描画ワークショップ

今日はコ・デザインの描画ワークショップが行われたので、誘われてもいないのにいそいそと行ってきました。本来の対象者はもちろん描画を担当するスタッフの人たちですが、屋外で行われるカジュアルな自由参加のワークショップだと小耳に挟んだのです。場所は遊歩道をたくさんの人が行き来する上に一風変わった新しい建物の多いオリンピックビレッジです。これはバンクーバーオリンピックが行われたときに選手村として建てられたところなのです。
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公園には線路が残されています。このあたりも昔は軍需で栄えた工場地帯で、港から物資を運ぶための鉄道も敷かれていました。戦後はすっかり廃れてしまい、工場からの汚染だけ残って長いこと荒地になっていました。70年代の終わりくらいからグランビルアイランドに近いほうは再開発されてすっかり素敵な住宅地になり、都市計画の世界では奇跡の成功例とさえ言われたほどですが、そこから遠いこっちのほうはすっかり取り残されていていたのです。万博が行われたときにもやっぱり取り残されました。私は個人的にはこういう何てこともない空き地が都会の近くに広がっているのもいいものだと思っていたのですが、人口過密で空いた土地がなくなる一方のバンクーバーではこんな貴重な土地を遊ばせておくわけにはいかなかったのでしょう。
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へんな筒もあります。
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入ってみましょう。
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うーむ、下の沼が見えますね。
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もちろん公園の沼ですが、雑草が伸び放題といいますか、自然豊かといいますか、近年の主流となっている自然派の造園方式で作られています。もともとその土地に自然に生えている植物だけを使い、手を加えなくても天候が荒れても、農薬や肥料を使わなくても、ひとりでに茂るように工夫されているのです。自然の空き地に近いような外見になりますが、寛ぐにはこんな感じの公園のほうがいいようです。
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これは一体なんでしょうか。高速そうめん流しができそうですね。
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複雑な遊具もあるし、、、
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広場もあります。
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この変な彫刻は、たぶんオリンピックを象徴しているのだと思います。いろんな色の人たちが集まって人間ピラミッドになっています。
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選手たちが滞在していたマンション群。オリンピックが開かれるたびに世界中でこんなマンション街が作られるのでしょうか。
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道の名前は「選手通り」だそうです。
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海辺の、、、ベンチなのでしょうか。
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赤いパラソルの下で冷たいビールでも飲んでいるらしい人々。
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巨大化したスズメと、赤い建物は昔は砂糖倉庫だったところを改造したビール醸造所。
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入り江に船がたくさん停まっています。ボートの停泊所は何箇所もあるのですが、その許容量よりもボートの数のほうが圧倒的に多いので、あぶれる船が出てきます。そういう船は2週間までは一箇所に停めておくことができますが、2週間経ったら移動させなくてはなりません。でも、ちょっとくらい移動したからと言っても入り江にあることは変わりません。バンクーバーは家賃が高いので船に住んでいる人もいます。そういう人たちは正式な停泊所が提供するサービスを利用することもできないし、ということはつまり、排泄物などの処理に困ることになります。もちろん、それなりに処理の方法はあるのだと思いますが、夜の闇にまぎれて海に捨ててしまえばそれが一番簡単です。入り江の大腸菌汚染が異様にひどいのは、夏になるとこういう人たちが一挙に増えてくるためだそうです。
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子供科学館。
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辛い目に遭っている人々。ドラゴンボートの漕ぎ手とも言いますが、絶え間なく怒鳴られているし、やっぱり奴隷労働にしか見えません。ああ、逃がしてあげたい、と思います。好き好んでやっているとはどうしても信じられないのです。彼らの前世は絶対にローマ帝国の軍艦を船底で漕がされていた敗戦国の奴隷だったに違いありません。
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# by ammolitering7 | 2015-08-03 01:59

久しぶりのワークショップ 2

会場にはケータリング会社が用意したけっこう豪華な軽食が用意されています。わたしもあとで少し食べましたが、イチゴが腐っていたのがショックでした。
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コーヒーもあります。ちょっとした飲食は参加者の気持ちを落ち着けるのに効果的です。こういうイベントだと感情的になる人も少なくありませんが、共に飲み食いしながら怒り狂うことは難しいのです。それに、イベントのご案内のチラシに「軽食が出ます」と書いておくと人間の本能とか潜在意識とかを刺激するので、釣られて出席してしまう人が増えるという効果もあります。
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描画ワークショップを担当するアーティストが練習をしています。アーティストは必ずしも建築家ではありませんが、建築家、その卵、設計関係者、教師、学生などいろいろです。コ・デザインの技術はこうした都市計画の場で開発されましたが、今では他の分野にも応用されていて、後継者の育成も盛んに行われています。
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初めて描画を担当する若い学生アーティストも練習しています。あとで聞いたら、やっぱりすごく緊張していたそうです。
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開始時間にはぼちぼちと人が集まり始め、、、
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それじゃあそろそろ、と言ってようやく始まり、、、
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それでもまだまだ遅刻してくる人が後をたちません。カナダ人はそもそも定刻に顔を出そうという気がないのだと思います。
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犬も当然のように入ってきます。二階に上がってきたのもいました。
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何度も書いたので詳細は省きますが、そんなこんなでワークショップの前半が終了し、あとはテーマ別に分かれて描画作業に入ります。私の仕事はここでアーティストのお手伝いをすることです。参加者の意見をメモしたり、詳しく聞きだしたり、そんなことです。今回は描画は2枚で、どちらも人数が少なかったので心行くまで話していただけました。しっかり話を聞いてもらえた、受け止めてもらえた、と思っていただけたようです。現実的な制約というのは避けられないものですが、しっかり話し合った上での妥協であれば物事は滑らかに進むものです。建築会社がこうした市民の声をしっかり検討してくれたらいいなと思います。
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黒いマジックで描いた絵にカラーペンで色を塗ります。
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できた絵をずらーっと並べて、、、
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参加者全員でアイディアを評価します。作品はこれからインターネットで公開されるほか、市役所やスーパーなども巡回して展示され、できるだけ多くの人に見てもらって評価してもらい、コメントを集めます。それから建築会社がそれを分析して、結果を参考にしながら同様のデザイン画を作り直し、それをさらに評価してもらってからやっと設計に入り、それも展示してみてもらってからようやく建設が始められるかもしれない、というような流れになっています。

こういう大変な手間と時間とお金のかかる作業を嫌がる建築家は多いです。好きなようにデザインして好きなように建てたい、というのが正直なところだろうと思うのですが、そうなると問題も生じやすくなります。この町でも、少し前にこうした大き目の計画2つが住民の反対に遭って紛糾してしまったので、今回の業者はその二の舞にならないように神経を尖らせているのだと思います。
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ワークショップの後はスタッフ20名ほどで食事をして帰りました。神経を使うのでぐったりと疲れはしますが、楽しい一日でした。実は私もこの描画技法を習おうかなあと思っているので、明日はちょっとその練習の様子を覗いてくる予定です。
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# by ammolitering7 | 2015-08-03 01:58 | ワークショップ

久しぶりのワークショップ

昨日はバンクーバーの郊外にあるポートムーディーという小さな町に行きました。アートが盛んでとてもかわいい感じの町なのですが、ダウンタウンからまっすぐこちらの公民館に行っただけなので、観光は全くしていません。
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公民館の向こうは入り江になっています。小さな浜辺もあってとても素敵なところです。
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線路もあります。
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裏庭には子供の遊び場が作られています。
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さて、本日は久しぶりにコ・デザインのワークショップが開かれました。私は例によって無関係者なのにお手伝いをします。
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入り口のところには受付があります。今回はこの近くで予定されている大規模な開発計画のための市民ワークショップで、3日前の木曜日にも同じ内容のものが行われました。ワークショップはできるだけ多くの人が出席できるように平日と週末の2回同じものが開かれることが多いです。木曜日のは252名が出席し、今日は町で他のイベントが二つ開かれていたこともあって150人程度に留まりました。
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私の仕事は必要な資材を運んだり小物を作ったりするのと、もう一つ、ワークショップで出席者の話を聞いたり促したり記録したりする助手の仕事です。
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ちゃんと偉そうに名札もつけます。
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どなたかスタッフのために差し入れをしてくださいました。ここ数日大変健康的な食生活をしている私はがっちりと朝ごはんを食べてから行ったので、せっかくの差し入れにもほとんど手を出しませんでした。
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会場には設計会社の人たちがパネルを展示しました。今回は250エーカー、あるいは100ヘクタール、または30万坪、もしくは100万平方メートル、ないし東京ドーム21個分、、、どれもあんまりよく分かりませんが、要するにけっこう広いのです。
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現地の位置。交通ルート、水路などを示したパネルもあります。
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周囲の自然。
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現存する建物など。
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斜面の傾斜。
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植生の特徴。開発って、いろいろなことを調べなければならないのですね。
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現地の歴史。ここはインペリアル・オイル・カンパニー(IOCO)という石油の会社が開発した町で、精製工場が活発に操業していたころは賑わっていましたが、工場が閉鎖されるととたんに寂れてしまいました。でも、土地はいまでもIOCOという名前で呼ばれていて、そこを最近香港の事業者が買い取ったのです。そして中国系カナダ人の建築家が雇われて開発計画が始まることになりましたが、それに先立って関係するいろんな人たちから話を聞こうということになりました。近隣のポートムーディー市民や現地に今も住んでいる人たちの声もその大きな一部なので、それでコ・デザインが引っ張り出されて、私もそれにのこのこついてきたというわけです。
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ポートムーディーの地図も用意されています。参加者はこの地図の上に、、、
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青いシールを貼って自分の住んでいるところを示します。
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会場にはいつものように現地での一日を想定するための用紙が用意されました。
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話し合いの決まりもあちこちに大きく張り出されます。発言するときは「私たちは」ではなく「私は」と言うこと、他の人の意見を否定しないこと、デザインの解決策を見つけ出そうとしないこと、という3つです。つまり、問題点をあげつらって事態を紛糾させるための集まりではない、ということを分かってもらおうとしているのです。
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# by ammolitering7 | 2015-08-03 01:46 | ワークショップ

リバービューワークショップ3

さて、本日もまたはるばるワークショップへ出かけてまいりました。最初はこんな陰鬱なお天気だったのですが。。。
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着くころには晴れてきました。しかし、ちゃんと住所を調べて行ったのに、ここではないようなのです。
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おかしいなあ、こっちかな?
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さらに次に行った建物も違うし、困ったなと思って尋ねたら、目指す会場はこの奥にあったのでした。本日のワークショップは、いくつもの大きな建物が点在するだだっ広い複合施設の一角で行われたのです。まさかそういうこととは思わなかったので、すっかり迷ってしまいました。
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会場発見!
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椅子やパネルなど、もうすっかり準備されていました。遅れてしまってすみません。
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前回のワークショップでできた絵も展示されています。
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見てみたら、評価表のところに「安全性についてはどうなんだ!!!(ホームレスの?)子供のためのシェルター(以下不明)」と書き込んでいる人がいました。どうしても感情的になる人はいるものです。
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軽食の準備もできています。
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ワークショップが始まるまで何となく手持ち無沙汰に待っていると、この前のときにイラストを描いたアーティストが「僕はこの熊が気に入らない」と言って自分の描いた絵に修正を加え始めました。この二日間は気になって寝られなかったものと見えます。耳と鼻にちょっと手を加えた様子がこちらですが、熊だと言えば十分に熊に見えますよ、Pさん。動物を描けと言われるのは苦手だ、という人は多いようです。建築家というのはたいていが人間用の建物をデザインするもので、熊の別荘が得意です、という人はあんまりいないと思うのです。
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10時に始まるはずなのに、早10時半。やっぱり迷っている人が多かったようで、最初はあんまり人の集まりがよくありませんでした。結局、10時半ぴったりにキングさんが開会の挨拶を始めました。
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最初は40人くらいで始まりました。スタッフとボランティアのほうが多いんじゃないか、と思うほどでした。前回と同じ顔ぶれも何人かありました。でも、ほんとはワークショップの参加は一人一回という決まりになっています。他の人たちにも発言の機会を与えるためです。そうは言っても、「あなた、この前も来たでしょう、帰ってください」と言われることはありません。
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参加者は手を挙げて、当てられるのを待ってから発言します。でも、やっぱり司会者一人では気づかないこともあるので、ボランティアが見張っていて「ここ、ここ、この人に当ててください、次はそっちにも」と指図をします。
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参加者の発言は記録係がすべて記録して、内容ごとに分類します。この後のグループ描画のテーマにするのです。
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描画のときは、やっぱりこの前と同じように興味関心に大きな幅がありました。一人のアーティスト(一つのテーマ)に大勢が群がるかと思えば、、、
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こんなふうに個人セッションになったりしました。私の担当はここで、お客さんが最初はゼロだったので他から4人引っ張ってきて、それが二人ずつに別れ、さらに一人が離脱してこうなりました。分かれていった二人というのは、意見が強くて独占的に振舞っていた女性と、なんとなくそれについていった気の弱そうなおじさんです。女性のほうは前回のワークショップにも来ていて、やっぱり独占的で他の人たちを黙らせていた人でした。残る二人が一人になったのは、それぞれの関心事に大きな違いがあったため、テーマを分ける必要があったからです。
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おじいさんの絵ができました!彼は昔からこのあたりに住んでいた人で、精神病院に家族や友人がお世話になったわけではありませんが、地域にとって欠かせない大きな要素としての精神病院に長らく親しんできた住人です。高齢でありながら、何年という長い時間のかかる都市計画に積極的に関わろうという姿勢はとても前向きで素晴らしいものだと思います。

政策が変わる前に精神病院が地域と密接して活発な活動をしていた頃を知っているので、彼は昔実際に行われていて良かったことをアイディアとして出していました。敷地のすぐ横を通っている鉄道が停車駅を持っていたり、そこから病院で作られた作物が出荷されたりしていたことなどです。でも、懐古趣味ばかりでもなく、新しい病院設備や医療活動なども提案していました。

ワークショップの参加者は精神病患者の家族や親戚などの関係者も多かったのですが、こうして単に近くに住んでいるだけの人もたくさんいました。これもまた、地域の受容性を示す大事な点だと思います。どこでも同じだと思いますが、火葬場やゴミの処理場、ネガティブな印象のある施設などは、近くに建てられるとなると住民が大反対する、というのがよくあるパターンです。精神病院も例外ではありません。でも、ここでは少なくともワークショップにわざわざ参加しようという人たちの反応を見る限り、昔からあったこの大きな施設を精神病院のままで維持したい、という意見が大勢を占めています。

バンクーバー地域では人口の集中が進んで住宅の不足が大きな問題になっています。主催者の一つである住宅省としてはこの広大な土地に大きな集合住宅をできるだけたくさん建てたいようなのです。この場所の開発計画が持ち上がったとき、一番最初に行われたのが住宅省による市民に対する提案会でした。このときに精神病院を全く無視した提案がなされたために住民たちが頭にきて、事がこじれてしまったのでCo-Designが助け舟として呼ばれた、というわけなのです。

前回のワークショップのあとでさえ、ある参加者は「やっぱり私はまだ疑ってる。あの人たちは私たちの意見を本当に聞こうとはしていない」という感想を述べていました。これは本当に残念なことだと思います。Co-Designの人たちは本当に心から住民の声を汲み取ろうとしているのですが、実際に開発を行う業者や行政がせっかくのワークショップの結果を全く無視することだってないわけではありません。そうなると住民の信頼は完全に失われるし、ダメージが大きいのです。たくさんの利害団体が関わると難しいことが多いものだなと思います。
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できあがった絵の中では、おじいさんは医療研究者になっています。かっこいいですね。自分の意見をアーティストにしっかりと受け止めてもらったおじいさんは、「これはとても良いセッションだ」と満足した感想を述べてくださいました。できあがった絵は、この後インターネット上で市民評価を受けるほか、市内各地のショッピングセンターなどの人の集まるところで展示して、さらに多くの人に見てもらって評価を集めます。

この時点ではアイディアは予算も技術的な制約も何も考えていないものなので、実際に実現できるものばかりとは限りません。それでも、市民評価を経ることで開発のためのガイドラインができるし、将来的な開発のためのガイドラインとしても利用されることになります。
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今回もまたたくさんの絵ができました。私もこの絵を描けるようになりたいな、と思います。心に思い描くものを言葉の助けを借りて紙の上に表す、というこの作業は、人生のいろんな面で大切なスキルではないかと思うのです。Co-Designの技法をまとめた本は既に絶版になって久しいのですが、40年を経て今なお全く色あせず、建築学の古典として古本の値段が上がり続けています。今200ドルくらいです。今回はこの本の主たる著者であるスタンレー・キングさんの他に共著者の皆さんがたにもお会いしてご一緒に働くことができました。

40年前、若き建築家や学生としてスタンレーさんに師事していた彼らも、それぞれの町で経験を重ねながら老齢を迎えています。お一人の方は、スタンレーさんの「別荘」でみんなでタイプライターで書いては話し合った当時のことを、人生で一番幸せな時間の一つだった、と振り返っていらっしゃいました。(なお、「別荘」というのは森の中にある単なる隙間のことで、とても建物とは呼べないような掘っ立て小屋(壁もない、水道も電気もトイレもない)があります。)

私はこの方たちにお会いできてほんとに幸運だったと思います。まったくの部外者なのに受け入れてくださり、著書を翻訳する栄誉もいただきました。残念ながらまだ出版には至っていないのですが、本当に大切な内容だと思うので、少しずつでも広まっていくといいなと思っています。興味のありそうな方に伝えていただければ嬉しいです。

なお、この後は利害団体の一つである原住民団体の人たち限定のワークショップが行われますが、これはボランティアも含めて参加できる人が極めて限られるため、私も入れてもらえません。原住民の意見は大きな力があるので、どんなことになるのか興味があります。これからもまだまだいくつもの段階を経てようやく再開発が実現するわけですが、一般市民の声が反映されたものになるといいなと思います。私は多数決の民主主義が一番いいものだと思っているわけでもなく、実を言うと民主主義というのは往々にして衆愚主義と紙一重だとおもっているのではありますけれど、こと地域開発に関してはできるだけしっかりと一人ひとりに意見を聞いて、その上で住民たち自身が決めるのがいいと思うのです。
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# by ammolitering7 | 2014-09-28 14:14 | ワークショップ

リバービューワークショップ2

こちらが異様に忙しいご隠居、スタンレー・キングさんです。
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会場には必ず軽食が用意されます。腹が減っては戦ができぬ、というのもありますが、同じ釜の飯を食いつついがみ合うこともしづらい、という心理を利用したものでもあります。
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席が半分くらい埋まったところでワークショップが始まりました。時刻は4時半くらいです。
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テレビカメラも入っています。なお、登録した参加者は撮影と肖像使用に関する同意書に署名しますが、それは嫌だ、という場合でも参加は可能です。その場合は「撮影お断り」と書いた印を胸元につけておきます。
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マイクを持って意見を述べる参加者。一人で何度でも手を挙げてマイクを離さない人もいるので大変です。
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参加者が発言したアイディアを紙に書いていきます。
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最後にはこんなにぎっしりになりました。
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アイディアをその性質に応じて分類して、こんなふうにタイトルにします。今回はアーティストの人数に合わせて8つのテーマに分けました。参加者はその中から自分が一番興味のあるテーマを選んでグループを作ります。私は「レクレーション」というテーマを掲げるグループの書記になりました。普通はレクレーションというテーマに集う人はけっこうたくさんいるのですが。。。
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なんと、今回はたったの一人でした。
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他のグループは10人くらいいたりするので、今回の参加者は病院の敷地を単なる公園以上のものとして活用する意志が強いということでしょう。特に大勢集まっていたのは病院施設の存続を前提としたテーマのものと、コミュニティー活動に関するものでした。
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人懐っこいおじいさんが「私はサイクリングをしていて、その辺にいる人たちに手を振ってて、子供たちとも仲良くなって、、、」などと語る様子を絵にしました。
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最後にこういうマーカーを使って、、、
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色を塗ります。最初に私がかなり適当にちょっと塗って、「ご一緒にいかがですか?」と声をかけます。おじいさんは嬉しそうに「それじゃあ」と言っていそいそと一緒に塗ってくれました。あとはもう、ほったらかしても大丈夫です。「こんなに楽しいのは久しぶりだ」と言いながら、にこにこして熱心に塗って、、、
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できあがり!楽しいこんな様子が実現するといいですね。
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そうこうするうちに、次のお客様がいらっしゃいました。実は、この方は他のグループにいらしたのですが、あまりに意見が強くて他の人たちを黙らせてしまうので、体よく追い出されてしまったのです。ワークショップには必ず一人監視係がいて、こういうことが起こってないかを巡回して見張っています。困った人がいると、「あなたには特別に専任のアーティストをつけてあげましょう」と言って引き離します。そのためにアーティストとしてのスキルのある予備のスタッフを用意しておくのですが、今日はテーマが多くて人数も多くてアーティストが全員手がふさがっていたので、閑古鳥の鳴いていた私たちのグループに白羽の矢が立ったわけです。

彼女はペットに関して並々ならぬ情熱があり、意見もペットに関するものばかりでした。今回のワークショップで意見を述べるのをものすごく楽しみにしていたので、あらかじめ20ページ以上ものレポートを作成し、手書きのアイディアノートも添えて持参していらっしゃいました。それをアーティストに突きつけてここぞとばかりに独占的に振舞うので、グループでの話し合いはできません。彼女は実は密かにペットの猫を隠し持ってきていました。猫も気の毒なことです。彼女は猫がいたばかりに部屋を借りることができず、夏の間の数ヶ月はホームレスだったそうです。コンクリートの建物の裏で寝泊りしていた、と言いました。今もあまり状況が良くないのか、あまり清潔を保てていないような匂いもします。

最初のうちはとにかく威張って自分の意見を無礼なまでに押し付けるだけでしたが、アーティストが辛抱強く話を聞いて彼女の意見を絵にし、私も彼女の意見を紙に書き取って要所要所で同意したりしているうちに、やっと誰かに話を聞いてもらえた、という実感がでてきたのか、だいぶ落ち着いて笑顔さえ出るようになってきました。ワークショップが終わってからは私のところにやってきて、「次のときも来るのか」とおっしゃいました。土曜日にも別の場所で同じワークショップを開く予定があるのです。「来ます」と言うと、「良かった、それなら私もまた来る、まだまだ伝え足りないことがある」とおっしゃいました。

正直なところ、私は「参ったなあ」と思ってしまったのです。でも、考えてみればこれはとても特別なことかもしれません。孤独で、おそらくは何らかの精神的な病気を抱え、多分に自業自得とはいえ自分の声を誰にもまともに受け入れてもらえなかった老いたる人が、「やっと誰かに聞いてもらえた、またこの人に聞いてほしい」と強く思っているのです。毎日彼女と顔を合わせることになるわけでもありません。今度の土曜日のほんの30分ほどの時間が彼女にとってとても大きな意味を持つのなら、私はやはり喜んでそのお手伝いをしようと思います。
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最後は出来上がったたくさんのイラストを展示します。
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他にもたくさんありますが、これくらいにしておきましょう。
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参加者がイラストとリストを見て評価をします。こうしてできたイラストは、今後地域のいろんなところを巡回してもっとたくさんの人に見てもらいます。今回はオンラインでもリアルタイムでアップしているそうです。Co=Designの手法はきわめて有効であることが実証されていて、後継者の育成も積極的に行われています。若い参加者たちはハイテクなので、ワークショップもだんだんハイテクになってきています。

なお、理想としてはこのワークショップは開発の一番早い段階で行われるのが最も有効です。開催には多少の費用がかかりますが、これによって住民の意見の傾向が分かれば計画を早い段階で調整できますし、場合によっては中止ということもあります。最悪なのは工事を始めてから座り込みなどが起こることで、そうなったら金銭面だけでは計れない大きなダメージが出ることになります。

今回も、原住民との交渉次第ではこうした努力が水泡に帰す可能性もあります。それでも、できるだけ早い段階で住民参加を促すことは長期的にも得策です。原住民はまた全く利害の異なるグループなので、来月には原住民だけを対象としたワークショップが予定されています。スタンレーさん、今日はボランティアのお招きありがとうございました。土曜日のワークショップも楽しみにしています。
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# by ammolitering7 | 2014-09-28 14:01 | ワークショップ