ユースマニュアル2

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ユース・マニュアル 第1章「壁の街」

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プログラムの目的
若者たちが変化を計画する「誰か」に会って話をする。街が発展するのは「誰か」ではなく「自分たち」の活動によるものであることを、若者たちが自ら理解する。若者たちが自分たちの場所の未来のためのデザインに関して発言権を持つ。

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デザイナーにとっての利益
「あなた自身を描いて、それから友達を描いて、それから周りの様子を描いてください」という単純な指示によって、都市計画者にとってのデザインの宝庫が開かれます。自分と友人たちがいる様子を描き、周囲の様子を描写することによって、若者たちは「活動」の項目を加えてくれます。デザイナーはこれを最良のガイダンスとします。それによってデザイナーは自分の経験、知識、創造性を理想の生活様式に適うように生かすことができるからです。デザイナーにとって若者たちの描いた絵は貴重です。それらは他の方法では得られないデザイン・データを提供するからです。若者たちは自分たちの環境について鋭い感覚を持っており、予算のことや管理のことなどの大人の考えにとらわれない新鮮な視点を提供します。

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実行前の手配
始まり:都市計画者を招待する
若者たちの環境に変化を与える計画に若者たち自身が参加するプログラムを開始する前に、計画者と意思決定者が彼らのアイディアを喜んで受け入れるということを確認する必要があります。

彼らは通常はその町の若者たちからのアイディアを考慮する用意があるものです。喜んで若者たちと語り合って彼らの気持ちを聞く用意があることを、理解してもらおうとするでしょう。市長および他の公証人たちも、少なくとも挨拶の部分だけでも学校にやってきて計画者と共に若者たちに会ってくれる場合があります。

「壁の街」の例
スタンレー・キングがバンクーバー市のロブソン広場のデザインのために同様の「壁の街」エクササイズを行っている様子を撮影した映画「恋人たちの椅子(チェアズ・フォー・ラバース、邦訳無し)」。カナダ映画庁、28分。

新聞、テレビ

地域の新聞やテレビは、都市計画に子供たちが参加するという出来事に興味を示す場合が多く、子供たちの描いた絵を掲載あるいは放映したいという意向を示します。その場合は保護者の許可が必要です。(訳注:子供たち自身の映像や写真も同様。)

子供たちを撮影するために好適な時間帯は「壁の街」エクササイズの後半、およそ9時半から10時の間です。(訳注:朝9時から始める場合)

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会場での準備
体育館でのセットアップ
床に6メートルほどの紙を広げます。生徒たちに紙を壁に貼ってくれるように頼みます。紙は2重にするのが最適ですが、もしも壁がデコボコしているようであれば増やします。

生徒たちが到着する

生徒たちに、壁に貼った紙の方を向いて、互いに詰めて座るように頼みます。最前列の生徒と壁の間に1メートル強のスペースを空けておきます。最前列の生徒たちに、エクササイズのために持ってきたパステルやフェルトペンを箱から出してくれるように頼みます。

地域の指導者や都市計画者を紹介する

地域の指導者や都市計画者に頼んで、生徒たちに自分たちの日頃の仕事のことや計画予定地について話してもらいます。また、該当地域に対する生徒たちのアイディアは計画する上で考慮されるということも話してもらいます。

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「壁の街」エクササイズ

9時「街がどうやって発展するかを見てみましょう」
「あなた方の地域の将来については、しばらく後で想像してもらいます。今はまず昔のことを振り返って、街が実際にどうやって発達するのかを見てみましょう。」

生徒たちに話しかけながら、茶色と青のパステルを使って地面と水を表す線を引きます。
「あまり誰も住んでいないときにこの土地にやってきた様子を想像してみてください。こうやって、あなたはカヌーに乗ってやってきました。

ここで何をしますか?
どんな音が聞こえますか。
どんな匂いがしますか?

ここにもっと長くいたいと思ったので、土地を幾らか買うことにしました。
友達がやってきて、小屋を建てるのを手伝ってくれます。
どこに建てますか?。。。ここですか?」


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「友達も住みたがりました」
「あなたの友達もここに住みたがりました。それであなたは土地を分けて、友達に区画を売って、家を建てるのを助けてあげます。買い物をするときはどこに行きますか。お茶を一杯飲みたいときは?レストランとお店が要りますね。何軒かの家は、改造してこういうサービスを提供するようになります。

嫌な匂いのする動物の皮や骨をトラックに積んだ人がやってきました。この人は工場を建てたいのです。」

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「さあ、街が出来始めました」
「お金を稼ぐことができるのは嬉しいですが、工場の匂いがあんまり近くでするのは
嬉しくありません。工場はどこに建てたらいいですか?あっちですか。。。?

さあ、こうやって街ができてきました。居住地域と呼ばれる、住むところがあります。商業地域と呼ばれる、買い物をするところがあります。そして、工業地域と呼ばれる、働くところがあります。」


ここで、知っている街の様子を思い出すように促します。そして、絵に何を加えたらいいかを考えてもらいます。生徒たちは、「病院」、「学校」、「消防署!」などと口々に言います。前に出てきてそれを描いてもらうように頼みます。

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「前に出てきて描いてみませんか」

素敵なアイディアがたくさんありますね!ここに来て絵に描き込んでください。パステルを使って自分のアイディアを描いてください。どんどんできていく街のどの辺りにあったらいいかを考えて描いてください。」

9時40分
「この街に住みたいですか?」
まもなく、ごみごみした街ができあがります。
「座ってください。みんなで描いた街を見てみましょう。ここに住んでみたいですか?」

必ずとは限りませんが、子供たちは多くの場合「住みたくない」と答えます。自分たちの住む都会の環境に似ているので、住みたくないと言うのです。描かれた街は、商店やコンクリートや自動車でごみごみしています。木はほとんどありません。うるさくて臭くて、ごみごみした街に見えます。

生徒たちにカヌーを見つけるように指示します。この場所が自然に溢れていたときには何が聞こえ、何が見え、どんな匂いがしていたかを思い出してもらいます。

「あなたが住みたいのはこんな場所ですか?この場所が自然だったときには、何ができましたか?今描いた街では、何ができますか?今、この街では何が聞こえますか?何が見えますか?どんな匂いがしますか?」

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都市の問題

「現在では地球上に60億人の人間がいて、その半分は都市に住んでいる。2050年には人口は90億人に増え、都会には60億人が住むことになると予想されている。」
ハンス・ロスリング博士、ギャップマインダー(訳注:「ギャップマインダーはスウェーデンの非営利組織。様々な国際的な統計を公開している。)
http://www.gapminder.org/videos/a-slum-insight/

「もしも誰もが私たちが築いたような都市に住むなら、それを支えるためには少なくとも地球が4つは必要です。」

写真はNASAがアポロ17号から撮影したもの。(1972年12月7日)

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もう一度やり直し。何をしたいですか?
「私たちの街を見てください。ここにあるのはどれも何かを解決するためにできたものですが、今では問題が何だったかということさえ分かりません。

もう一度デザインをやり直しましょう。そして、今度は「どうしたらいいか」ということは考えないで、建物のことも考えません。今度は「何がしたいか」ということを考えてみましょう。建物がいらない場合もあるのです。」


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個人的な経験と知覚(PEP)
「空気や暖かさを感じるのはどの部分ですか?」
「今ここにいる自分のことを考えてみましょう。周りに直接触れているのはどの部分ですか?」

生徒たちは「足」、「お尻」などと答えます。

「空気や暖かさを感じるのは体のどの部分ですか?」
「顔。」「手。」

「場所の雰囲気を感じたり、周りの人たちや生き物のことを考えたりするのはどの部分ですか?」
「頭。」「心。」

「歩いていたり立っていたりするとき、周りに触れるのは何ですか?
「足。」


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「では、時間の中心は?」
「見たり聞いたり匂いを嗅いだり味わったりするのはどの部分ですか?」
「目。」「耳。」「鼻。」「口。」

「では、時間の中心にあるのはどの部分ですか?」

生徒たちは、普通はこの問いに対してはしばらく考え込みます。
「脳みそ?」「心臓?」
「そうですね、それもいいですが、それは一番の中心ではありません。この部分が「時間ですよ」と言えば、ほんとにその時間なんです!」

そのうちに誰かが「お腹」と答えます。

「そう、その通り。下腹部は「食べる時間ですよ」と教えてくれます。下腹部が「トイレに行く時間ですよ」と言えば、必ず行かなくてはなりませんね!」

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地域の指導者あるいは計画者
「新しい場所での一日を想像してください」
生徒たちに、広場や公園や庭園や建物など、デザインの該当地域について説明します。

「さて、この場所がすっかりデザインされて、建物も全部あなたの希望通りに出来上がったところを想像してください。新しい場所での一日を想像してみましょう。何が見えますか?何がきこえますか?どんな匂いがしますか?どんなものに触れますか?どうやって動き回りますか?」

問いかけをしながら生徒たちに次ページのPEPの図を見せ、反応を導きます。

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(PEPの図)
(PEP)個人的な経験と知覚

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「人生の一日」エクササイズ・・・一日をデザインする
10:30 活動のタイムライン
生徒たちに手伝ってもらって「壁の街」の絵を外し、新しい紙の下、あるいは別の壁に貼ります。新しい紙に「活動のタイムライン」の図を書きます。

「新しい場所での一日を想像してみてください。季節はいつでもいいし、普通の日でもいいし、週末でもいいし、何か特別な日でも構いません。今度デザインすることになった場所で、何をしたいですか?朝の6時から始めましょう。」

生徒たちが何かの活動を発言したら、それを反復して、タイムラインに記入します。以下の図に見られるように、生徒たちのアイディアを彼らが指定した時刻と大体同じ位置に書き込むようにしてください。

心の中で、彼らが一日の活動をカバーしたかどうかをチェックします。(必要であれば答えを促します)
• 睡眠
• 入浴、トイレ
• 食事
• 生活必需品の買い物(食べ物、飲み水など)
•移動(動き回る)
• レクレーション
•仕事
• ゴミ捨て

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「「持続可能な活動」を簡単に言うと。。。」
11:00 AM 過去と未来の活動
紙がアイディアでだいたい一杯になったら、生徒たちに次の問いについて考えるように頼みます。

「タイムラインに書いた活動の中で、あなたのおじいさんやおばあさんが子供だったころにはできなかったことは何ですか?あなたの孫はその活動をしていると思いますか?あなたの孫の暮らしの質について考えて、その答えを説明してください。

あなたの孫の暮らしの質を考えることは、持続の可能性について考える一つの方法です。ある活動を持続可能なものにするのは何ですか?「持続可能」という言葉は、あなたにとってはどんな意味ですか?」


彼らの答えを受け入れ、もし正しい答えが出てこなかった場合には次のように説明します。

「簡単に言うと、自分の住んでいる環境や他の誰かの住んでいる環境を破壊しないで長い間続けることができるなら、その活動は持続可能だ、と言うことができます。では、タイムラインに書いたあなた方の活動では、どれがどれくらい持続可能でしょうか?

食べることとゴミを作り出すことについて考えてみましょう。。。どうやって一つの場所から食べ物を集めることができますか?どうやって食べ物が足りなくなるのを防ぐことができますか?

そうすると、持続可能な食べ物の供給というのは、いつでも食べ物があるようにしてくれるものを指しますね。もし生ゴミがたくさん溜まったらどうなりますか?」

この後、栄養の循環についての議論を続けることもできます。台所から出る生ゴミを堆肥にして、食用になるものを栽培するのに使う、ということなどです。

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「自分自身と友達を描いてください」
生徒たちは、タイムラインからそれぞれ自分の好きな活動のアイディアを選んで絵を描きます。一人一人に画用紙を渡します。生徒二人あたりにパステル一箱をあてがいます。生徒たちは体育館に散らばって自分のアイディアを描きます。このエクササイズの目的は、彼らが新しい環境の中でリストから選んだ活動をしている様子を想像し、自分の欲する環境を想像することです。

「その場所にいる自分を想像してください。デザインは全部済んで、あなたの理想の通りにできあがっています。そこで何をしているかを考えてみてください。まず、自分と友達を描いてください。それから周りの様子を描いてください。」

年長の生徒たちは文字で描写することを好む場合もあります。

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「それから周りの様子を描いてください」
「絵をもっとよく説明するために、周りの時間や雰囲気や音や匂いや味を説明する言葉を入れてください。絵の裏に名前を書いてください。」

すべての絵を展示する

全部の絵を床に並べ、生徒たちに順番に絵の周りを回って見るように言います。絵に番号をつけます。参加者すべてに評価表を渡します。一人一人で、声を出さずに、自分の活動の好みに応じて絵を評価してもらいます。

エクササイズを終了する
熱心に参加してくれたことを全員に感謝します。そして、彼らの絵は地域の人に見てもらい、公共の場所や都市計画者の事務所で展示されることを説明します。「壁の街」の絵を地域で展示する前に、生徒たちの許可を得ます。急いで描いたので、乱雑でごちゃごちゃしていることを嫌がる場合もあるからです。

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絵を展示する
展示する絵に添えるためのポスターを作り、生徒たちのプログラムを説明します。
*「保護者の夕べ」に生徒たちが主催するイベントを開き、飲み物や軽食も用意します。(訳注:「保護者の夕べ」というのは、授業参観と似た趣旨のものだが、もっと社交的な意味合いが強い)
*町役場や商店、ショッピングセンターなどの公共の場所
*地元の新聞
*ウェブサイト

生徒たちが歩行者および自転車のための独自の通行方法を強調しています。

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とてもいいです。ここで実現している様子を想像できます。
いいと思います。でも実現している様子は想像できません。
いいと思います。でももっとデザインに工夫が必要だと思います。

評価表のサンプル
アイディアを評価することで生徒たちに民主主義を示すことができます。

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必要なもののチェックリスト
紙(約1メートルx18メートル)
はさみ、またはカッターナイフ
マスキングテープ2巻き
パステル(生徒2人あたり1箱)
画 用紙(薄茶色のものを生徒一人あたり一枚。予備も用意する。)
評価表(一人一枚。予備も用意する)
カメラ
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# by ammolitering7 | 2013-01-22 12:21 | 「ユースマニュアル」

ユースマニュアル

スタンレー・キングさんはイギリス出身でカナダで活躍している建築家です。厳密にはもう引退していらっしゃるのですが、生涯に渡って情熱を注いでいる市民参加型のワークショップ手法に今でも熱心に取り組んでおられ、とても引退した人とは思えないお忙しさです。

キングさんは最初は普通に高層ビルをデザインしたりしてたのですが、彼の関心はだんだん公共の意見を取り入れた開発計画に重点が移っていきました。教育者でもあるので、子供を対象としたワークショップの開発にも力を注いでいます。都市計画に関する知識のない人や子供も含めた共同体の中の一つ一つの魂すべてを尊重し、共有できる理想を描いていこうとする姿勢はすばらしいものだと思います。

以下、スタンレー・キングさんの最近の小論「ユースマニュアル」(イラストを除く)をご紹介します。続けて、今翻訳している書籍も掲載します。著作権はキングさんにありますが、広く知らしめたいというご希望により、日本語で紹介する許可を頂いております。私は建築や都市計画については門外漢なので、用語の間違いなど多々あることをあらかじめご了承ください。建築や教育関係その他でこの内容に興味を持ちそうな人をご存知でしたら、ぜひ一読を勧めていただきたく思います。

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ユース・マニュアル --- 若者のデザイン参加のための手引き
建築の社会的な在り方について(市民参加型の建築デザイン):
持続可能なコミュニティーのデザインにあたって若者たちの参加を図るために。

この小論は教師および年少の生徒たちを指導する年長の生徒たち(ユース・リーダー)のために作成されました。

著者:スタンレー・キング、スーザン・エン・チャン
草稿、2010年4月

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目的および目次

目的
このユース・マニュアルでは、若者たちが地域共同体の将来的な持続性を計画し、自分たちの周りの環境をデザインすることに貢献するための方法を学ぶことを可能にするためのプログラムをご紹介しています。本稿は、プログラムを実行するにあたっての補助として、教師および年長の生徒たちに活用していただくことを目的としています。

このプログラムは、公園や子供の遊び場、レクレーションのための場所、道路、公共の空間や建物など、様々な環境に適用できます。当マニュアルは相互に関係のある3つの章から成りますが、単独で利用することもできます。


目次

序章(3ページ)

第1章 「壁の街」(6ページ)
生徒たちは発展する街の様子をすばやく描き、それを作るのは「誰か」ではなく「自分たち」であることを理解します。自分の一日の生活のパターンと感覚に基づいて、彼らは自分たちの環境をデザインします。

生徒たちに次のような問いかけをします。「あなたの新しい環境の中では、何が見えますか?聞こえますか?肌に触れますか?匂いますか?午前6時、10時、正午、真夜中には、何をしていますか?」

それから、次のように促します。「まず自分の姿を描いてください。それから、お友達を描いて、それから周りの様子を描いてください。」

第2章 世代を越えて年長者(専門家)から学ぶ(原語はMentor) (29ページ)

(訳注:Mentorとは、何かの事柄について自分より先に進んでいる人であり、中でも特に師として仰ぐような人を指す。先輩、年長者、その道の専門家。)
地域の年長者(専門家)たちが生徒たちに持続可能な暮らしとデザインについて教えます。年齢層を超えたエクササイズでは、年長の生徒たちが年少の生徒たちに指導します。年長の生徒たちが「壁の街」エクササイズを指導し、その中で年少の子供たちが自分たちの持続可能な空間をデザインします。

ケース・スタディー:バンクーバー市のプリンス・オブ・ウェールズ・セカンダリー・スクール(訳注:日本の小学校の中ー高学年から中学生にあたる年齢層のための学校)

第3章 アイディア・フェア (54ページ)
保護者および市民の指導的な立場にある人々を対象とした、生徒たちによるデザインの発表会を開催するにあたって、年長の生徒たちが年少の子供たちを指導します。

ケース・スタディー:バンクーバー市のプリンス・オブ・ウェールズ・セカンダリー・スクール

著者について(61ページ)


3ページ
序章

若者たちが参加することの有効性
地域環境の将来を計画するときには、ほんの少しの時間を割いて若者たちの参加を促すことにより、良好な結果が得られます。自分の家という狭い世界から一歩を踏み出して、新しく地域環境を認識したばかりの若者たちは、対話に新鮮な視点をもたらしてくれます。彼らの活動的な生活はデザインにおける活動の幅を広げます。

車、人物、環境などに対する彼らの認識は、デザインに隠された危険の可能性に光を当てることができます。子供にとって安全な場所は私たちみんなにとっても安全です。

「子供にとって住みやすい街」

ユニセフは、1989年の「子供の権利会議」に基づいて、「子供にとって住みよい街」の性質を12か条にまとめました。ユース・マニュアルはそのうちの7つに対応しています。

子供たちが自分たちの街に関する意思決定に影響を与える権利
子供たちが自分たちの欲する街作りに関する意思表示をする権利
子供たちが家庭的、地域共同体的、および社会的な生活に参加する権利
子供たちが自分たちだけで安全に道を歩く権利
子供たちが友人に会って遊ぶ権利
子供たちが植物と動物のために緑の空間を持つ権利
子供たちが公害によって汚染されない環境に住む権利

http://www.childfriendlycities.org/

スタンレー・キングの「壁の街」エクササイズは、最初の三つの項目について子供たちが正式に参加することを可能にします。残る四つの項目は、200件以上の「壁の街」ワークショップで描かれた子供たちの絵に共通して見られるイメージです。

最初のワークショップは、1971年にノバスコシア州のポート・ホースクベリー市において、コミュニティー・スクールのデザインのために開かれました。(訳注:コミュニティー・スクールとは、公共図書館や公民館その他の公的な機能を併設した公立学校を指す)その後、幾つもの大きな都市計画プロジェクトにも活用されました。その中には、バンクーバー市のロブソン広場、グランビル・アイランド、フォールス・クリーク、ヘイスティングス公園(PNE)、ビクトリア市のジェームズ湾、カルガリー市のオリンピック・プラザとメモリアル・ドライブなどが含まれます。

アルバータ州およびブリティッシュ・コロンビア州各地で、多くの身近な公園や州立公園、国立公園、市内の居住区、小さな町などのデザインに若者たちが貢献しました。若者たちが計画に参加するときは、デザインは常にある特徴を示します。それは人間的な大きさであり、そして新しい場所で楽しむことのできる様々な活動の幅広さです。

若者が計画に参加することによって、彼らがおちついた振る舞いをすることや地域共同体の絆が強まることも期待できます。若者たちは自分たちがデザインの手助けをした環境を大事にします。公共器物の破損行為は皆無に近くなります。

「子供たちが自分たちの環境作りに参加したときは故意な破損はないということに、私は本当に心から同意します。」
(カルガリー市のジョン・ダイフェンベーカー高校の校長、モイラ・ヘガーティ氏からの手紙。)


4ページ
教育者からの反応
「私たちは毎回プログラムの締めくくりにバンクーバーへの見学旅行を行います。コリシアム、トロント・ドミニオン・タワー、ガスタウン、エンパイア・スタジアム、BC州大学、オークリッジその他いろいろな場所で、子供たちは「PEPリスト(個人的な経験と知覚)」をチェックします。一言で言って、このプログラムは私の授業で最もやりがいのあるものです。子供たちは心から喜んで行います。」
BC州ポート・アルバーニ市のアラン・ウィルモット氏からの手紙。(1973年2月8日)

「結果は驚愕すべきものでした。子供たちは、水を得た魚のようにこのプロジェクトに反応しました。彼らにほんの一言でも書いたり発言させたりするのは至難の業だったというのに、このプロジェクトの場合は子供たちが我先にアイディアやコメントなどを出してきました。
全く、信じられないほどでした。同じ子供たちとは思えないほどだったのです。他の3人の教師たちもこのプロジェクトを行ってみました。3年生から5年生の担当教師、4年生の担当教師、7年生の担当教師です。彼らも皆、それぞれの生徒たちから素晴らしい反応を得ました。」
バンクーバー市のローラ・セコード小学校のジョン・ヒバーソン氏からの手紙。(1973年3月19日)

コミュニケーション
「壁の街」エクササイズは、人間の集落の進化における歴史的な変化に関して子供たちに基本的な理解を与えます。日常的な一日の行動を観察することは、農家の暮らし、商店の経営者の暮らし、炭鉱の町の採掘労働者の暮らしなど、子供たちが様々な社会を学ぶ上で人間的な要素を思い描く助けとなります。

子供たちが自分たちの日常と祖父母が子供だった頃の日常とを比較することは、過去の暮らしを思い描いて歴史の中の人間的な要素を知る手助けとなります。

このプログラムはコミュニケーションの能力を高めます。絵を描くことと言葉を書くことを組み合わせることによって、子供たちは自分のアイディアを容易に、かつ自信を持って描写できるようになります。これは、カナダに来たばかりで英語に困難のある生徒にとっては特に有効です。

グループで課題に取り組むことを学ぶのも、(このプログラムを使うことで)もっと簡単になります。」バンクーバー教育委員会報告の中の教師評価より。「生徒たちが地域向上のためのデザインをする」(スタンレー・キング、1978)


エコロジー教育:「私の住むところ、私のすること」
スーザン・チャンは、「壁の街」エクササイズと「持続可能なデザイン・アイディア・フェア」を用いて、「教科書の中のエコロジー」を実際の暮らしと関連付けました。デザイン・エクササイズは、生徒たちに自分の周囲の様子と日常の暮らしをはっきりと認識させます。これは持続可能な暮らしをデザインするにあたって最初のステップとなります。

「生物のエコロジー的なニッチは、それがどこに住んでいるかということだけでなく、それが何をするかということにも左右される。(訳注:ニッチの定義「ある生物が生態系の中で占める位置。生態的地位。ニッチェ。 」大辞泉 より)分析すれば、生物学的には生息地とは生物の「住所」であり、ニッチとはその「職業」であると言えるだろう。」

「 エコロジーの基盤」(オダム著。WBソーンダーズ社、フィラデルフィア1959)(訳注:オダムはアメリカの生態学者)


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デザイナーからの反応
「プリンス・オブ・ウェールズ・セカンダリー・スクールでの科学祭に招待していただいてありがとうございました。素晴らしいイベントを拝見して大いに力づけられました。生徒たちは、持続性とは一体なんであるのか、そして地球を救うために何をなさねばならないのか、本当によく理解していました。貴殿が彼らに活力を与え、指導なさったからです。貴殿が教えておられる世代には希望があります。台風のときの水の管理、エネルギーを節約するための機器、マーケット・ガーデニングを理解することで、貴殿の教えと情熱は生徒たちに伝わっています。(訳注:マーケット・ガーデニングとは生産者が直接消費者やレストランなどに販売する小規模近郊農業を指し、栽培する種類の多さが特徴。)

貴殿が研究対象として選ばれたCKチョイ・ビルは、貴殿の生徒たちが生まれる前の1995年に完成されたものですが、間違いなく(持続可能な建物として)最高峰のものです。今朝、親しい友人から電話がありました。8年生の生徒の祖母から聞いた話だそうですが、その生徒は私が科学祭で「あなたがたの世代にはより良い人生への希望がある。地球を守ることを学んだからだ」と発言したことを祖母に伝えたのだそうです。想像してみてください。本当に素晴らしいイベントで、心から楽しませていただきました。」

プリンス・オブ・ウェールズ・セカンダリー・スクールで行われた「持続可能なデザイン・アイディア・フェア」の感想の手紙。コーネリア・ハーン・オバーランダーOC(訳注:カナダ勲章受賞者の肩書き)。(2009年4月3日)

「カナダ王立建築協会会員スタンレー・キング氏とスーザン・エン・チャン氏は、メトロバンクーバーカナダ王立建築協会支部で「建築の社会的な在り方」を講演し、好評を博しました。この支部の会員並びに議長であるスチュワート・ハワード は、両氏の努力を全面的に支援します。メトロ・バンクーバー支部は、特に中高生との教育的な関係において、このプロジェクトを全面的に支持します。キング氏とチャン氏は、建築および社会におけるその役割を推進する上で独自の貢献をしています。」

カナダ王立建築協会(RAIC)メトロ・バンクーバー支部からの手紙。(2009年9月3日)(スチュワート・ハワード、FRAIC(Fellow of the Royal Architectural Institute of Canada、カナダ王立建築協会賛助会員 )、MAIBC(BC州建築協会会員)(訳注:カナダはイギリス連邦の一部であり、儀礼的な国家元首はイギリス国王。)
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# by ammolitering7 | 2013-01-22 10:16 | 「ユースマニュアル」