものになるだろうか」という疑念を残します。

これらの方法では、個々の市民が都市計画に参加したくても障害が多々あります。利害の対立は否定的な意見を促します。会議が行われることが十分に知らされない、情報の入手が間に合わない、などの原因で議題に関する理解が深まらないという問題もあります。一度に一人の人しか発言できないため、声が大きくて主張の強い人が発言権を握ってしまう、さらに、プロセスそのものに創造的なアイディアを視覚化する手段が欠けている、ということもあります。その結果、会議の産物はデザイナーにとってあまり役に立たないということになりがちです。

(第2段落)伝統的なデザインプロセスにおいては、市民計画委員会が小数の人々を選んでデザイナーと一緒に議論を行い、コミュニティーの代表として意思決定を行います。デザインに関する議論が進むと、この少数の人々は問題の事柄に関してコミュニティーの他の人々より多くの知識を持つことになります。議論をコミュニティー全体に広げるに当たっては、こうした伝統的なプロセスの問題点を避けるための議論の方法が必要になります。

もしもこの少数者のグループがうまく意思の疎通をすることができないと、人々は「このグループは自分たちとは遠い存在で、意見が固まっていて、コミュニティーのエリートの利害に叶うような行動をしている」と感じます。もっとひどいときには、彼らが自分たちの個人的な利益のために行動しているのではないかという疑いをかけられます。この小さなグループにとっては、市民との会議は恐ろしいものとなります。地域の中で利害の対立するグループが分裂して争うかもしれず、軽蔑と怒りの混じった嵐が吹き荒れるかもしれないからです。

3-1 板挟みになるデザイナー
(第1段落)伝統的な方法を使って公共の会議の場で都市開発計画を提示するデザイン関係者は、どちらに転んでも良い目にはあわない板挟みになることがあります。提示する内容が詳細であればあるほど批判も多くなります。絵や模型が良ければ良いほど、既に何でもかんでも決めてしまっている、と非難されます。こうなると怯えの感覚が忍び寄ります。肯定的な詳しい反応がないと、デザイン関係者は往々にして批判された要素を削除し、デザインの特徴を縮小させます。削ったものを他の何かで埋め合わせない場合も多々あります。

(第2段落)デザイナーたちは自分の考えていたことをだんだん言わなくなります。否定的な反応はデザインに関する意思決定を遅らせます。そして、認可の遅れはデザイン料金に食い込みます。公共の会議でデザインが却下されると、それはプロジェクト全体をデザインし直さなければならないことを意味しかねません。たいていの場合、デザインのやり直しまでする予算の余裕はありません。さらに、次のときに何が受け入れられるかを示す肯定的なヒントはありません。何を避ければ良いかという否定的なヒントがあるだけです。

(第3段落)会議が大失敗に終わると、市民に対するデザイナーの態度が悪化するという危険もあります。学校を出て活動を始めたばかりの若いデザイナーにとっては、特に市民のために都市環境を良くしようという強い情熱を持った若者にとっては、公共の会議での悲惨な経験は心に深い傷を残しかねません。市民参加のために更なる努力をしようという意欲も削いでしまいます。環境を利用する人が計画に参加することへの欲求が高まる中にあって、これは望ましい心構えとは言えません。

(第4段落)過熱して広く知られるようになった論議の只中に行政府や開発会社が開発計画を押し付ける場合は、失敗の値段は非常に高くなります。あるケースでは、大きな市民センターの計画でしたが、失敗で50万ドル(およそ5000万円)近くかかりました。このうち、およそ35万ドル(3500万円)は建築家に支払われた料金で、およそ10万ドル(1000万円)が一般投票に要した費用でした。この一般投票では、建築計画はあやうく撤回されるところでした。

そのようなケースでは、不人気な開発計画に取り組む建築家は論争と無駄金の源と見なされる危険があります。さらに、その地域の行政府や開発会社が将来的に、そのような公共の侮蔑にさらされた建築家を雇うことを軒並み躊躇する恐れがあります。

(第5段落)これらは、デザイナーが伝統的な方法でユーザーとのコミュニケーションを図った場合に負いかねない危険性です。デザインに関わる者はこれらの危険性を回避するための新しい方法を、緊急に必要としています。

4、私的なデザイン対話から公共のデザイン対話へ
(第1段落)従来の開発プロセスでは、開発の結果によって影響を受けるけれどデザインに関する議論に関係しない人々が疎外されます。子供たちは、ブルドーザーが彼らの遊び場だった空き地を更地にするとき、期せずして影響されます。彼らは、自分の人生の一部に対して自分が全く無力である、という事実に苦しみます。

大人もまた疎外感を経験します。彼らは自分の周りの環境に愛着を持ったり、少なくともそれに慣れ親しんだりします。そして建築家がやってきて、結果によって影響を受ける人々を議論に招かずに計画を立てます。環境が人生の一部になっているので、大人たちも子供と同じように、自分の人生に対して無力であるという感覚を得ます。

(第2段落)しかし、建築家が個人のクライアントと関わり、デザイン対話にクライアントを引き入れる場合には話が違います。建築家は、通常は個人のクライアントをデザインから疎外することはしません。クライアントが自分の新しい環境における新しい暮らしについて予見することを語り、建築家がデザインを形作り始めます。

デザイン対話では建設予定地の特性と制約を調べ、費用の優先順位を決定し、最後にデザイン条件を提示します。こうした対話はデザインの発展と成功に大きな役割を果たし、建築家はこれに細心の注意を払い、時間を取ります。

(第3段落)対話には特定の性質があります。話はクライアントが予見する暮らしの様子、彼らが日常の暮らしや特別のときにしているであろうことを中心とし、彼らがどういう暮らしをしたいかという予想図を描けるところまで続きます。

光、空間、動き、そして五感を通した知覚においてクライアントが好む環境を探すことに建築家は重点を置きます。デザイン条件についてクライアントと建築家の双方が完全な一致を見るまで、時期尚早なデザイン解決案は避けられます。クライアントの人生と建設予定地との関係の性質を理解するために、共に予定地を訪れて時間を過ごします。また、対話にはすべてのユーザーを含みます。家族の長だけではなく、普通は家族全員です。

(第4段落)私の長い建築経験では、いつもこうした配慮を重視してきました。もしもそれが軽視されるなら、トラブルが生じます。例えば、夫が妻の代わりに彼女の好むところを語ろうとする場合などです。クライアントが自分の考えを十分に吟味する前にデザイン案が出される場合も論争が生じます。

(第5段落)こうした対話の原則を無視した都市計画の実行は疎外を招きます。つまり、議論せずにアイディアを提示したり、予定地で実際に行われることになる暮らしのパターンの代わりにそれを無視した技術的な予定地データに依り頼んだり、統計的な調査に基づくデザイン条件に完全に依存したりする場合です。こういう方法は、デザイナーが必要な情報を集めるのには役立ちますが、創造的なコミュニティー参加という重要な要素が欠落しています。

5、都会での疎外を減らすための鍵
(第1段落)若い人も年配の人も、貧しい人も豊かな人も、無力な人も有力な人も、コミュニティーのすべての人がデザイン対話に参加することができるようにすることが、都会での疎外感を減らす鍵です。今日のデザイナーは、多数の市民に意見を聞かねばなりません。求められているのは、変化によって影響を受けるであろうすべての人に対してデザインに関する議論を開くことです。疑いもなく、これは非常に大きな仕事です。しかしそれは可能であり、私たちはそのためにここにコ・デザインのプロセスをご紹介します。

(第2段落)成功は、問題の解決法以上のものをもたらします。新しい秩序が生まれる、あるいは先述の引用文に沿った言い方をすれば、古い秩序が再び現れます。予期せぬ、そして歓迎されない変化への恐怖から開放されることによって、創造性を共有する高揚感が生まれます。それは、コミュニティーの中に夢が生まれ、それが調和へと発達するにつれて、喜びの高みとも言うべき経験になります。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-19 11:43 | 「コ・デザインの手法」

はじめに (イラスト込み)

コ・デザイン、デザイン参加のプロセス
スタンレー・キングおよびメリンダ・コンレー、ビル・ラティマー、ドルー・フェラーリ
f0239150_11324487.jpg



(第1段落)コ・デザイン(Co-Design、「一緒にデザインする」の意)とは、コミュニティーの中で人々が協力的かつ共同作業的に考えを寄せ合ってデザインする、というものです。コ・デザインの作業では、基礎的なスケッチと視覚化の技術を用い、市民を招いて都市計画のためのワークショップを開きます。本書「コ・デザイン、デザイン参加のプロセス」は、デザインに関わるすべての人々がアイディアを視覚的に共有することによって、都市計画者、建築家、デザイナー、そしてコミュニティーが確かなコミュニケーションを取れるようになるプロセスを示唆します。

(第2段落)人々が自分たちの周りの環境のデザインや都市計画にもっともっと積極的に関わる姿勢を強めている昨今、「コ・デザイン、デザイン参加のプロセス」はコミュニティーが都市計画に創造的に関わる上で有効なプロセスを提供します。本書ではコ・デザインのプログラムの全容を詳細に紹介しており、環境デザインへの既存の市民参加プロセスとは異なった効果的なプロセスを容易に習得できます。

地域社会の人々が持つデザインのアイディアをどのように議論し、焦点を当てるか、人々をデザインの過程でいかに導くか、人々のアイディアをどのようにデザインに生かすか、そして視覚化によってコミュニケーションを豊かにするための方法など、結果的に建築に役立つプロセスを紹介しています。

(第3段落)コ・デザインのプログラムの基盤は、組織化すること、教えること、そして技術を伸ばすことにあります。市民参加型デザインの背後にある理論に加え、コミュニティーで開くデザイン・ワークショップで使う簡単なスケッチ技法を順を追って分かりやすく説明しており、デザイナーと都市計画者にご活用頂けるものと思います。田舎の町の公園から都会の中心地まで、実際に行われたワークショップを例にとって、コ・デザインの様々な活用法を生き生きとご紹介します。教育的なコースの例も多数あります。

(第4段落)本書は建築家スタンレー・キングの20年に渡る経験に基づいてまとめられました。197回に及ぶ市民デザイン・ワークショップには延べ1万人以上が参加しました。過去10年間にはコ・デザイン協会として共著者たちと共にチーム研究を行い、ワークショップの方法もさらに洗練されました。ワークショップの準備、トレーニング、コミュニケーション、市民デザインへの参加のすべてにおいて、有効な方法を確立するための継続的な努力がなされています。

(第5段落)本書は、ワークショップの実例、インタビュー、分かりやすい解説、200点以上のイラストや写真などで構成されています。「コ・デザイン、デザイン参加のプロセス」は、対話型のデザイン作りを成功させるための斬新で有効的なプロセスとして、建築や都市計画、造園デザインやプログラミングなどに携わるプロの方、コミュニティーや企業、政府などで政策や方針の決定に携わる方、これらの事柄に関する活動をする学生や教育者など、幅広い分野の皆様に活用していただけます。

著者および共著者について
(第1段落)スタンレー・キングは建築家であり、南アルバータ州立技術学校(Southern Alberta Institute of Technology)の教師でもあります。彼はブリティッシュ・コロンビア州立大学で建築学の修士号のための論文を書いていた1969年にコ・デザインのプロセスを編み出しました。その後20年間、スタンレー・キングと彼の独創的なプロセスは国際的に高い評価を受け、研究およびデザインの分野で多数の賞を受賞しました。

(第2段落)スタンレー・キングは、コミュニティーが自分たちの環境を明確にデザインする手助けをするために、1979年に非営利団体コ・デザイン協会を設立しました。カルガリー大学の建築学の学生であって建築技術者でもあるメリンダ・コンレーとドルー・フェラーリ、さらに建築家であってエンジニアでもあるビル・ラティマーが加わり、コ・デザイン協会の中核メンバーとして活動を始めました。彼らは協力してコ・デザインの技術を教え、熱意と興味を示した大勢のデザイナーやアーティストたちにトレーニングを施し、市民が参加した多数のワークショップを記録して本書の基礎を作りました。

f0239150_11355530.jpg

表紙:1973年にバンクーバー市民1,000人を対象に行われたワークショップで最も人気の高かったイラスト。このワークショップのテーマは、当時荒れ果てた工業地帯跡地だったフォールスクリークの再開発だった。


上:そのワークショップの結果として実現した造園デザイン。
f0239150_1134236.jpg



コ・デザイン、デザイン参加のプロセス
スタンレー・キングおよびメリンダ・コンレー、ビル・ラティマー、ドルー・フェラーリ
f0239150_11371565.jpg



本書をカナダおよび米国各地でワークショップに参加してコ・デザインのプロセスの発達を促した1万人以上の若者たちと大人たちに捧げます。


目次 (省略)

はじめに
(第1段落)本書は、最終的に環境を利用することになる市民と共にデザインをイメージすることに関するものです。私たちは視覚化に重点を置いており、それが他の市民参加型のデザインプロセスとは一線を画するところです。内容の大部分はスケッチ技術を育てることに当てられています。本書は私たちが行った190回のワークショップ経験に基づいており、それらを通して育んだガイドラインと技法をご紹介しています。

(第2段落)私たちが依頼されたワークショップのテーマは、大きな都会、コミュニティーの中のレクレーション・エリア、小さな町、都心部の住宅地、大学の学部、学校、協会、オフィス、商業センターなどです。それらに共通して必要だったのは、自分たちの環境をデザインする上での手助けであり、様々なアイディアを一つの概念のもとにまとめる方法でした。

(第3段落)私たちは本書において、人々がアイディアを議論するときに中心となる主題を提供する方法、デザインのプロセスを通して人々を導く方法、アイディアにデザイン的な側面から肉付けする方法、そしてコミュニケーションを視覚化によって容易にする方法をご紹介します。一言で言えば、建築を容易にする方法を描写しています。

(第4段落)さらに、参加者がデザインのプロセスに加わりやすくなるような「分かりやすい」絵を描く方法を教えます。私たちは、対話を促し、のちに正確なデザインのデータを提供するものとしての建築技術である、「その場で情景を描き出す絵」を描くことに重点を置いています。アーティスト訓練のコースを開いたときに最もリクエストの多いのが、スケッチ技法です。スケッチに関する本は多数出回っていますが、それらではカバーされていないこうした技法を本書では詳しく説明しています。読者としては、基礎的な遠近法と人物画の技術のある方を想定しています。スケッチの入門書ではないことをご了承ください。

(第5段落)本書の全体を通して使用されるコ・デザインという言葉は、地域社会における(Community)、協力的(Cooperative)で共同作業的(Collaborative)なデザイン、という意味を総合したものです。コ・デザインのアーティストについて語るとき、私たちが指しているのは他者の指示に基づいて人々や情景を描く高度な技術を持った人のことです。コ・デザインのアーティストには、建築環境のデザインに関する基礎的な知識があること、つまり建築、都市計画、建築技術、造園建築、インテリアデザイン、都市デザイン、立体造形などの素養が必要となります。本書では「建築」という言葉を広義で用いており、これらの職業技術のすべてを含みます。「環境デザイン」という言葉でなく「建築」を使うのは、本書の著者が元来建築家であり、他国における同様の業績が建築家によってなされているからです。ボランティアとして本書の制作に参加した書記たちはプロの文筆家ではありません。ワークショップの概念を理解して記録を取るためのトレーニングを受けた、コミュニティーの人々です。


コ・デザインの名前の由来

コミュニティーにおける(Community)、協力的(Cooperative)で共同作業的( Collaborative)なデザイン=コ・デザイン
f0239150_1138197.jpg



本書の読者想定、および望み
本書は以下の5つの種類の読者を想定しています。

1、プログラミングおよびデザイン建築、プランニング、都市デザイン、インテリアデザイン、および造園デザインを職業とする人。顧客およびユーザーにデザインに参加してもらう上で有効なガイド、および大きなコミュニティーと生産的にコミュニケーションを取る方法を示します。

2、上記の職業を目指して学んでいる学生には、それぞれの分野でのデザインプロセスの開発に役立つガイド、デザイン対話を導く方法、そしてデザイン・スケッチの技術を伸ばす方法を教えます。本書を活用することによって、将来的に顧客やコミュニティーと創造的に働く技能を身につけることができます。

3、コミュニティー、企業、および政府で方針や政策の決定に携わる人、ならびに人々を意思決定に参加させるプロセスにおいて多数の成功例を求める市民による計画委員会の人々。

4、企業の中間管理職にある人、および彼らが市民参加プログラムを実行する上でアシスタントとなる人。本書は組織化の過程をステップ・バイ・ステップで紹介し、作業の遂行を容易にします。

5、小学校から大学にいたるまで、様々なレベルで教育に携わる人。本書は学生が自分たちの学校やコミュニティーや都市内のエリアのデザインに関わった多数の事例を段階を追って説明しています。
市民が意思決定に参加することの重要性がますます認識されるようになってきている現在、本書は読者が環境を創造的にデザインする際に人々を効果的に導く能力を育みます。


謝辞
(第1段落)コ・デザインは子供たちと共に始まりました。彼らは怒りに燃える目で私を取り囲みました。彼らの中には私の息子もいて、彼は「ブルドーザーが僕たちの遊び場を壊しているよ。そんなことが許されているの?どんな決まりがあるの?」と叫びました。大人にとってはただの空き地でしたが、子供たちにとってはそれは、自分たちで切り開き、木の上に砦も作って自分たちの領域と決めた大切な場所でした。彼らの環境を破壊し、それなのにその意思決定に彼らを含めなかった開発に対して、彼らは強い疑問と怒りを感じていました。それがコ・デザインのきっかけとなったのです。

これは、コ・デザインのプロセスがシンプルであることや、使われる言語が直接的であること、そのイメージ、そしてそのデザイン認識が知性を通した経験というより感覚的なものであることなどに反映されています。1960年代半ば当時、モントリオールには建築ブームが起こっていて、多数の古い建物が取り壊されていました。市内のそうした古い住宅地を訪れて美しい建物のスケッチをするにつれ、私は自分が破滅の使者であるかのように感じ始めました。私が訪れると、まもなくこれらの建築物は取り壊され、無味乾燥で世界中どこにでもあるような大規模開発の建物に取って代わられるのです。住人たち、とくに子供たちは、こうした破滅を食い止めるには自分は無力だと感じていました。

(第2段落)私は彼らの不安や疑問に対応しようとしました。そのとき以来、私は家族や友人たちや、やがては建築学その他でプロとして働く同僚たちの助けを得て、答えを見出そうという努力を続けています。私は彼らと共に本書を著しました。

(第3段落)最初は、教育を通した答えを目指しました。美術教師である妻のマーガレットと3人の子供たちと共に多くの学校を訪れ、教育資料を作成し、都市開発のプロセスを説明するために配布しました。これには多くの教育者のご協力を頂きました。特に、BC州立大学のエメリタス・フランク・ハードウィック教授、バンクーバー教育委員会のゲイリー・オンスタッド氏、サイモン・フレーザー大学のミルト・マクラレン教授、そしてビクトリア大学のマーク・ベル教授です。

国立芸術基金のアース・エリクセン氏は、建築された環境に関する教育というご自分の研究で手助けしてくださり、建築家と教育者の会議で私が自分の研究を発表する手配をしてくださいました。イギリスの「都市と田園計画協会」の教育担当者であるコリン・ワード氏は、私の研究および同様の研究をしている他の人たちの仕事に関して文章を書き、激励してくださいました。子供たちと一緒に行った研究は実際のデザイン問題に関するものであり、親たちや他の大人たちも参加しました。
f0239150_1139352.jpg



(イラスト)遊び場がブルドーザーで壊されているよ。どんな決まりがあるの?」

(第4段落)カナダ政府からは、1970年代にこのプロセスをさらに発展させるために補助金を授与していただきました。都市問題に関する担当大臣であるロン・バスフォード氏、都市問題に関する担当大臣代理であるピーター・オバーランダー氏、首相室のコートニー・タワーズ氏からは、特筆すべき助力を賜りました。また、国立映画局の局長であるバリー・ハウエル氏は、私のワークショップの様子を収めた「チェアズ・フォー・ラバーズ(恋人たちの椅子)」という映画に多大な励ましを下さいました。

また、建築と都市計画に関わる大勢のプロの皆さまから積極的な支援を頂きました。特に、共にバンクーバー市の都市計画部長であったウィリアム・グラハム氏、続いてレイ・スパックスマン氏、カナダ地域計画協会のヒルダ・サイモンズ氏、ジョン・デス氏、ならびにガイ・スペンサー氏、ブリティッシュ・コロンビア州立大学の建築学部の部長であるヘンリー・エルダー氏、そして当時そこで学ぶ学生だったメリー・ベッカー氏とキャサリン・アーバネック氏からは、特筆すべきご協力を賜りました。

(第5段落)1979年、アルバータ州のカルガリー市で建築ブームが起きていた頃に研究の規模は拡大しました。非営利団体コ・デザイン協会を設立したのはこの頃です。中核メンバーには、アーティスト、建築家および建築技術者がいました。メリンダ・(ミンディー)・コンレー氏は、この中核グループの会計係兼秘書のボランティアとして継続的かつ効率的な奉仕をしてくださいました。

(第6段落)ワークショップでのアーティストの技能が優れていれば参加者からの反応が大きいことが分かると、私たちはカルガリー市、およびブリティッシュ・コロンビア州のビクトリア市とペンダー・アイランドでスケッチのクラスを始めました。中でも特に才能があって熱心に勉強を続けた生徒たちであるメリンダ・コンレー氏、ビル・ラティマー氏、およびドルー・フェラーリ氏は、やがてワークショップの運営や協会組織の中心として指導的な活躍をするようになりました。彼らは現在では本書の共著者であり、彼らの協力なくして本書はあり得ませんでした。

(第7段落)カルガリーの南アルバータ技術学校の建築技術コースの指導主事であるフレッド・クリングベール氏からは長年に渡る支援を頂きました。また、同校の他の多くの同僚たちや学生たちからも様々に支えていただきました。

(第8段落)カルガリー大学の環境デザイン学部のタン・リー教授およびロバート・カービー氏は、一時的な宿泊の手配やコンピューターの使用などを通して支援してくださいました。また、本書の共著者であるメリンダとドルーの研究作品を、同大学における建築学の修士課程で指定学習材料の一部として使用していただきました。また、同大学では、図書館でのコンピューターを使ったリサーチにマイク・ブリッジズ氏が、そして絵の複製ではランディ・ハドレー氏が協力してくださいました。カナダ都市計画従事者協会のアルバータ支部は、私たちの研究に激励と資金面での多額のご協力を賜りました。

(第9段落)コ・デザイン協会のメンバーたちは皆、アーティストあるいは運営担当者として多くのワークショップを行いました。中でも特記すべきは、妻のマーガレット、オードリー・クリスティー氏、ジーニー・カリン氏、エリザベス・アレン氏、ピーター・ウォルシュ氏、ワレン・ガウル氏、ロバート・アグニュー氏、そしてチャック・スミス氏です。娘のシリアは研究およびワークショップ現場での写真撮影で協力してくれました。

(第10段落)フリーランス作家のリン・マクダウエル氏、タン・リー教授、そしてアンドレ・アイフリッグ氏は、原稿の編集において洞察の深い助言を下さいました。カルガリー市役所の都市計画者であるフィリップ・ダック氏は、地域社会とプロの都市計画者の間に架け橋を作る上での激励とご指導をくださいました。

(第11段落)本書を作るまでに、カナダとアメリカで若者たちと大人を合わせて1万人ほどの人々が参加しました。彼らの一人一人が、反応や熱意や激励を通してこの研究に貢献しました。彼らは自分たちの好みをはっきりと表し、その結果、何百という公共の場がもっと人間的なものとして完成しました。おそらく、これこそが25年前に私の息子と彼の友人たちが求めていた答えなのだと思います。彼らの怒りのこもった苦情は、場所を利用する人々、特に若い人々は、その場所の未来について議論するときに積極的に参加したちと思っていることが私には今では分かるのです。彼らの訴えは正当なものであったことが、こうしてはっきりしました。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-06-19 11:40 | 「コ・デザインの手法」

コ・デザイン デザイン参加の手法7

第4章 建築された例

コ・デザインのワークショップから受賞歴のあるデザインが生まれる
「アイディアは理想主義的に聞こえるかもしれませんが、その結果の前には反論を引っ込めざるを得ません。単純なコミュニケーションによって、地域社会の感覚と達成に多大な貢献ができるように見えます。コ・デザインのプロジェクトが終わってから何年も経っても、それがどうやってできたかが語り継がれます。そしてその精神も生き続けます。」(注13)リン・ニューマン・マクドウェル


BC州バンクーバー市ロブソン広場
1、この有名な広場が作られたときには、人口250万人の大きな国際都市の地区全体で大きな関心を集めました。政治的な論争も過熱しました。直前に政権を握ったばかりの新しい政府はこの場所を「人々の場所」にする意図を宣言しましたが、そこには以前の政府が50階建ての高層ビルを建てる計画を発表していました。

2、複数の市民グループがこの場所のデザインについてアイディアを声高に述べ始めました。あるグループは市民によるデザイン・ワークショップを行うために私たちを招きました。それは現地から都市区画で半ブロック離れたキリスト教会聖堂で開かれました。

ロケーションの選択も更なる論争を引き起こしました。人々に愛されていたこの古い建物を取り壊す計画も発表されていたからです。

3、新聞、テレビとラジオがワークショップを予告し、大勢の記者が詰め掛けました。カナダ映画省がワークショップの様子を撮影し(”Chairs for Lovers")、イベントの様子は全国のニュースで放映されました。

4、市民の声を聞く姿勢を視覚的にアピールするために(?)政治家も参加しました。抗議する非地日とはプラカードを持ってパレードしました。通りの向こう側のホテルで行われていた会議に参加していた建築家たちもやってきて参加しました。知られているすべての利益団体が代表されていました。

5、ワークショップの準備のために生徒たちを手配するため、近隣および周辺の学区の学校訪問もなされていました。全体で、大勢の子供を含む200名以上が二日間にわたるイベントに参加しました。

6、ワークショップで出された提案には、ガラス張りの天井があって、冬は氷を張り、夏はローラースケート用にしたスケート場というものがありました。また、カジュアルにパフォーマンスを炭素秘める屋外型劇場、パラソルを出した屋外型のレストラン、悪天候のためにガラス張りにした屋根、噴水、木を植えた散歩道、木の下で座れるところ、などがありました。

7、全国的に有名なバンクーバーの建築家アーサー・エリックソン氏がワークショップでのインプットからコンセプトを作り、現場近くに特設された場所で展示しました。エリックソン氏は、見る人たちにコメントを寄せるよう奨励しました。彼はそこから受賞歴のあるデザインを作り出し、市民参加から素晴らしいものが生まれるということを証明しました。

8、今ではロブソン広場は、ちょうどワークショップ参加者が描写したように、大人も子供もガラス張りのドームの下で大きな音楽に合わせてスケートできる場所です。(ドームの上でスケートをするというアイディアも出されましたが、それは建築家にとって技術的に難しすぎるものでした。)

さらに、階段は下にある広場で行われるパフォーマンスを人々が座ってカジュアルに見ることができる「ギリシャ風劇場」になっています。

(写真)コ・デザインのアーティストと子供たちがロブソン広場のスケートドームのアイディアの核心をスケッチしている。(撮影:カナダ映画省提供、”Chairs for Lovers")

(写真)バンクーバーのロブソン広場、ワークショップで出されたローラースケートのアイディアが実現した。(撮影:シリア・キング=ベンダー)


フォールスクリークのイメージ調査、BC州バンクーバー市
1、バンクーバーのダウンタウン半島に沿った入り江の海沿いにある、住人3,000人の住宅地フォールスクリークの受賞歴のあるデザインには1,000人が参加しました。1970年代初め、市は老朽化した海辺の産業地帯だったこの場所を買い取りました。

市民投票の結果、この場所は住宅・商業地域になることが決定され、コンセプト作りのために地元の建築家が委託されました。

2、1973年、バンクーバー市は私たちに市民のデザイン嗜好を調べるように依頼しました。私たちは夏の間の3ヶ月を使って、およそ1,000人の人々にイメージ調査を行いました。調査はフォールスクリークに作られた一次的な公園、および市の他の幾つかの公共の場所で行われました。公園内には建築デザインが展示されました。

3、参加者には、北米の暮らしの側面を手書きのイラストで表した5インチ(12センチ)x7インチ(18センチ)のカラーイラストのカードが配られました。人々はそれぞれにイラストを3つに分けました。
(1)今の自分の暮らしにあてはまるもの
(2)(1)に入らなかったものの中から、してみたいこと
(3)フォールスクリークで自分がしていると思える活動

(イラスト)1973年、フォールスクリークのために市民が選んだ活動の第1位はサイクリングでした。1976年にフォールスクリークのウォーターフロントがオープンしたときの様子と比べてみてください。

(写真)フォールスクリークのサイクリング道(撮影:シリア・キング=ベンダー)

(イラスト)1973年、フォールスクリークの市民投票で上位10位内に入ったファーマーズマーケット。その後、1978年にフォールスクリークにオープンしたグランビル・ファーマーズマーケットと比べてみてください。

(イラスト)子供のワークショップでの作画。完成した子供の遊び場と比べてみてください。

(写真)フォールスクリークの子供の遊び場。(撮影:スタン・キング)

4、それから参加者は、ワークショップと同じやり方でフォールスクリークの環境のデザインの好みを議論しました。インタビューはそれぞれ約1時間かかりました。

5、集められた結果は、自然な植栽のある場所、それを取り囲む集合的な低い住宅、サイクリングと歩行者のためのウォーターフロント、そしてマーケットでした。

この結果は、高層建築とショッピングモールのある大いに都会化されたウォーターフロントを提案する以前の建築デザインとは対照的でした。

6、さらに、私たちはいくつかの住宅共同組合と、学校と遊び場のために生徒たちと親たちと、そして近くのグランビルアイランドのコミュニティーセンターのデザインのために地域社会全体と、複数のワークショップを行いました。

7、市は、受賞歴のある開発をデザインした建築家のチームを集め、イメージ調査の結果に沿ったデザインで続行しました。

8、公園は自然の景観を見事に模倣したため、ビーバーが棲み付いて何本かの木を切り倒してしまい、移動させねばなりませんでした。

9、商業的には、小さな商店と有名なグランビルアイランドマーケットがあります。
[PR]
by ammolitering7 | 2013-01-22 15:15 | 「コ・デザインの手法」