ウェストバンクーバー図書館内のスペース

今回はウェストバンクーバーというバンクーバーの隣町で行われた図書館のデザインのためのワークショップをご紹介します。写真などはサイトをご覧ください。

このウェストバンクーバーという町はとにかくリッチなところで、カナダでも1、2を争うほど不動産の値段の高い住宅地だと聞いたことがあります。商店街には私の人生に必要も縁もなさそうな値段の高いお洒落な商品を売るお店が並び、たま~に行くと異世界を見る思いがします。そこにある図書館というのは、ずっと前に一度だけ行ったことがありますが、中に高級紅茶店の出店があったのだけ覚えています。

2012年の夏、図書館の若者向けスペースの改装のためのワークショップが行われ、翌年3月に改装されたスペースがオープンしました。出席者は市内の若者たちです。内容はいつものように、完成したスペースで自分は何をしていると思うか、というところから始めて、環境を詳しく想像してテーマ別に絵にしていく、というものでした。所要時間は4時間で、現地を実際に歩いて見てみることや、エコロジーに関する話し合いなども含まれました。

ワークショップで得られた結果は図書館が市民を対象に作成したアンケートの内容に反映されました。なお、この図書館では若者が図書館の活動に積極的に参加するような取り組みを行っていて、ワークショップはその一環として開かれたものです。

ワークショップで作られた絵はデザイナーが実際のスペースをデザインするときに資料として活用され、勉強するための明りがたくさんある、雑談などしてたむろする場所があるなど、いくつもの要素が実現しています。たむろするという言い方も変ですが、若者は特に用もなく群れてぶらぶらするのが好きなようで、カナダの町ではショッピングモールなどがその場所になっていることが多いようです。特にそういう場所がない郊外では暇を持て余した若者が公共の場の器物破損などの問題を起こしたりすることも多いです。でも、ウェストバンクーバーのリッチな若者たちはそもそも健全だし、豊かな自然の中の整った遊歩道で若者ばかりで楽しく散歩していたりもするし、優雅なものです。

そういうわけで、若者向けスペースは「公共の居間」として作られました。明りは調節でき、本は壁の本棚に並べられます。改装オープンのときには、市長さん、議員さんたち、図書館役員、ワークショップに参加した若者たち、そしてコ・デザインのスタッフも参加しました。

こちらはつい先週行われたお年寄り向けのスペースをデザインするためのワークショップです。写真はありますが、解説は特にありません。
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# by ammolitering7 | 2015-08-13 01:55 | ワークショップ

先日のワークショップ

幾つか前の記事になりますが、郊外の町で予定されている大規模な開発のためのワークショップをご紹介しました。その補足をちょっとしておこうと思います。
この開発計画の公式サイトはこちらです。

この土地はIOCO、Imperial Oil Companyという石油会社が精製工場を持っていた土地で、会社で働く人たちだけが住むカンパニータウンが形成されていました。村の名前はそのまんまIOCOといいます。

村の歴史を説明した英文がありますが、全部翻訳するのは気分的に無謀だと判断しまして簡単に言うと、まず、1914年に精製工場が稼動しました。場所は一番近い町からちょっと離れたところで、交通の便は全くなかったので、会社は労働者が職場の近くに住めるように町を作りました。1921年のことです。それからカナダの国力が増すのにつれて町も栄えましたが、戦後は状況が一変しました。これはグランビルアイランドのあたりも同じことですが、軍需がなくなって急速に経営が悪化し、工場が次々に潰れてしまったのです。IOCOも寂れる一方で、すっかりゴーストタウンになってしまいました。町は1992年には隣接するポートムーディー市に編入されましたが、土地の所有者はインペリアルオイル社のままでした。

なお、このインペリアルオイル社というのはカナダで2番目に大きな石油会社で、今も元気に内陸のほうで石油を掘っているようです。全然儲からないゴーストタウンなど持っててもしょうがないということだと思いますが、ともあれ、とうとうこの土地が売り出され、2年ほどかけてようやく今年の初めにBrilliant Circle Group (BBG)が買い取ることが決まりました。この会社の社長さんは香港の人ですがカナダ市民でもあり、彼がJames Cheng(ジェームズ・チェン)さんという中国系カナダ人の建築家を雇いました。

この土地は「最後のフロンティア」とさえ呼ばれるところで、私の聞いた限りでは原住民の部族との利権の摩擦もなさそうだし、たぶんカナダで最後に一から(比較的)自由な開発ができる機会です。(環境保護のことなど、それなりにたくさんの制約はあります。)そのため、この土地を買った会社はここに住宅地やその他の設備のある小さな町を作ろうとしています。「小さな」というところが大切みたいで、近くにあるバンクーバーのような大きな都市ではなく小さな町に住みたいという人たちを購買者に想定しています。もともと隔絶した町として作られていて交通の便はすごく悪いので、道を作ったりあるいは橋を架けたり、そんなところから始めなくてはならないことになります。

ポートムーディーでは以前の幾つかの開発で住民の意見が反映されなかったり、そもそも開発のことをろくに知らせなかったりして反対運動が起きたので、その失敗を繰り返さないように今回は開発の一番最初にスタンレー・キングさんが招かれたというわけです。スタンレーさんは業者と住民が激しく対立してどうしようもなくなったときにSOSで呼ばれるような方ですが、やっぱりそういうのはものすごくストレスが大きいそうです。今回のように白紙の状態のときから住民を尊重して、一緒に作る姿勢を貫くと結局は誰にとっても良い結果になるのではないでしょうか。私もほんのちょっとだけですが反対運動の片鱗を見たことがあって、ちょっと怖かったのです。

この大掛かりな開発を手がけるBBGという会社は実はこれまで一度も開発をしたことがないそうです。この会社が香港ベースであることもどう影響するのだろうと思います。どちらにしても、今時こうやって森の中に一から町を作るに近い作業を間近にすることができるのはすごいことだなと思います。ほんとうに、滅多に見られるものではないと思うのです。私がこれまで垣間見てきたものはどれも既存の町のほんの一部をちょこっと変えるというもので、スタンレーさんの代表作であるグランビルアイランドやフォールスクリークでさえバンクーバーという町の一部です。(スタンレーさんは市民参加の面で参加したもので、実際の建築デザインをしたのは別の建築家です。)今回のようなのはスタンレーさんでさえ滅多に見ないものだと思います。私の知る限りでは、彼が町を一から作るための計画に関わったのはアルバータ州で町を丸ごと移転したときのケースだけです。これは既に住民層が確立していたので、またちょっと違うかもしれませんけれど。

なお、スタンレーさんは建築家である一方で教育者でもあります。若いときは高層ビルなど建てていましたが、だんだん市民参加の手法のほうに熱心になっていて、あとからはそればっかりするようになりました。町が壊されて新しいものが入ってくることで人々が深く悲しむことを知り、それが自分の行く先々で起こるので自分が破壊と嘆きの使者であるような気持ちになっていったのだそうです。今は一応引退していて、お弟子さんの指導にあたることが多いです。お弟子さんたちはスタンレーさんを深く敬愛していて、お元気なうちにできるだけ多くを学んでおきたい、自分もやがては彼のようになりたい、と言って熱心に学んでおられます。また、スタンレーさんの手法はサステイナビリティー教育にも応用されて各地の学校で使用されているので、それを体験した若者たちの中からもワークショップアーティストが生まれてきています。

私は個人的に、この手法は人生のいろんな場面で応用できるものだと思っています。何人かの人が一緒に何かをするときの心構えとして、穏やかな状況の中で個々の理想像を具体的に描いてみることは、起こらなくて済む誤解を避けるためにも大切な役割を果たすと思います。個人的にも、何か夢があればそれを一人二役で自分に問いかけて絵にしてみることで得るものは多いと思うのです。

Co-Designが関わるのは最初の段階だけですが、この興味深い開発については継続して注目しておきたいと思います。ワークショップでできた絵と、その後の市民の反応などは、こちらのページで随時更新される予定です。殴り書きみたいなイラストは、次の段階では内容はそのままにもう少し整った形に描き直されます。ああ、それから、会場の様子の写真がありますね。誰か前に立って挨拶をしています。ほんとはスタンレーさんが挨拶をする予定でしたが、始まるのを待っているうちに蜂に刺されてしまって、薬を飲んだらぼーっとしてしまったので、急遽代わりの人が挨拶しました。スタンレーさん、お気の毒に。。。蜂が服にとまっても払いのけるものではありません、ほんと。

The Imperial Oil Company built an oil refinery in 1914 on the north shore of Burrard Inlet, across the way from Port Moody, BC. It was isolated from Port Moody by road, but “Shift Ferries” brought workers to and from work by boat. The Company began construction of theIoco Townsite – an abbreviation of Imperial Oil Company – in 1921, adjacent to the refinery.

Before the Townsite was built, some refinery workers lived in tents or shacks. By the late 1920s, Ioco had developed into a thriving community consisting of 89 structures including 83 homes, 2 churches, a community hall, a lawn bowling green, a baseball diamond, a tennis courts, and a horseshoe pitch. The people of Ioco were active in their community, participating in parades and May Day celebrations, holding regular community picnics and dances, and participating in sports or community service clubs.

Things began to change after WWII. The Company no longer wanted to be a
landlord, and people began to move away. Houses were also moved. By 1975, the Companyclosed the store, though the Community Hall was used up to
the early 1990s. Ioco was incorporated into the city of Port Moody in 1992. The remains of the townsite still offer a unique look at Ioco as it was originally laid out. In 2002, the City of Port Moody declared thetownsite a Heritage Conservation Area. A festival – ‘Ioco Ghost Town Day’ – has been held annually on the first Sunday of October in commemoration.

以下のサイトには土地の売買などに関する記事があります。
http://www.thenownews.com/news/ioco-townsite-sold-to-novice-developer-1.1733021
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# by ammolitering7 | 2015-08-05 15:18

学生ワークショップ2(リバービューの続きです)

学生たちがわらわらと出てきてアイディアを紙に貼ります。
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どことなくブツブツした感じで気持ち悪いですね。これは、、、そう、壁にたくさんの蛾が張り付いている様子を思わせます。しかしこの際、私の個人的な趣味はあまり重要ではありません。もしかしたら全然まったくどうでもいいのかもしれません。係の人は一向に気にしない様子でアイディアの内容を分類し、学生たちにテーマごとに分かれるように指示しました。なお、このプロセスは本物のワークショップでは書記がリアルタイムでアイディアを分析して分類していきますが、今回はあらかじめ7つのテーマを決めていたので、こうやって紙にアイディアを書いていくプロセスは実際にはかなり無意味でした。

テーマが7つだったのはアーティストが7人しかいなかったからです。それぞれのテーマごとに9~11人くらいのグループができました。私が書記をつとめたグループは9人です。これはほんとは4人くらいに絞ったほうがいいのですが、アーティストが足りないので仕方ありません。ほんとは私もこのワークショップのアーティストとして働けるようになりたいなあと思っているのです。しかしそう思うだけでじっとして何もしないでいたら絵は上達しません。下手くそでもいいから何か描き始めることにしましょう。

私のグループのテーマは「居住」でした。予定地は広大な場所なので、何らかの居住施設が建てられることになると考えられています。患者とその家族のための施設になるのかどうかは分かりませんが、今回はこの病院との接点を持たないいわゆる部外者ばかりのワークショップだったため、たくさん出てきたアイディアの中には病院と関係するようなものは何一つありませんでした。また、都市計画を学ぶ学生ばかりということで皆さんとても積極的に参加してはいましたが、対象であるリバービュー精神病院への個人的な感情が欠けていたからか、全体的な雰囲気は冷静そのものでした。「居住」というテーマで出てきたアイディアはこれといって特徴のあるものは何もなかったのですが、収入や年齢や人種など様々に異なる人たちが共存する、地産地消型の経済と雇用、車にあまり依存しない暮らし方、などが共通する要素であるように見えました。
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イラストが出来上がったら展示してアイディアを評価します。
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「よい、まあまあ、わるい」ならぬ「実現しよう!、もっと工夫しよう、他のところに向いている」という評価表。あくまでそれぞれの意見を尊重するという姿勢に頭が下がります。私だったら「却下!退場!」の一言で済ませて事態を紛糾させそうです。

なお、カナダ人たちがそれぞれの欄に非常に分かりにくく傍線やチェックなどで投票しているのを集計して数字にするのも書記の仕事です。時間の配分を見たり、アーティストの手が回らない人たちの意見を聞いておいたりすることもします。
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私たちのグループの絵。絵はいつも中心となる人物、つまり「そこにいる自分自身」から始まります。そこに自分がいる、何をしているか、周りに何があるか、誰がいるか、その人たちは何をしているか、どこらへんにいるか、、、など、夢の話を絵にするようにして描いていきます。この技術はすごいものだと思うのです。「誰かに自分の話を聞いてもらった」という実感をこれほど強く抱けるものも他にあまりないのではないでしょうか。
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他の絵もいくつかご紹介します。
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ワークショップのあとで学生さんから感想を聞いてみました。とても良いワークショップだった、これまでに見た他の公聴会とは全く違う、市民を対象とした本物のワークショップにもぜひ参加したい、という声が聞けたのでよかったです。

翌日、ある年配の地元の人にワークショップに出た話をしました。これです、と言って資料を見せたら、彼は「リバービュー!?」と言って顔をしかめました。この病院はバンクーバー地域にありますが、中心地からはかなり郊外に離れた隣町の隣町です。お会いしたおじいさんはバンクーバーの中心地にお住まいなので、リバービューに家族がいたことがあるなどの個人的な関わりはないのかもしれません。精神病院というと今では差別用語のような扱いであるようですが、その背景には一般市民の間のこうした抵抗感があるのだろうと想像します。

リバービューの地元では、古くからの大きな施設なので、家族に患者がいようがいまいが、少なくとも中年以上の人にとってはこれは慣れ親しんだ大切な施設です。患者や家族や職員を中心として、学校や郵便局や駅もあって共同体として機能していたし、美しい自然に溢れた敷地は地元民の公園としても親しまれていました。それでもやっぱりちょっと離れると遠くて不気味な存在なのかもしれません。隔離収容をやめようという動きも、こんな背景から出てきたのかもしれないな、と思いました。難しいものです。
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# by ammolitering7 | 2015-08-03 02:02 | ワークショップ

学生ワークショップ (リバービューの続きです)

昨日、ダウンタウンの真ん中にある、、、
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こちらのビルに行ってきました。一番上に回転式の展望台がありますが、そこに行ったわけではありません。
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こちらの入り口から入って、、、
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この部屋に忍び込んだのです。
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窓からは駅の立派な建物や、、、
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往来の激しそうな港が見えます。
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部屋の後ろのほうには軽食が並んでいます。この様子はもしやまた、、、と思われた方もいらっしゃることでしょう。そう、今回再び例の都市計画ワークショップが開かれたので、私もやっぱりのこのこと参加したのでした。
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サンドイッチの種類は12種類もあります。決して食べ物に釣られたわけではありませんが、、、
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釣られなかったわけでもない、という事実があります。
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今回のワークショップは市内の大学のダウンタウンキャンパスで行われました。やっぱり大学はリッチだと見えて、軽食も立派です。野菜と果物のところには、グルテン無し、乳製品無し、ビーガン対応、と書かれています。
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普通のクッキーと並んでグルテン抜きのクッキーも用意されています。
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コーヒーはオーガニックでフェアトレード。
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ナプキンは大学のロゴ入り。きっと学費が高いのだろうなと思います。
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会場には前と同じく資料が展示されています。
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前のときと違って、受付のところには配るための資料も用意されていました。
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プロジェクターが用意されていたり、、、
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椅子の上に一つ一つこうやってペンとメモ用紙が用意されているところも前とはちょっと違います。実は今回のワークショップは一般市民を対象としたものではなく、市内の3つの大学(UBC,SFU,Langara)で主に都市計画を学ぶ学生たちを対象とした授業の一環として行われました。これからの都市計画を担う彼らに実際の都市計画で使われている手法を体験してもらうことが目的です。そのため、ワークショップの初めに一般市民にはしないようなちょっと難しい説明が30分くらいなされました。ワークショップの流れを説明するときには、いろいろなアイディアを出すように、と促す一方で、「予算というのもあるから、それも忘れないでね」と釘が刺されました。これは一般市民を対象としたワークショップではわざと絶対に言わない事柄です。また、ワークショップのテーマは前回と同じリバービュー精神病院跡地ですが、この病院に慣れ親しんだ地域住民と違って若い彼らには馴染みの薄い場所なので、そもそもこれがどんな施設なのか、どういう経緯で今に至ったのかなどの説明もなされました。

また、今回のワークショップは時間の制約がありました。普通だったら4時間くらいかける全体の流れを半分くらいにはしょったので、予定地が無事に理想通りに完成したと想定したときの一日の行動、という最初の部分もあまり時間をかけられません。本来は参加者に手を挙げてもらって、ちょっとした話も聞きながら大きな用紙を埋めていきますが、今回は学生に各自でアイディアをメモ用紙に書いてもらって前に出てきて貼り付けるという形式を取りました。
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なんと、定刻ぴったりに始まりました!カナダ人でもやろうと思えばできるのですね。彼らとて、いつもいつも30分遅れててれてれと生きているわけではないものと見えます。ただ、参加者のほうはやっぱりのんびりした人も多く、登録していた80人程度のうち10~15人くらいは遅れてやってきました。それでも、必修ではなかったらしい今回のような授業では、登録しておいてもやってこない場合が多いそうです。受付の人は、「土曜日だし、天気もいいしねえ。50人くればいいほうじゃないかなあ」とおっしゃっていたほどです。今回の場合はなんだかんだで結局席が足りなくなるほど集まったので、盛況だったといえると思います。

学生たちは大学で建築学その他を学んだあとで都市計画に進むので、年齢層は高めです。見たところ30歳前後の人たちが多く、男女比は7対3くらいに見えました。時間の制約のため別に軽食の時間を取ることはしなかったので、学生たちは適当に何か食べながら参加していました。でも、実際には休憩時間に軽食を取りながら参加者やスタッフが雑談をする時間というのも大切です。控えめな人たちなどは、そんなときのほうがくつろいで意見を言ったりするものです。私は書記として参加していますが、そういうふうな、ぽろっともれたような声でも聞き取っていくのが仕事です。学生たちには、これが時間を短縮したワークショップであることを伝え、本来のスケジュールで行うときとの違いなども説明しました。また、参加のときの心構えも伝え、市民を対象とした本物のワークショップへの参加も促しました。
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偉い人のお話の時間があります。最初は大学の関係者、次は開発に携わる公的な機関(BC Housing)の人の話です。この計画はおよそ一年前に始まったけれど、影響力の大きな大規模な開発なので一年かけて人々の声を聞いている、という背景が説明されます。実現のための段階に入るのは来年内を目処としているそうです。いろんな話をなさいますが、難しいことが多いのでよく分かりません。はっきりと分かったのは、「皆さん、トイレは部屋を出てあっちのほうです、軽食は適当に食べてください」というくだりです。主催者であるとは言え、偉い人が難しい説明をする中にこういう実際にはとても大切な説明が入るというのはカナダらしいなと思います。

これは原住民との兼ね合いを説明しているところ。ここは少なくとも1万年前からクウィケットレム族が暮らしている場所で居住地も隣接しているので、彼らの存在を絶対にないがしろにしてはいけないことが強調されます。なお、原住民の中にはこの土地の所有権そのものを主張して派手な開発を進めたいという意見もあるので、原住民とは一般市民とは別に特別なワークショップが開かれ、交渉が続いています。

この後もいろいろ説明していたので分かった範囲で書くと、古い歴史的な建物をできるだけ残したいけれど老朽化が進んでいて大変な費用がかかるので、実際にはごく一部の建物の外装を残すしかないこと、自然の維持と保護が大切であること、開発後に生じる利益が100%地元に還元されること、精神病院としての機能が維持されること、などです。また、一般市民や関係団体などから広く丁寧に意見を聞き取ることに十分な時間をかけることの重要性も強調されました。ここをはしょるとのちのち大変なことになる、ということを、都市計画の未来を担う若者たちに教え込んでいるのは素晴らしいことだと思います。

また、リバービュー精神病院の経緯としては、抗精神薬の発達に加えて、患者を隔離しないで地域内で家庭的に面倒をみたほうがいい、という理想主義的な思想が広まったことで、患者をグループホームなどに移したり家庭に戻したりするようになって患者数が減っていき、やがて現在のようなほぼ完全な閉館状態になったことも説明されました。1950年代には4,600人くらいいた患者が現在は重症患者64名になっています。

これはとても良いことだと思われていたのですが、実際には混乱が広がっただけで、軽度であっても精神的な病気を抱えた患者を家庭で面倒を見ることができなかったり、グループホームが足りなかったり、グループホームで働く人の負担がものすごく大きかったりいろいろで、結局バンクーバーは大量の路上生活者を抱えることになってしまいました。このことの反省から、やはり何らかの長期的な収容施設が必要であること、それが患者自身だけでなく、患者を抱える家族にとっても大切であることなども説明されました。

ワークショップに参加したのは精神病の子供を抱える老いた親たちが少なくなかったのです。社会生活のできない子供を残して先に自分が死んでしまうことの不安は切実なものです。入院できるほど重症ではなく、グループホームにも入れず、かといって家で自分が世話することもできず、ホームレスになっているのを手をこまねいて見ている場合もあるでしょう。個々のケースは本当に様々だと思いますが、共通しているのは自分にとっては幾つになっても大切な子供である患者たちが衣食住の心配をせずに死ぬまで安心して暮らせる施設が欲しいという願いであるようです。

これまでに3つのワークショップが開かれ、1,000人以上が何らかの形で参加したこと、ワークショップで出来た絵は6箇所で巡回して1,400人以上から反応があったこと、ソーシャルメディアなどを利用していること、幾つもの関係機関から意見を聞いていることなども説明されました。また、主要な開発業者であるBCHousingは公的な機関ではありますが行政府ではありません。今回の開発にあたっては、その重要性から、一番最初の段階から地元の自治体が積極的に参加していて、それはとても珍しくてありがたいことだ、という言葉もありました。開発計画ができたことが知られるようになってから参加した関係団体もあるそうです。
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# by ammolitering7 | 2015-08-03 02:01 | ワークショップ

描画ワークショップ 2

写真を撮りながら寄り道ばっかりしていましたが、ようやく集合場所に辿りつきました。本日の参加者は12名、皆適当に集まり、適当に描き始め、開会の挨拶なども何もありません。内訳は、大御所のスタンレーさんに加えて建築関係者1名、教育関係者3名、プログラマー1名、大学生5名、加えて無関係者代表である私というものです。私も前々からこの技法を学びたいと思ってはいたのですが、天秤にかければ怠け心の方が重くてなかなか実行しないでいたのです。今日も授業が行われるわけではないので何か先生について学べるわけではありませんが、他の人が皆スケッチをしていると私も自然にスケッチをする気持ちになって、それがとても良かったです。
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若者に指導するスタンレーさん。彼らは既にスタンレーさんから実際的な指導を受けているので、今日のワークショップはその延長線上にあります。
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黙々と描く参加者。
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私はこのあたりを見ながら描いてましたが、、、
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難しいものですねえ。
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描いていたら、通りがかりの人が話しかけてきました。絵を描きたい気持ちはずーっと昔からあるし、絵を描ける人はすごいなあと思うのだけれど、どうもきっかけがなくて描けないままになってしまった、どうやって描き始めたらいいのか、とおたずねになるのです。その方はトニーさんとおっしゃるポルトガル人のおじいさんで、私たちが単なるスケッチクラブかと思って、入りたそうな感じを見せておいででした。都市計画のための技法を学ぶワークショップだと説明したら、それじゃあ上手な人でないと駄目だ、とつぶやきます。それで私は「そんなことはない、描きたければ誰だって描ける、人物なんか丸と棒で十分」と言って技法の一番最初のところをお教えしたのでした。

絵はいつでも人物から始めます。そこから遠近法のための補助線を延ばし、それから細部を加えていきます。もちろん、公民館などで行われる絵のコースを取るのなどもいいことですが、一番大事なのは下手でもとにかく手を動かして描いてみることだなと思います。
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自分の影。
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ちょっとしか描いてませんが、満足して帰りました。途中で見かけたベンチ。こういう姿勢で目を閉じると、いろんな映像が浮かびやすくなります。
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人工的に作られたようには見えないけど人工的な島。
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シャボン玉を飛ばしているおじさんがいました。
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大きなシャボン玉が割れた瞬間。
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人だかりがしているなと思ったら、、、
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ピアノの周りで若者たちがライブの演奏をしていたのでした。
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橋の下のコンサートです。
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橋の上から見てみましょう。あれこれと問題はあるとは言え、バンクーバーはやっぱり素敵な街だなと思います。なお、このピアノは屋外にピアノを置いて市民に楽しんでもらおうというプロジェクトによるもので、市内の各地10箇所ほどに置かれています。ほんとはもっと30台ほど置く予定だったけど予算が集まらなかったのです。誰でも弾いてよいということで、あるピアニストは市民のリクエストに応えて一日中次から次へと弾いているそうです。ホームレスの人からクラシック音楽のリクエストを受けることも少なくなく、どんな経緯でその人がホームレスになったのかと考えこんだりもするそうです。
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# by ammolitering7 | 2015-08-03 02:00 | ワークショップ