付録B (イラスト込み)

付録 B ファシリテーションの技術を学ぶ

1、建築ファシリテーションにおける教育コース:コウィチャン湖のケース

このケーススタディーでは、人々と一緒にデザインする技術の概要と経緯を描写しています。本書では建築教育の場でこのような技術を教えることが緊急に必要であるということを述べていますが、世界各地からも同様の声が上がっています。

1-1 概要
(第1段落)1984年夏の3週間、スタンレー・キングが教鞭を取っていたビクトリア大学3年生の環境研究学部で、建築デザインファシリテーション調査が行われました。この調査で建築家役を務めたのはメリンダ・コンレーです。

(第2段落)学生および職員およそ25名をユーザー・クライアントとするこの建築調査の目的は、新しく作られる環境研究センターのためにデザインを作成することにありました。また、作成されたデザイン・スケッチはユーザー・クライアントから完全な認可を得る必要がありました。

(第3段落)環境研究学部では2つの目標を立てていました。まず、市民参加に重点を置いて、実際に意思決定に関わる人々と話し合うこと、そして第2は、環境に変更を加えるためのデータを得るにあたって、ユーザーと一緒に実践的な働きをすることです。

1-2 現地
現地であるキャンパス外の調査エリアは、バンクーバー島のコウィチャン湖の北の湖岸にある開墾地でした。鬱蒼とした原生林に囲まれており、学生と職員のための滞在用テント、新しいキッチン、食堂、そして管理人一家のための築100年のログハウスがありました。

1-3 調査の目的
調査は、次のような技術を発達させることを目的としていました。

(1)ユーザー・クライアントが望む活動や環境を明確にするためにコミュニケーションを取る。
(2)ユーザー・クライアントのニーズに応える上でのデザインの可能性を知る。
(3)次の項目を含むデザインプロセスのすべての段階を視覚化する。
  *様々な機能関係
  *現地と建物が相互に与える影響
  *外と内を繋ぐスペース
  *光が表面に与える効果、照明と音響の処置、デザインのプロポーションとリズム
  *ユーザー・クライアントの要求と期待を満足させるスケッチ・デザインを作る技術

1-4 デザインの流れ
デザインは以下のような流れで行われました。
  *デザイン・ワークショップ
  *特別な特徴の考慮
  *優先する特徴の視覚化
  *現地の再訪と必要条件の再調査
  *ユーザー・クライアントからの継続的なガイダンス
  *さらに詳細な現地調査
  *3つのデザイン案の評価
  *最終的なコンセプトプランの作成
  *プレゼンテーション

1-5 デザイン・ワークショップ
環境学部の学生25名とコ・デザインのスタッフ3名は、バンに分乗してコウィチャン湖を訪れました。週末の2日間で行われたワークショップでは、皆が一緒に働き、料理をし、共に食事をし、幾つかの大きなテントで一緒に寝泊りしました。夜は皆で食事をしながら、一日の出来事や、壁にずらりと貼り出されたワークショップ画について話しました。

1-6 個々の活動を考慮する

ワークショップ二日目の日曜日には、前日に出されたたくさんのアイディアの中の特別な特徴について、さらに詳しく考えました。メリンダは、アイディアの相互関係をさらに詳しく調べることができるようにバブル図の理論を紹介し、それぞれのバブルは食事、屋内でのレクレーション、学習など特定の活動を表しており、どの活動がどれと隣り合わせに位置するべきかということ、そしてバブル図は複数の活動の間の循環を理解するのに役立つということを説明しました。(注60)。

5~7人ずつの4つのグループに別れ、学生たちは自分たちでバブル図を作りました。土曜日のワークショップで作ったタイムラインを参照しながら、彼らは活動を特定のカテゴリー毎にまとめました。それぞれのグループが3つのバブル図を作り、合計12個の活動相関図ができあがりました。また、メリンダは現地で何時間もスケッチをして、後で視覚化する段階に備えました。

1-7 現地プランニングと活動環境の描写

ビクトリア大学に戻ったあとは、現地に特定の活動と建物を位置づけるための議論が続きました。ユーザー・クライアントである学生たちは一人一人5ページまでのエッセイを書いて、自分が選んだ3つの活動(料理、社交、講義など)のために思い描いた理想的な環境を詳しく説明しました。

学生たちは、自分の望む環境を明らかにするのにクリストファー・アレキサンダーの「パターン・ランゲージ」が非常に役立った、と感想を述べました(注61)。

エッセイには、視覚、音、匂い、味および触覚という知覚的な感覚が詳しく記述され、さらにそれぞれの活動の雰囲気、循環、人数、時刻が描写されました。

1-8 優先する特徴の視覚化
(第1段落)メリンダはワークショップの翌週の火曜日の夜と水曜日を使って学生たちのエッセイを調べ、活動をそれに必要な環境ごとに分類しました。

(第2段落)それから4日間(木曜日から土曜日)かけて、彼女は学生たちが描写したものを知覚図、見取り図、そして断面図の形で視覚化しました。土曜日から次の火曜日にかけては、光と音響に焦点を当てた調査を行いました。それぞれの調査シートは同じ活動をテーマとした3つの描写エッセイをまとめたもので、それぞれの特徴を総合して視覚化していました。

(第3段落)例えば、ユーザー・クライアントたちは、環境センターでは到着、駐車および入り口エリアにロビーがあること、そしてそれがバックパックや大きな荷物を持った人たち30~35人を収容できる大きさであることを特に指定していました。また、ロビーはドアの両側に大きな窓があって、天井には天窓もあって明るいこと、そして窓辺にベンチがあることも指定していました。

入り口そのものへのアクセスは、建物の長さ全体に延びる木のポーチに繋がる3段の階段を通って入れること、そして建物は重厚で荒削りな材木でできていて、手すりなどは錬鉄でできていることも指定されました。

1-9 コンセプトプラン
ワークショップの翌々週の火曜日、メリンダは学生たちが描いたすべてのバブル図を調べ、それらを統合して3つの現地レイアウト案を作りました。また、バブル図と活動のタイム・グラフの中に、情報の相互関係を表す図も描きました。

その夜、彼女はさらなる調査のために現地に戻り、ビクトリア大学の地図作成施設から得た現地データを確認しました。

1-10 コンセプトプランの評価
(第1段落)翌水曜日の夜、ユーザー・クライアントたちはワークショップで出されたアイディアを再検討するために再度現地を訪れました。そして、コウィチャン湖まで分乗していったバンをイーゼルとして使って、彼らが望んだものをそのままに反映する9枚の調査シートを展示しました。

ユーザー・クライアントたちはワークショップの絵と調査シートを見て、自分たちが本当に必要としているもの、本当に望んでいるものを再評価し始めました。そして彼らは、自分たちのアイディアは大仰すぎて、非現実的で、開墾地の性質を駄目にするということに気づきました。

(第2段落)彼らは、活動と建物がどんなふうに縮小できるか、そして木々の間に隠れるようにできるかと想像しながら、再び現地を歩きました。それぞれの活動のために別々の建物を建てるのではなく、多目的室にそれらを重複させることができるかもしれません。

互いにコミュニケーションを取り、自分たちのアイディアの結果を視覚化する機会を得たことで、ユーザー・クライアントたちは自らこの結論に至ることができました。彼らは、デザインをもっと小規模なスケールに抑えることが必要であること、二度目の現地訪問は非常に重要であること、そして建築家は常にユーザー・クライアントから継続的なガイダンスを得なければならないことを、はっきりと理解しました。

1-11 必要条件のまとめ
翌日の木曜日、メリンダは大学に戻って教室にすべての絵を展示しました。ユーザー・クライアントたちは、自分たちの過去のコメントを見直し、さらに変更を加え続けました。絵は金曜日の午前中まで展示して、学生たちが来てコメントを書き込み続けられるようにしました。その後、すべての書き込みが終わってから、デザインの必要条件が要約されました。

1-12 現地と各種規定の更なる調査

それから3日間(土曜日~月曜日)、メリンダは現地図、敷地図、等高線図、そしてビクトリア大学の地図作成部から提供された野生生物とレクレーション使用地図を研究しました。その後、地形、植生、気象条件、循環、ゾーニング、視界、周辺の建物、車両の乗り入れに関する現地図を描きました。また、現地に該当する基準や規定などの必要条件を見直しました。

1-13 3つのデザイン案
デザインエクササイズ開始から2週間たった月曜日には、メリンダは環境センターの空間整理のための3つのコンセプトデザイン案を提示しました。各部分がグループ化された建物、複数の独立した部分がつながった建物、各部分が継続した壁に囲まれた建物の3つです。議論会を開いて話し合った結果、部分が壁で繋がった案が選ばれました。この案はユーザーたちが表明していた多くの必要条件に適っていました。

外へ行かずにある場所から別の場所へ行けること、一つの中心的な集会場があって、そこから他の部分に分かれていること、すべての活動が互いに近くにあること、内部にバリエーションがあって、一つの屋根の下にすべて含まれる場所であること、などです。この合意を元に、メリンダはデザインの最後の段階に進むことができました。

1-14 パーツのデザイン

その次の月曜日に、建物の各パーツのカラー画が提示されました。これはユーザー・クライアントの要求、現地データ、および規定という必要条件をまとめたものとなっており、よく似た活動ごとに割り当てられたスペースの様子を視覚化していました。

例えば、玄関ホールを表したパーツは25名を収容するのに十分な大きさがあり、玄関の外壁の窓辺にはベンチが備え付けてありました。12人(6人x2グループ)が使える大きさの台所もあり、別の絵には食事や社交やレクレーションのための大きなオープンスペースもありました。デザインテーマは、森の温かみと調和した重厚な木材の使用を強調していました。

絵には、バブル図とマトリックスで表された機能的な関係、および、景観を保つ必要があること、雨に濡れないように大きく張り出したポーチがあることなど、現地の重要な要素に関するユーザー・クライアントの意見が含まれていました。パーツとテーマに関する議論もさらに続けられ、やがて最終的な合意に達しました。

1-15 直感的なデザインプロセス
(第1段落)その後の3日間(火曜日から木曜日)、メリンダはスタジオにこもって、最終的なデザインの視覚化という直感的でクリエイティブなプロセスに入りました。技術的および審美的な各パーツを全体的なコンセプトにまとめ、そして建物全体の概略を視覚化する作業です。

デザインは、ワークショップで得られたイメージのレプリカを作ろうとするのではなく、様々な活動と環境的な性質のエッセンスを形にすることを目的としました。

(第2段落)この最終的な段階では、建築案、空間的な必要条件、周囲の環境との継続性、表面に当たる光の入り方、黄金率、音響の扱いなどが考慮されました。最終デザイン案には、小さな窓際のベンチ、壁のくぼみ、細部の要素の結合部分なども含まれました。

1-16 最終的なコンセプトの提示
(第1段落)翌金曜日の午前10時半、3週間に渡った準備のあとで、メリンダはユーザー・クライアントに環境センターのための最終的なデザインを提示しました。併せて、調査プログラムの間にできたすべての絵を展示しました。最初のワークショップの絵、パーツの絵、現地調査図、現地見取り図、内装と外装の遠近画、敷地図、断面図、立面図、そしてその他多数の細かい絵などすべてです。

(第2段落)メリンダは環境センターを「週末あるいは一週間のセミナーのために学生たちを受け入れる活動ディスカッション施設」と描写しました。訪問者は大きな張り出し屋根の下にバンで乗り入れることができ、悪天候から守られます。主な建物では、社交的な活動など、複数の活動ができます。間取りと内装は、アキシアルなロマネスク様式に倣いました。

(第3段落)ユーザー・クライアントたちは絵の周りに集まってデザインの様々な要素を指し、自分たちのアイディアが非常に良く組み合わされたことに満足感を表明しました。彼らは新しいセンターのビジョンを見て高揚した様子で、施設を利用しているところを具体的に想像しました。

(第4段落)ユーザー・クライアントたちはデザインを完全に受け入れました。否定的な反応は全くありませんでした。コミュニティーデザイン参加エクササイズは、ユーザー・クライアントのビジョンを忠実に取り込んだデザインに繋がりました。

1-17 評価
(第1段落)メリンダは後に、今回の調査について、「アイディアのイメージと各パーツのデザインからコンセプトデザインまで、一連の流れがデザインをすばやく生み出すことに貢献した」と語りました。この流れに添うことで、参加者たちは簡単にデザインプロセスに参加して、その発展に協力することができました。

(第2段落)イメージを使うことで、ユーザー・クライアントたちは自分たちの最初のアイディアは大仰過ぎて現地を駄目にするということに自ら気づきました。その結果、彼らは最終的なデザインの必要条件に関して簡単に合意に達しました。

ユーザー・クライアントたちが完成したデザインを見たときの興奮した反応は、メリンダにとって、努力の甲斐があったと感じるに十分なものでした。

(第3段落)3週間という期間はメリンダが必要な仕事を完成させるには不十分でした。この調査に実際に必要なのは、大学の一学期にあたる4ヶ月です。スタンレー・キングも、コミュニティーデザインプロセス全体をカバーするには3週間は短すぎるとコメントしました。

(第4段落)スタンレーは、メリンダの優れた描画技術が今回のコースの成功の鍵になったと強調しました。別の建築学科の学生もメリンダと一緒に始めましたが、視覚化のタスクが手に負えず、落伍しました。

(第5段落)現在の建築教育では、学生が多数のユーザー・クライアントとデザインコミュニケーションを取るための技術を身につけられるような機会は滅多にありません。

(第6段落)コースが終了したあと、メリンダのデザインはカナダ王立建築協会カルガリー支部の指導教員と検査官に提出されました。彼らはデザインと絵の品質および繊細さに感動して、建設を認可しました。また、メリンダの絵は後に、同支部が全国誌に掲載する講義要目の代表例として選ばれました。
f0239150_817517.jpg



f0239150_8181735.jpg



f0239150_8184295.jpg

(イラスト)コウィチャン湖環境センターのためのコンセプト画:
(A)現地見取り図。
(B)間取り図。
(C)断面図。
(D)ダイニングホールの内装遠近画。
(E)立面図。
(F)ソーシャルセミナー室の内装遠近画。

(クレジット)メリンダ・コンレーおよびRAIC講義要目概観

[PR]
# by ammolitering7 | 2013-06-22 08:19 | 「コ・デザインの手法」

付録A (イラスト込み)

付録 A ワークショップのテクニックを学ぶ

1、SAIT(南アルバータ州技術学校)プロジェクト

コ・デザインの指導によって、南アルバータ州技術学校の学生たちはキャンパス改善を目的としたデザイン参加プログラムで助手として働くための技術を身につけることができました。このケーススタディーではその様子を描写しています。コミュニティー・ワークショップとは異なる、教育機関でのワークショップの特別な性質にも言及しています。

1-1 概要
(第1段落)1987~1988年度にかけて、私たちはカルガリー市のSAIT(南アルバータ州技術学校)建築技術学部の学生たちを対象にコ・デザイン・コースを提供し、本書の内容を使用して指導しました。スタンレー・キングが指導にあたり、メリンダ・コンレー、ビル・ラティマー、およびドルー・フェラーリが助手を務めました。

このコースは、複数の学部寮の改善のために、コンセプトデザインを含むキャンパス・プランニングを行うというプログラムの一環でした。コースの間に数回開かれたワークショップには、改善によって影響を受けることになる管理職員、教授陣、一般スタッフおよび学生たちが参加しました。

(第2段落)建築学部の学生たちは、助手としてワークショップに参加して、新しく身につけた技術を活用しました。コ・デザインが行った指導内容は、建築レンダリングと建築理論という二つの分野で通常コースの必修項目の一部に該当しました。当時2年生だった学生たちは、既に遠近法を使った描画法を習得していました。

1-2 調査の目的
コ・デザイン・コースの目的は、学生がデザインに必要な情報を得るためにクライアントと対話する能力を身につけるようにすることでした。クライアントのアイディアを視覚化するために素早くスケッチをする能力も強調されました。

1-3 学習のステップ
クライアント対話の技術を学ぶための過程は以下のようなものです。
(1)デザイン用語を使って既存の環境を知覚的に分析する
(2)デザイン用語を使って想像上の環境を知覚的に描写する
(3)クライアントが望む環境を完全に描写できるように適切な質問をする

コ・デザインのスケッチ技術を学ぶための過程は以下のようなものです。
(1)コ・デザインのワークショップ画の例を調べ、デモンストレーションを見る
(2)人物、物、景色の特徴を知る
(3)モデルを使った人物スケッチと現地スケッチ
(4)景色を視覚化する
(5)一人のクライアントが描写する景色を描く
(6)複数のクライアントが描写する景色を描く

1-4 時間配分

(第1段落)コ・デザインのスケッチ授業は毎週2時間、12週間に渡って行われました。これは、正式なレンダリング技術を学ぶための36時間の建築レンダリングコースの3分の2にあたります。さらに、学生たちは授業と授業の間に毎週およそ2時間の課題を完了しました。

クライアント対話を学ぶための授業時間は毎週3時間、4週間に渡って行われました。これはデザイン基準を学ぶための36時間の建築理論コースの最初の3分の1に当たります。

(第2段落)典型的なスケッチ授業では、最初の30分はウォームアップ・エクササイズを行いました。続く10分間は、学生たちは教室の前方に集まって互いをスケッチしました。次の15分間は、黒板に書かれた指示文に従って景色を描きました。最後に車や植生など特定のテーマでスケッチ法を学びました。

(第3段落)学生たちは、2人一組で作業をすることで、一人のクライアントのために景色を描く方法を学びました。一人の学生がクライアント役で景色を描写し、もう一人がアーティスト役を務めました。トピックの複雑さによって違いますが、10~20分で役割を交代しました。

また、グループで練習したり実際のコ・デザインワークショップを手伝ったりすることで、複数のクライアントのために描く方法を学びました。

1-5 学生と参加者の数
(第1段落)コースには建築技術学部の2年生全員、2クラス合計24名の学生が参加しました。コースの期間中には複数のワークショップが開かれましたが、そのうちの一つは必修項目としてコースのすべての学生が参加しました。各ワークショップに参加した学生の数は、少ないときで8人、必修項目のワークショップのときは最多で、23人でした。このワークショップでは、参加者2~3名に対してアーティストと書記がそれぞれ1名ずつという構成になりました。

SAITは、その他のワークショップにはコースの学生たちを雇用して、参加者4名あたりアーティストと書記が各1名ずつになるようにしました。

(第2段落)講師と学生の比率は、ほとんどの場合1対24でした。時には助手が参加してワークショップのテクニックをデモンストレーションし、実際のワークショップでの指導も行いました。

(第3段落)およそ半数の学生が、ワークショップで見知らぬ人々の前で想像上の景色を描くことに十分な自信を得ることができました。ワークショップでは、彼らがコ・デザインのアーティストの役割を果たしました。まだ自信のない者は書記役を務め、図を描いたりスケッチプランを作成したりしてアーティストを補助しました。

1-6 ワークショップ
(第1段落)ワークショップのためのトレーニングは、学年度を通して行われました。最初のワークショップでは、学部寮の中庭に焦点を当てました。SAITのオープンハウスで行われたこのワークショップは、SAITへの入学を検討している高校生のための学校案内会も兼ねていたため、主に高校生からなる参加者たちの大きな関心を集めました。

高校生たちは建築学部の学生の周りに座ってアイディアを出し、学生がそれを絵に描きました。ときには、学生の周りに高校生たちが何層もの人垣を作って覗き込む様子も見られました。このワークショップでは学校管理職員が審査員となってデザイン審査会も開かれました。審査員たちはコ・デザインのデモンストレーションを見て、そのプロフェッショナルな正確さ、および参加者たちが学生たちと一緒に学習エクササイズに参加できるということの有用性を評価し、賞賛しました。

(第2段落)これに続いて、国際教育、キャンパス外サービス、製図、および自動車・ディーゼルの各学部寮の改善のために、一連のワークショップが開かれました。それぞれのワークショップは1回90分で、これは参加者と学生の双方のスケジュールに合う長さでした。

ワークショップは本書の第2章に示した流れに沿って行われました。テーマとなった現地環境には複雑な作業所や研究所も含まれたため、現地視察の間にアーティストはスケッチを練習し、書記が参加者との対話を行いました。

(第3段落)学校ワークショップの雰囲気は、学生どうしのエクササイズやオープンハウス(高校生が参加した市民ワークショップ)のときよりずっと真剣なものでした。管理職員や教師たち、および一般スタッフは、自分たちの労働環境のデザイン改善のために、非常に熱心に話し合いに参加しました。

彼らは学生たちをプロと見なし、プロとしてのパフォーマンスを要求しました。また、ワークショップの後は学生ではなく資格のあるデザイナーがデザインを扱うことを要求し、その保証も求めました。

(第4段落)教育的な環境における参加者の態度は、市民ワークショップとは異なっていました。学校ワークショップの参加者たちは忙しいスケジュールの中で時間を見つけるのが難しいため、集中して熱心に参加しました。他方で、市民ワークショップでは普通は土曜日の丸一日をワークショップにあてるので、参加者は寛いだ雰囲気になります。

学校ワークショップの参加者たちは正確な大きさと細部に焦点をあて、大量のデータを作り出しました。また、参加者が市民ワークショップでは見られない格付けへの配慮を見せ、話し合いの中で躊躇する様子も見られました。一般スタッフは自分が話す前に管理職員の意見を確かめたがり、反対に管理職員はスタッフの意見を待つ、というようなものです。

(第5段落)コースの必修項目とするワークショップは、「学生たちが通常のコースの必要事項を完了できることができるデザインに繋がるもの」という基準で選定されました。最終的に選ばれたのは、建築技術プログラム学部寮のためのワークショップでした。学生たちは、コースを通して学習した内容を建築技術寮のためのデザイン作りに適用しました。

(第6段落)一連のワークショップで得られた反応は、その後に作成されたキャンパス改善のためのコンセプトデザインの基盤となりました。

1-7 評価

(第1段落)コースの後で行われた評価では、学生たちはコ・デザイン・コースの質を平均以上だと評価しました。実際のクライアントと一緒に実際のプロジェクトの仕事をする機会が得られたことを喜ぶコメントも複数の学生たちから寄せられました。また、二名の学生たちからは、後日「卒業後すぐに住宅の改修デザインを始めたときに、どうやってクライアントと仕事をしたらいいかよく分かっていて良かった」という感想が寄せられました。

(第2段落)自動車・ディーゼル学部と製図学部のためのワークショップ後の評価では、39人の参加者のうちの23人が次のように評価しました。(以下、数字は「強くそう思う、そう思う、そう思わない、全くそう思わない、不明」の順。)

「時間は十分にあった」4.3%、30.4%、48%、13%、4.3%
「個人的にはコ・デザインのワークショップは貴重で肯定的な経験だった」50%、50%、以下なし
「個人的に、自由に貢献して自分の意見をのびのびと言えると感じた」100%、以下なし
「アーティストと書記は私のアイディアを忠実に表した」38.5%、46.2%、7.7%、0%、7.7%

次の質問は学校内での労働関係におけるワークショップの影響を明らかにすることが目的でした。

「学校管理課はワークショップによって効果的なリーダーシップを示すことができた」
4.3%、52%、21.7%、8.7%、13%
「ワークショップによって、SAITは私個人に配慮しており、私の仕事に関する問題や必要性を理解していることが示された」13%、47.8%、26.1%、0%、13%

ある管理職員はプログラムを支援して以下のような文章を寄せてくれました。

「コ・デザインのテクニックには以下のような特徴がある:
*デザインされるスペースを使用することになるすべての人に参加を促す
*個人の考えが目の前のコンセプトを越えて広がるようにする
*フォローアップと厳密な質問によって、些細なアイディアでもデザインに組み入れられるようにする
*スケッチが最初に心に思い描いていたように仕上がらなければ、「気が変わった」と言ってやり直せる自由さがある
*グループの中でこの手法が使われると、批判を恐れることなく非常に寛いで参加できる」(注59)
f0239150_8142764.jpg

(イラスト)学生の一人クレイグ・フレイザーが描いたワークショップ画。中庭のためのアイディア。
f0239150_8145457.jpg

(イラスト)学生の一人スィッド・シュレーダーが描いたワークショップ画。自動車の作業場のためのアイディア。
f0239150_815265.jpg

(イラスト)学生の一人マイキー・ブラウンが描いたワークショップ画。CADD研究室のためのアイディア。
[PR]
# by ammolitering7 | 2013-06-22 08:15 | 「コ・デザインの手法」

第19章 (イラスト無し)

第19章 コ・デザインに対する評価

1、コミュニティー・デザインのプロセスに参加した人々にとっての価値:イングルウッドでのインタビュー


(第1段落)コミュニティー開発のコンサルタントであるアンドレ・アイフリッグは、過去2年間インドネシアでコミュニティー・ハウジングの仕事をしていました。彼女は、1987年5月にアルバータ州カルガリー市のイングルウッド・コミュニティーで行われた市民参加プロセスの調査を行いました。このケーススタディーは、以下の関係者との4つの会話から成ります。

*デイビッド・マーシャル 
イングルウッド・コミュニティー協会、地域再開発計画(ARP)小委員会の委員長
*ルクレティア・マルテネット 
コロネル・ウォーカー・コミュニティースクールの元スクールコーディネーター
*ピーター・チェッソン 
開発コンサルタント、イングルウッド・コミュニティー協会の長年の会員
*フィリップ・ダック 
カルガリー市都市計画課の都市計画者

(第2段落)インタビューはいずれも、コ・デザインによるデザイン・ワークショップ活動がイングルウッド・コミュニティーでいかに受け入れられたか、という事柄に対して感想を得るために行われました。

1-1 コミュニティー協会にとっての価値
アンドレはまず、イングルウッド地域再開発計画小委員会の委員長であるデイビッド・マーシャルと会い、ワークショップを組織したコ・デザインの努力が新しい計画に対するコミュニティーの人々の理解と参加にどのように貢献したかを話し合いました。

アンドレ:ワークショップとそれに続くコンセプトプランの有効性についての意見を聞かせてください。コミュニティー、ARP小委員会、そして市は、ワークショップ・プロセスからどのように利益を受けましたか?

デイビッド
(第1段落)まず、市から始めましょう。コミュニティー協会が気づいたことの一つとして、市は時としてコミュニティーにとって重要な事柄とは違うものに注目する、というのがあります。例えば、都市計画者は、子供たちにはブランコとプールのある公園のようなレクレーション施設が必要だと考えます。

これに反対する人はいませんが、コ・デザインが行ったスクール・ワークショップの結果をよく見ると、そういうものは必ずしも子供たち自身にとっての優先事項ではないということが分かります。ワークショップの価値は、コミュニティーのデザインに住人たちが協力することで、人々にとって何が大切かということを表す調査結果が得られるということです。

私たちの経験では、ワークショップにコミュニティーの人々が大勢参加すれば、市の反応は良くなります。住人にとって何が重要かを議会が知ることができるからです。ある特定のアイディアやポリシーが多くの人々に支持されていれば、それも市を動かす力になります。

そのため、コ・デザインが大勢の人々を駆り出してたくさんのアイディアを引き出してくれるなら、それは市との交渉のときに有利になるのです。また、ワークショップは寛いだ雰囲気を作り出します。都市計画者はそんな中でコミュニティーの人々と会うので、イングルウッドは単なる道路と排水溝の集まりではない、ということを実感してもらえます。

(第2段落)ワークショップは、委員会にとってもコミュニティーにとっても貴重なものでした。かねてから温めていた幾つかのアイディアについては、ワークショップのお陰でその意味合いを理解することができました。人々の出したアイディアは、コ・デザインのアーティストがそれを絵に描いたときに「本物」になりました。

誰もがアイディアを持っていますが、視覚的に表されるとそのインパクトが増します。また、絵があったので優先順位をつけるのが簡単になりました。コミュニティー協会は住民の好みに基づいて様々な開発案の中から取捨選択しなければなりませんが、絵はそのプロセスをずいぶん簡単にしてくれました。ゾーニングに関連するコンセプトプランの内容を評価するにしても、アイディアとその影響が絵に描かれていると簡単になるのです。

アンドレ:コンセプトプランの作成はコミュニティー協会にとって有益でしたか?

デイビッド:市のフィリップ・ダックが、ARP小委員会とコ・デザイン、そして都市計画課の代表者がワークショップの2~3日後に会って結果について話し合うことを提案しました。コ・デザインが資料を見直してプランを描くのに要する時間に対しては、市が支払いをしました。

出来上がったプランは大変有益でした。ワークショップで作られた絵と直接関係していたので、委員会は住民たちが出した様々なアイディアの素晴らしさとそのインパクトを再確認することができました。たとえば、商店の前のスペースを使ったカフェとブティックというアイディアは、9番街の駐車スペースに影響します。

開店を許可するためには、ゾーニング規制を変更する必要も出てくるかもしれません。コンセプトプランを作成する一環として、委員会はコ・デザインのアーティストと一緒に通りを歩いて視察しました。これに参加したメンバーは、「ワークショップの結果、将来は駐車の問題が発生するという予想を踏まえて、通りの音にもっと敏感になった」と感想を述べました。

アンドレ:市はコンセプトプランにどんな価値を見出しましたか?

デイビッド
:プランではコミュニティーのアイディアが都市計画課の担当者が慣れ親しんだフォーマットで表されているので、フィリップ・ダックは私たちのアイディアを直ちに受け入れて使うことができると思います。

アンドレ
:コ・デザインはワークショップを組織するにあたってどのようにコミュニティー協会を助けましたか?

デイビッド
:コ・デザインはワークショップの前にリハーサルをして、実際にどういうふうなものになるのかを理解できるようにしてくれました。また、理解する上で何か問題があれば、解決を図ってくれました。彼らは助言や提案はしましたが、ワークショップの準備そのものは私たちに任せました。

素晴らしいと思ったのは、コ・デザインは開発のためのアイディアをあらかじめ選んでおくことをしなかったこと、そしてアーティストたちがワークショップ参加者のアイディアをあざ笑ったり除外したりしなかったことです。ワークショップで作るサンプルの幅をできるだけ広げるために、すべての人のすべてのアイディアが受け入れられました。

1-2 子供たちにとっての価値

1987年7月、アンドレはカルガリー市のコロネル・ウォーカー・コミュニティースクールのコーディネーターであるルクレティア・マルテネットにインタビューを行いました。ルクレティアはコ・デザインのスクール・ワークショップの価値について自分の感想を述べました。

アンドレ:今年5月にコ・デザインが行ったようなワークショップが、この学校に特に向いているというのはなぜですか?

ルクレティア:当校は、ほとんどの教育機関が決してしないような方法でコミュニティーの暮らしと統合することに成功しました。例えば、子供のためのコ・デザイン・ワークショップの目的は、この地域でどんなレクレーション設備が必要かということに関して子供たちの意見を聞くことにありました。

住民の意見を聞いてイングルウッドの将来の開発案に優先順位をつけるために、コミュニティー協会がコ・デザインを雇用していたので、子供たちのワークショップはそのプロセスの延長でした。

アンドレ:コ・デザインは子供たちと何回会いましたか?

ルクレティア
(第1段落)学校では3回セッションが行われました。最初はスタンレー・キングが子供たち全員を対象にしてワークショップを開きました。子供たちはみんなで大きな絵を描きました。スタンレーはまず子供たちに、都市には普通どんなものが作られるかを考えて描くように言いました。それから、どんなものが作られたらいいと思うか、アイディアを出すように言いました。大きな絵を描くのは有益なエクササイズでした。子供たちに都市がどうやって発達するかを見せてくれたからです。

(第2段落)スタンレーとの2回目のセッションは美術室で開かれました。子供たちは1クラスずつやってきて、先日作ったアイディアのリストから選んで一人一人絵を描くように言われました。子供たちは、自分や友人たちがしていることを絵に描きました。スケートボード、ダートバイク、ビデオゲームなどです。そして言葉による説明も付け加えました。

子供たちは、このセッションによって「所有」の感覚を得ました。自分はコミュニティーのためにレクレーション設備案の決定に貢献した、という感覚です。普通は子供たちは無視されるものですが、スタンレーは子供たちに、自分の貢献はイングルウッドの開発にとって重要なのだ、と感じさせました。

また、絵と説明文を使用したことで、子供たちはコミュニケーション技術の重要性を実感することができました。視覚的なイメージと文字による描写が優れているアイディアは、そうでないものより大きなインパクトを持つ、ということを知ることができたのです。

(第3段落)最後のセッションは体育館で行われました。すべての絵が貼り出され、子供たちによる評価がなされました。それぞれの絵に評価表がつけられ、子供たちは1から4までの数字を使って評価するように言われました。私たちはあらかじめ子供たちに、全てのアイディアは良いものだが、すべてが実現され得るわけではない、と強調しました。

「1」は、とても良くて実行すべきもの、「2」は良いアイディアだがもっとデザインを工夫すべきもの、「3」は良いけれどお金が掛かりすぎるもの、「4」は良いけれど市内のもっと他のところに向いているもの、という評価区分です。

その後、最も評価の高かった幾つかの絵は、もっと大きなコミュニティー集会で展示され、話し合われました。また、ARP小委員会は将来の参考のためにすべての絵を保存しました。

アンドレ:イングルウッドのためにARPレポートを作成していた都市計画者とコミュニティー協会のメンバーにとっては、セッションはどんな価値がありましたか?

ルクレティア:子供たちの絵から、この地域にはレクレーション施設が緊急に必要だということが分かりました。コミュニティー協会は子供たちのアイディアにとても感心していました。その多くは協会が独自に作成した協議事項にはないものでした。

都市計画者も驚きました。子供たちのアイディアの多くは、彼らが提案するような種類のレクレーション活動ではなかったからです!子供たちの絵が教えてくれたのは、彼らには友達同士でたむろできる場が必要であり、ビデオパーラーやスケートボード場がなければ、おそらく路上でたむろすることになる、ということです。

そして、もしも市が子供たち自身による優先順位を考慮しないなら、都市計画者たちの作る「良い」デザインは子供たちの手で壊されてしまうでしょう!

アンドレ:コ・デザインの仕事には満足しましたか?

ルクレティア:ワークショップの目的は子供たちにはっきりと伝わりました。スタンレーは子供たち全員の協力を取り付けることに成功しました。普通なら斜めに構えた中学生たちもです。結果はすばらしいものでした。子供たちは自分たちの貢献を自覚しており、都市計画者とコミュニティー協会は子供たちが本当に必要としているものを知ることができました。

コ・デザインのプロセスは価値のあるもので、他の事項にも転用できると思います。例えば、イングルウッドで他にレクレーション施設を作ったり、開発に関する意思決定をしたりするときです。この学校は、コミュニティーの中での位置づけを考えると、良い会場です。

1-3 コミュニティー開発における価値
ピーター・チェッソンは古くからのイングルウッドの住人で、コミュニティー協会の会員でもあります。再開発委員会のメンバーとして1973年のデザイン概要の作成にも参加し、市との交渉を経験しました。アンドレは1987年7月にピーターと会い、同年5月に行われたコ・デザインワークショップの役割について意見を聞きました。

アンドレ:コミュニティー協会がコ・デザインのフォーマットに惹かれたのはなぜですか?

ピーター:再開発委員会はコミュニティーの人々の参加を奨励するためにARP案を始動する方法を探っていました。コ・デザインのプロセスは市民参加を促すことを目的としており、絵を使うことで、人々の漠然としたアイディアをもっと焦点の定まったものにします。絵は地図より理解しやすく、即時性があるので、コミュニティーでの話し合いには絵のほうが向いているのです。絵があると、選択肢の中から選ぶのがもっと簡単になります。

アンドレ:コミュニティー協会はワークショップから何かARPレポートの作成の助けになるようなものを得られましたか?

ピーター
(第1段落)協会はイングルウッド地域、とくに地元の施設を改善するための肯定的なアイディアを探していました。コ・デザインは問題ではなく可能性に焦点をあてます。ワークショップ参加者は、レクレーション施設、商店街や川辺などのコミュニティー開発のために、自分のアイディアを出すように促されました。

アーティストたちは参加者のアイディアを忠実に描きました。絵は、選択肢に優先順位をつけるための、そしてARPレポートに含めるポリシーを検討するための第一歩でした。また、ワークショップを通して協会に新しいボランティアも入りました。

(第2段落)ARPレポート作成の次の段階では、コミュニティーの人々をオープンハウス会議に招いて参加してもらい、そこでポリシーの内容と優先順位をもっと詳しく検討します。オープンハウスは、コミュニティー協会が市議会に統一した意見を提出する助けにもなります。コ・デザインは、ARPプロセスに住民の関心を結集することと、住民から多くの良いアイディアを出してもらうことという2点で大きな貢献をしました。

集められたアイディアは、これからコミュニティーとARP小委員会によって審議されます。また、絵は議会とのロビー活動も有利にします。絵はコミュニティー参加の証拠であり、この地域の人々が自分たちの環境に何を望んでいるかということとの力強い表明だからです。

1-4 都市計画者にとっての価値

1986年、都市計画課のフィリップ・ダックはイングルウッド・コミュニティー協会に対し、課が作成する地域再開発計画へのインプットとしてレポートを作成するように依頼しました。アンドレは1987年6月にダックと会って、計画レポートの作成における都市計画課とコミュニティー協会の役割の違いについて尋ねました。

アンドレ:あなたは、市民参加プロセスにおいて都市計画課とコミュニティー協会が果たす役割は異なる、と発言しました。その違いとは何ですか?

ダック

(第1段落)市は様々な理由により地域再開発計画の作成にコミュニティーの参加を図ります。コミュニティーの人々はARPの最終的な結果とずっと一緒に暮らすことになる、ARP計画に関わったコミュニティーは結果に対してより大きな所有の感覚を持つ、そして市はコミュニティーの人々に対して彼らがどのように開発すべきかということを独裁的に指図したくない、というような理由です。しかし、市民参加における私たちの実際の関わりは、法的および実際的な理由で制限されます。

(第2段落)コミュニティー協会にはそのような制限はありません。彼らには、地域再開発計画のための初期レポートを作成するプロセスの一環としてすべての住民の意見を聞く、という任務があります。一般的に、あるコミュニティーが何か計画を立てる場合、彼らはそれが市内の他の地域に与える影響は考慮しません。また、輸送やインフラへのコストも考えません。しかし、市のほうではこれらの事項を考慮しなければなりません。

(第3段落)イングルウッドを例にとりましょう。今年5月にイングルウッドでコ・デザインのワークショップが開かれましたが、コミュニティー協会はそこで出されたすべてのアイディアと作成された絵を調べます。市民によるアイディアと絵について話し合うためのオープンハウスも予定されています。都市計画課は、このような市民参加プロセスそのものを主催する時間がありません。私たちのリソースは限られているのです。そして、地元の住民の参加を促す主体になるのは市ではなくコミュニティー協会であるほうが望ましいのです。

(第4段落)コミュニティーの考えが市のそれとは異なるということは、両者がワークショップの絵の内容をどう扱うかということにも明らかです。コ・デザインのワークショップの参加者は、川岸近くの遊歩道のために特にシェール材(泥板岩)を希望しました。そしてコミュニティー協会は結果的にこれを推薦することになるでしょう。しかし、ワークショップの結果として出された推薦事項の経済的な責任は市にあるため、もしもシェール材を使うのはお金が掛かりすぎるなら、別のものを検討しなければならないかもしれません。

アンドレ
:それでは、都市計画者の扱う情報はコミュニティー協会のそれとはどのように異なっている必要があるのですか?

ダック
(第1段落)都市計画者は一般に絵よりも言葉を好みます。これはおそらく、彼らのアカデミックな背景によるもので、レポートを効率的に作成する助けになるようなデザインデータを好むのです。市民ワークショップで得られるような編集されていない絵の束は、都市計画者にとっては不適切なデータ・パッケージと言えます。

(第2段落)都市計画課が好むのは、コンセプトプランおよび関連する絵が少数添えられて、コミュニティーの望みを要約したフォーマットのデザインデータです。コンセプトプランは、輸送課など市の他の課とコミュニケーションを取る上でも効果的なツールです。

例えば、コミュニティー協会が提出した、商店街やレクレーションエリアの再開発や住宅地域の保存に関する最終的なレポートがあれば、都市計画課のスタッフはその提案の経済的その他の関連をすばやく査定することができます。

アンドレ
:コ・デザインは地域再開発計画の作成にどのように役立ちますか?

ダック
:コ・デザインのメンバーたちは、都市計画者とも、そしてワークショップ参加者とも対処することのできるアーティストや建築家です。コ・デザインのアプローチによって、市民からデザインに対するより協同的で高度なインプットが得られます。また、最終的な作品はプロフェッショナルなものなので、市にとっても理解しやすい形になります。結果的に、コミュニティーと都市計画者の双方から高い評価が得られます。

例えば、イングルウッドのためのコンセプトプランは都市計画者と役人たちに深い感銘を与えました。彼らは、コミュニティーの人々が自分たちのアイディアを描いた絵と、それをコ・デザインがプロフェッショナルに表した作品の両方に感動したのです。さらに、コミュニティーの人々はデザインワークショップの結果に勇気付けられ、地域の開発プロセスにもっと積極的に参加するようになりました。
[PR]
# by ammolitering7 | 2013-06-22 04:09 | 「コ・デザインの手法」

第18章 (イラスト無し)

第18章 新しいテクニック:世界各地からの情報

カナダ・パシフィック航空の機内誌「エンプレス」に掲載されたサンドラ・マーティンズによる記事の中で、ヘンリー・ウォンがロンドンのバービカン・センター・アートコンプレックスを建てる上での自分の経験を語っていました。

「もしももう一度これをするなら、私は建築家たちを撃ち殺すだろう。彼らは使い物にならない建物を建てた。彼らは人々が実際にここを使うのだということに気がついていないように見える。」(注34)

1、驚くべき相似
世界の各地で、異なる建築家たちがそれぞれの地域の人々から依頼の電話を受けています。互いに関わりなく仕事をしているにも関わらず、私たちは皆、それぞれの地元の状況に対応する中で、市民参加型デザインの必要性に気づきました。

世界各地で市民デザインのテクニックが新しく開発されています。それぞれの開発者は出版物が公けになるまで互いに接触がなかったにも関わらず、発表されるテクニックの性質と結果には共通する発見があり、驚くべき相似性を見せています。そうした共通項は、コ・デザインの経験だけでなく、各地で繰り返し現れました。

2、議論の焦点が建物から創造的な方策のデザインに移る
(第1段落)建築は莫大な創造的エネルギーとして表れますが、そのうちで物理的な建物のデザインは一部分に過ぎません。建築エネルギーの主要な結果は、地域社会の形成です。

(第2段落)地域の人々のデザイン参加という意味での「建築」という言葉は、通常の意味でのそれよりも広いものです。このような建築定義の広がりの中には、地域の活動と組織的な構造のための方策デザインが含まれます。圧倒的な都市化の力に直面しているコミュニティーは、その変化をコントロールする上でまず方策の分野において助けを必要とするためです。

(第3段落)コ・デザインの仕事は、多くの場合、方策の作成に関わりがあります。その対象は、地域のレクレーション用の公園から、大学の学部、コミュニティースクールの憲章、一般企業にまでも及びます。

アメリカ建築家協会がスポンサーしている地域・都市デザイン補助チーム(R/UDAT)は、その基盤となる哲学に、方策の強調という点を反映させています。「私たちの重点は、少なくとも古い意味では、決してデザインが主なのではありません。むしろ、重点は方策に影響する助言をすることにあります。」(注35)

3、建築的な実践の境界を広げる

(第1段落)コミュニティーにおけるイネーブラー(可能にする者)とファシリテーター(容易にするもの)としての建築家の役割を強調することは、伝統からの変化を表します。そしてその変化は、現在の狭い意味での建築家の仕事を存続の危機に陥れるかもしれません。

コ・デザインは、「建築家は、コミュニティーデザインの需要が高まるのに合わせて、それに応えるための新しい技術と、より広い知識を必要とする」ということを発見しました。

(第2段落)イギリスではニック・ウェイトが同じように感じており、こう述べています。「建築家が一般市民の環境的な問題を解決することの大切さを認識し始めない限り、彼らの仕事は廃れるか、さもなければ無意味なものになるだろう。」(注36)

ウェイトはさらに、建築家には考え方の変化が必要であり、建築の学校では通常焦点を当てられることのない経済的、社会的、そして組織的な分野における技術を持って、「私たち」にならなばならない、と続けます。

(第3段落)『ファシリテーターとしての建築家:新しい役割』の著者、デイビッド・ストラウスとマイケル・ドイルも、この見方を支えます。「社会のすべての水準において、意思決定が前述のような方向に向かっていることは明白です。明白でないのは、建築家という職業とその教育機関が、ファシリテーションおよびプロセス・マネジメントというこの新しい分野におけるリーダーとなる機会を掴むか、あるいはプランニングのプロセスにおける重要な技術コンサルタントの一つとして留まることで満足するのか、ということです。」(注37)

(第4段落)こうした事柄は、これからのデザイナーの教育方法と社会における彼らの役割に劇的な影響を及ぼします。カナダ王立建築境界のティモシー・キーホーとジョン・ニールソンは、社会における建築家の役割が変わりつつあるという見方を強調するために、コロンビアにおける革新的なコミュニティー開発に言及しています。

彼らは、これからの時代の建築教育にとって重要な事柄として、経済的、社会的、そしてテクノロジカルな要素を指摘します。さらに、マネジメントの技術を持っていること、コミュニティー組織と協力してストラテジー(デザイン戦略)を作ることも必要です。建築家という職業が未来の潮流を生き延びるためには、新しい技術が建築の伝統的な役割を超えねばなりません。(注38)

4、市民参加型デザインへの動きが高まりつつある
(第1段落)建築における市民参加の需要が高まり、実践されている、という変化を裏付ける証拠が世界各地に現れています。 R/UDATはコミュニティーと共にデザインをしている多くのグループをリストアップしており、それには合衆国内の60の都市のデザインセンターも含まれます。

(第2段落)イギリスでは、1984年5月31日、王立英国建築家協会(RIBA)の150周年記念のスピーチで、チャールズ皇太子がコミュニティーの声を汲み取った建築に評価を示されました。皇太子は、「一部の建築家とプランナーは、この国の普通の人々の気持ちや望みをずっと無視してきた」と述べ、コミュニティー建築がこの問題への実行可能な解決策だと発言なさいました。

コミュニティー建築に賛成するイギリスの建築家ロッド・ハックニーは、これについてこう語りました。「それは大きな衝撃でした。突然、未来の王様がおいでになり、正しいあり方は『現代運動』ではなく、ほとんどの建築家が行っている方法でもなく、コミュニティー建築家が行っている方法だ、とおっしゃったのです。それは、コミュニティー建築のイメージが突然、ずっとそれに反対してきた多くの主流派の人々を飛び越えた、ということを意味します。」(注39)

ハックニーは1987年に2万人の会員を抱えるRIBAの会長職を巡って主流派の建築家に挑戦しました。コミュニティー建築の主張を掲げて、彼は圧倒的な勝利を収めました。

(第3段落)1983年に国際建築家組合が行った内部競技のテーマは、「『イネーブラー』としての建築家」というテーマ宣言の中に見られるように、コミュニティー建築を全面的に支援するものでした。ニック・ウェイツは、これについてこう語っています。

「これはそれ自体が、建築家の役割は『プロバイダー』である、という伝統的な考え方が変化している証拠です。つまり、建築家の新しい役割とは、人々が自分たちの家やコミュニティーのデザインや建築に直接関わることができるようにするための方法と手続きをデザインする、ということです。」(注40)

5、コミュニティーに基づいたデザインがコミュニティーを豊かにする
(第1段落)多くの人が、コミュニティーに基づいたデザインはコミュニティーの暮らしを豊かにする、と発言しました。例えば、R/UDATにはこう書かれています。「(コミュニティー建築の)チームが町にやって来たとき、それまで互いに話したことも、ましてや互いの話に耳を傾けたこともなかった人々が、互いに意見の交換を始めました。」(注41)

(第2段落)クリストファー・アレキサンダーは、家はそこに住む家族の人々がデザインすべきだ、という確固たる理論を掲げ、創造のプロセスに参加することによって、「突然、彼らは非常に溌剌とした、伸びやかで力強い気持ちに満たされるのを感じる」と言います。アレキサンダーは、創造性から生れるこの感情は市民参加型の建築の最も重要な特徴であると確信しています。(注42)

(第3段落)ウェイツはリバプールでの経験について語っています。そこでは疎外されて意気消沈していたコミュニティーの家族たちが住宅組合を作り、自分たちの家をデザインしました。できあがった家は良質で、そこに住む家族の人々やコミュニティー全体の必要性という点でも、出来合いの建物に優っていました。器物破損もなく、ゴミが散らかることもなくなり、そして盗難も止まりました。(注43)

(第4段落)同じくイギリスのピーター・ブチャナンも、建築家の役割は建築環境のデザインにコミュニティーを参加を奨励することだ、と信じています。現代の社会では、人々がコミュニティーに帰属意識を持ち、コミュニティーの課題やニーズを自分のものとして感じられるようにすることが緊急に必要性とされているためです。ブチャナンは、市民参加はコミュニティーのアイデンティティーを強めると確信しています。(注44)

(第5段落)コ・デザインが経験したように、皆が力を合わせて未来に向けて取り組むという行為には、肯定的な効果があります。敵対して戦うというアプローチは、共同的なアプローチに取って代わられます。問題の代わりに機会に注目し、敵対的な議論の代わりに共同的な創造性が主体となります。

6、コミュニティーデザインが結果を豊かにする
(第1段落)コ・デザインのアプローチに対して多くの建築家たちが表明する恐れは、「船頭多くして船山に登る」というものです。彼らは、人々から離れたところで働く孤独なデザイナーだけが創造的な高みへのひらめきを得られる、というのです。しかし、実際にコミュニティーデザインに参加した建築家たちは、これに同意しません。リチャード・ソングは、著名な建築家チャールズ・ムーアがこう述べたのを引用しています。

「個人、そしてコミュニティー全体のエネルギーは、現れたデザインを生き生きとさせ、強めもした。人々がそれぞれの状況で話し合い、必要性を探り、そしてアイディアを共有することで、結果としてコミュニティーの感覚が強まり、個人は互いに近付いた。。。新しい教会を建てるという出来事は、そのコミュニティーのメンバーにとって、一つになり、アイディアを探り、共通の目標へ向けてアイディアを統合するプロセスを祝う機会です。」(注45)

(第2段落)コミュニティーの参加がデザインに活力を与える効果を持つというムーアの言葉を、他の著者たちも繰り返しています。サンフランシスコのデザイン参加コンサルタントであるジム・バーンズは、それを描写して、こう述べています。

市民参加は、「仕事の材料となるリソースを豊かにし、そうすることでコンセプトの地平線を広げます。それは選択肢と代替案を、制限する代わりに解放します。想像力を、先入観のある独断的なコンセプトに制限する代わりに、広げます。市民参加によって、人々は自分たちのコミュニティーでより良い暮らしをするための適切な決定ができるようになります。」(注46)

(第3段落)ウェイツも、コミュニティー建築は「良いデザイン」を保証すると信じています。それはユーザーの望みに適い、ライフスタイルを満たし、そして彼らの希望と期待の真髄を具現するものだからです。(注47)

7、デザインプロセスに入るための様々なアプローチ

(第1段落)コ・デザインのプロセスは、現地での活動に関する話し合いで始まり、続いて現地の性質を知覚するための視察を行い、皆で昼食を共にします。それから参加者たちはコ・デザインの助けで自分たちのアイディアを視覚化します。他の建築デザイナーたちの場合も、よく似たプロセスを経ます。

(第2段落)ジェローム・ダーラックは、カナダの首都オタワの新しいコミュニティーでユーザーたちとデザインに関する話し合いをしたときについて書いています。最初のセッションでは、ボランティアの人たちが現地を調べ、プロジェクトの論理的な根拠について説明を受けました。その際、オタワの街に関する自分の意見を発言する機会が与えられました。ダウンタウンについて、何が好きで何が嫌いか、そして自分はそこに住みたいかどうか、ということです。次のセッションでは、ワークショップの参加者たちがコミュニティーの地図をスケッチし、それに添えるコメントも書きました。

(第3段落)描画エクササイズの主眼は、建築家の事務所に普通にあるような設計図や地図やイラストなどの専門的な図面を避けることで、参加者が威圧感を感じないようにすることでした。さらに、参加者がそれぞれに絵を描くことで、互いの絵にコメントしたり、地図が描き出す様々なライフスタイルを評価することに、人々はそれほど躊躇しなくなります。(注48)

(第4段落)環境に対する知覚を高めるために、絵を描くことだけではなく、他のテクニックも併用します。コミュニティーデザインでは、参加者に自分のすべての感覚を使うように奨励することが大切です。

(第5段落)チャールズ・ムーアは、カリフォルニアのパシフィック・パリセードで「聖マシュー教会プロジェクト」を行った際、ローレンス・ハルプリンの「市民参加」ワークショップ・プロセス(注49)を3つの別々のワークショップとして利用しました。最初のワークショップは現地視察を伴い、そこで参加者たちは現地周辺の様子を学びました。

現地で自分が感じる視覚、聴覚、嗅覚などの知覚に注目し、自分たちの新しい教会へのイメージ、印象、感情、そして望みを書きとめました。それから皆で食事をしました。これは人々の心を一つにするのに役立ちます。

その後、参加者たちはグループに分かれてさらに話し合い、食事の前に出たアイディアを発展させました。その間、ムーアのチームは近くにいて耳を傾け、質問に答え、そして参加者がアイディアをまとめるのを助けました。(注50)

ムーアの「市民参加」プロセスは、幾つかの要素がコ・デザインのものと共通しています。現地視察、知覚の強調、イベントの社会的な性質、そして参加者のアイディアを視覚化することなどです。

(第6段落)R/UDATの報告書も視覚化を強調します。「図は、驚くほど短時間で現れ始めました。複数のコンセプトの相互関係図、場所の図、大きさの図、そして都市のダイナミクス図です。そして、アイディアが目の前で形になるのを見ていた人々の間に高揚感が湧くのが感じられました。鼓動が少し速く打ち始めます。」(注51)皆で視覚化することと高揚感とは、同時に起こるように見えます。

8、全体の前にパーツを考える

(第1段落)前に論じたように、建築家は伝統的に、全体的なコンセプトをデザインして、それから細部のデザインに進みます。コミュニティーデザインは、その逆をするときが一番うまくいきます。まずデザインの中の小さな部分を考慮し、それをコンセプト作りに使うべきだ、ということです。

コ・デザインの流れは住民のライフスタイルで始まり、建物のパーツのデザインへと続き、それからコンセプトに至ります。これは、市民との最初のコミュニケーションがコンセプト・プランの提示であるという伝統的なプロセスの反対です。

(第2段落)フランスのルシアン・クロールは、「集合的なテクスチャー」ではなく「個人的な好みのコラージュ」を作ることに焦点を当てます。(注52)

クロールは、住民が自分の未来を見越してデザインするのを助け、それぞれの人の独自の視覚的な秩序、あるいは非秩序を再生しようとします。例えばアパートのデザインでは、それぞれのユニットがその人のライフスタイルを反映して、非常に異なったユニークな主張をします。視覚的に単調な建物ではなく、バラエティーに富、色とりどりで、そして活力があります。

(第3段落)ドイツではギュンター・ベーニッシュが、個々の部分は全体よりも優先されねばならない、と信じています。(注53)

エジプトでのコミュニティーによる家作りを描いたカナダ放送協会の映画「スペース・トゥ・ビー(居場所)」の中で、ハッサン・ファシーはこのように自分の信念を述べています。

「もしも私たちが一人の人について完全に忘れて何百万人もの人々から始めるなら、そして交通の問題や地域区分や土地利用の観点から始めるなら、私たちは決して正しい解決策には至らないでしょう。そして、ある水準で止まってしまいます。

すべての計画は要素、すなわち一人の人から始め、そこから上がっていかねばなりません。一番上から始めるのではありません。上から始めると決して一人の人のところまで辿り着けないからです。」(注54)

9、コミュニティーデザインの鍵としての視覚化

(第1段落)他の建築デザイナーたちも、絵や模型を使った視覚化に重点を置くということについて語っています。なかでも強調されるのは、視覚化のプロセスを話し合いの手段として使用すること、そして絵や模型はアイディアが発展するにつれて変わっていくということなどです。

この「変わる」という側面は、伝統的な市民対話で提示されるような既に完成された絵や模型を作るのとは異なる種類の技術を必要とします。R/UDATは、絵を「建築家の主な言語」と呼びます。市民のインプットに対処するための新しい技術を身につけた建築家は、一般の人にも分かりやすい図式的な絵を描くことができます。(注55)

(第2段落)アローストリート協会の市民参加型デザインのテクニックは、現地の性質に対する参加者の知覚を描写するイメージマップを中心とします。参加者が自分のアイディアをコンセプト化するのを助けるために、スケッチ、ラインマップ、写真のコラージュが使われます。(注56)

(第3段落)ノッティンガム大学のトニー・ギブソンは、建築家は市民と同じ三次元の言語、すなわち模型を使うことでもっと効果的にコミュニケーションを取ることができる、ということを見出しました。そして、こう付け加えます。

「皆さんはこれを見て、『これでやってみよう』と言いました。だから私たちは皆でそれをやってみて、やはり良くないと思ったら変えました。それでも反対意見が出たり、問題点が見つかったりもしました。その結果『いいでしょう、また違うふうにやってみましょう』ということになって、結局これで合意したのです。」

ある参加者はこう言いました。「それはまるで、自分の考えを視覚的に語るようなものでした。。。私たちは互いの考えを視覚化しました。考えをビジョンへと投影するのです。。。」(注57)

(第4段落)コ・デザインは、テレビ・メディアを利用することによって、意思決定における市民参加を拡大するのに成功しました。テレビスタジオに電話をかけると、視聴者が画面上のアーティストと繋がります。

チャドウィック・フロイドの手法も、コ・デザインのそれと合致します。フロイドが使用した市民参加プロセスは、デザイナーと市民の間の相互作用を高めることに成功しました。(注58)それはデザインプロセスの特定の段階に対応する4回のテレビ・シリーズから成り、およそ1ヶ月の間に放送されました。視聴者は、番組の放映中にスタジオに電話して、ダウンタウン地域の未来について自分の意見を言うように促されました。

(第5段落)最初の番組では、計画の目標と現地の様子が示されます。視聴者からの電話による反応が受け付けられ、アーティスト、この場合はチャールズ・ムーアがスタジオに寄せられるアイディアをスケッチしていきます。番組の間はスタジオの様子が放映されます。電話のオペレーター、建築家、インタビュアー、ダウンタウンの様子を見せるビデオ、スケッチをしている建築家の様子などです。

現場の雰囲気は、高揚感があって多忙を極め、コミュニケーションは非常にオープンです。すなわちアイディアは何でも受け入れられ、結果としてプランニングの土台にするための情報の宝庫が得られます。

10、パラダイムの移行
(第1段落)上に挙げた幾つものケースのすべてにおいて、新しいことを目指す大変な努力の中で、発見の興奮が繰り返されます。私たちの創造的な技術、デザイン知識のすべてが、普通のやり方を超えて拡張されます。開発者のビジョンを越えるような想像力溢れるデザインが市民から示され、会話が花開きます。

ユーザーが関わるプロセスの著しい心地良さは、普通の手法では望むべくもないものです。既にパラダイムは移行し、古いやり方が不十分なものに見えるようになりました。

(第2段落)コ・デザインの経験を描写するうえで、市民参加の分野での他の建築デザイナーたちの貢献を大いに強調したいと思います。「協同的なコミュニティーデザイン」という新しいエキサイティングな手法の発達のために、コ・デザインの経験を彼らと共有するためです。

(第3段落)明らかに、コミュニティーデザインの手法や技術は初期段階にあります。まだ踏査的な発見の段階なのです。この本は、人々と一緒にデザインするという技術を開発していく上で、もう一つの一歩になります。
[PR]
# by ammolitering7 | 2013-06-22 04:07 | 「コ・デザインの手法」

第17章 (イラスト込み)

第4部 デザインが公けのものになる
第17章 市民参加を通して器物破損を防ぐ

1、市民参加が器物破損を減らす:1977年春、BC州バーナビー市、ウェストバーン公園

子供たちが公民館の外壁全体に壁画を描くというこのプロジェクトを通して、重要な市民会議が必ずしも市民の声を代表しているものではないと証明されました。また、市民参加の結果、器物破損が減少しました。

1-1 概要
BC州バーナビー市のウェストバーン公園内にある公民館は補修の必要があり、市の美化委員会のメンバーが「また茶色でなければならないのだろうか」という問いかけをしました。「明るい色はどうだろう?」「しかし、近所の人はどう思うだろう?」

1-2 コ・デザインのワークショップ
(第1段落)コ・デザインは、近所の人々の意見を探るように依頼されました。公民館で行われたワークショップでは、子供を含めた住人たちに立面図の線画とパステルの箱が渡されました。

(第2段落)子供たちは運動場に面した外壁のための色鮮やかなアイディアを描き出しました。驚いた委員会の人々は、あわててもっとたくさんの住人の参加を促しました。大人たちは、周辺の家々に面した壁のために、太陽、アルブツスの木(地元によく見られる種類の木)、雪を被った山、花などの叙情詩的な絵を描きました。

1-3 市民への提示
近所の人々を集めた会議でこれらのデザインが提示されたとき、数人が大声で繰り返し非難しました。あまりの悪評に提案を却下しようかというとき、周辺の家族の意見を知るための調査が提案されました。合計28家族のうち、26軒が「大いに賛成」、一軒が「反対」、そして一軒が「大いに反対」でした。つまり、大いに反対した家族が会議ですべての反対意見を述べていたのであり、市民会議は必ずしも公共の意見の公正な反映ではないという私たちの疑念が確認されました。
f0239150_434362.jpg

(写真)ワークショップで描かれたこの絵を、次の写真の最終的な壁画と比較のこと。(撮影:マーガレット・キング)
f0239150_44624.jpg

(写真)完成した壁画。(撮影:マーガレット・キング)

1-4 器物破損の予想
(第1段落)壁画の下地には、プロのペンキ職人が薄い青2色を塗りました。彼らが通常、市との契約で行う仕事には、地域の住人が参加するということはありません。青い下地が完成したあと、冬になって雨季に入り、数ヶ月の間は作業が中断しました。地域の人々は、心無い者がその間に壁を落書きで汚すのではないかと不安な思いで待ち受けていました。この地域ではよくあることだったのです。ところが、春になっても何も傷つけられていませんでした。

(第2段落)同地域の教師たちは、壁画の下準備と製作に500人ほどの生徒たちを駆り出しました。地元の商店はペンキを寄付しました。プロのペンキ職人たちは刷毛の取り扱い方を助言しました。地元のアーティストたちと近所の人たちも子供たちを手伝いました。

(第3段落)完成して数週間経ったころ、心無い者が壁にスプレーペイントで落書きしましたが、数時間のうちに子供たちがやってきて、ペンキの缶を開けて落書きを上塗りしました。

(第4段落)子供たちは、自分たちのデザインに基づいて作られた建物や空間を熱心に使い、用心深く守ります。誰であれ、散らかす人に対する彼らの叱責はすさまじいものがあります。器物破損は全くありません。

また、バンクーバー市の東部地区にあるグエルフ公園は、建設から2年経ってもゴミが落ちていません。人口の密集した地域で利用者が多いにも関わらず、唯一の破損していたのはツリーハウスの板を留めるボルトの穴が広がって、板がぐらぐらしていたことくらいでした。

この現象は教師たちにはよく知られています。カルガリー市の高等学校の校長はこう書きました。「私は、『もしも子供たちが自分たちのための場所を作り出すことに関わるなら、器物破損はありえない』という考えに心の底から同意します。」(注33)
f0239150_444222.jpg

(写真)子供たちが、あらかじめスケッチしたデザインに沿って公民館の壁を熱心に塗っている。その後、器物破損と落書きはほぼ皆無だった。(撮影:マーガレット・キング)
f0239150_45428.jpg

(写真)壁画はコミュニティーの努力の積極的で力強い表現である。(撮影:マーガレット・キング)
[PR]
# by ammolitering7 | 2013-06-22 04:05 | 「コ・デザインの手法」