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第17章 (イラスト込み)

第4部 デザインが公けのものになる
第17章 市民参加を通して器物破損を防ぐ

1、市民参加が器物破損を減らす:1977年春、BC州バーナビー市、ウェストバーン公園

子供たちが公民館の外壁全体に壁画を描くというこのプロジェクトを通して、重要な市民会議が必ずしも市民の声を代表しているものではないと証明されました。また、市民参加の結果、器物破損が減少しました。

1-1 概要
BC州バーナビー市のウェストバーン公園内にある公民館は補修の必要があり、市の美化委員会のメンバーが「また茶色でなければならないのだろうか」という問いかけをしました。「明るい色はどうだろう?」「しかし、近所の人はどう思うだろう?」

1-2 コ・デザインのワークショップ
(第1段落)コ・デザインは、近所の人々の意見を探るように依頼されました。公民館で行われたワークショップでは、子供を含めた住人たちに立面図の線画とパステルの箱が渡されました。

(第2段落)子供たちは運動場に面した外壁のための色鮮やかなアイディアを描き出しました。驚いた委員会の人々は、あわててもっとたくさんの住人の参加を促しました。大人たちは、周辺の家々に面した壁のために、太陽、アルブツスの木(地元によく見られる種類の木)、雪を被った山、花などの叙情詩的な絵を描きました。

1-3 市民への提示
近所の人々を集めた会議でこれらのデザインが提示されたとき、数人が大声で繰り返し非難しました。あまりの悪評に提案を却下しようかというとき、周辺の家族の意見を知るための調査が提案されました。合計28家族のうち、26軒が「大いに賛成」、一軒が「反対」、そして一軒が「大いに反対」でした。つまり、大いに反対した家族が会議ですべての反対意見を述べていたのであり、市民会議は必ずしも公共の意見の公正な反映ではないという私たちの疑念が確認されました。
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(写真)ワークショップで描かれたこの絵を、次の写真の最終的な壁画と比較のこと。(撮影:マーガレット・キング)
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(写真)完成した壁画。(撮影:マーガレット・キング)

1-4 器物破損の予想
(第1段落)壁画の下地には、プロのペンキ職人が薄い青2色を塗りました。彼らが通常、市との契約で行う仕事には、地域の住人が参加するということはありません。青い下地が完成したあと、冬になって雨季に入り、数ヶ月の間は作業が中断しました。地域の人々は、心無い者がその間に壁を落書きで汚すのではないかと不安な思いで待ち受けていました。この地域ではよくあることだったのです。ところが、春になっても何も傷つけられていませんでした。

(第2段落)同地域の教師たちは、壁画の下準備と製作に500人ほどの生徒たちを駆り出しました。地元の商店はペンキを寄付しました。プロのペンキ職人たちは刷毛の取り扱い方を助言しました。地元のアーティストたちと近所の人たちも子供たちを手伝いました。

(第3段落)完成して数週間経ったころ、心無い者が壁にスプレーペイントで落書きしましたが、数時間のうちに子供たちがやってきて、ペンキの缶を開けて落書きを上塗りしました。

(第4段落)子供たちは、自分たちのデザインに基づいて作られた建物や空間を熱心に使い、用心深く守ります。誰であれ、散らかす人に対する彼らの叱責はすさまじいものがあります。器物破損は全くありません。

また、バンクーバー市の東部地区にあるグエルフ公園は、建設から2年経ってもゴミが落ちていません。人口の密集した地域で利用者が多いにも関わらず、唯一の破損していたのはツリーハウスの板を留めるボルトの穴が広がって、板がぐらぐらしていたことくらいでした。

この現象は教師たちにはよく知られています。カルガリー市の高等学校の校長はこう書きました。「私は、『もしも子供たちが自分たちのための場所を作り出すことに関わるなら、器物破損はありえない』という考えに心の底から同意します。」(注33)
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(写真)子供たちが、あらかじめスケッチしたデザインに沿って公民館の壁を熱心に塗っている。その後、器物破損と落書きはほぼ皆無だった。(撮影:マーガレット・キング)
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(写真)壁画はコミュニティーの努力の積極的で力強い表現である。(撮影:マーガレット・キング)
# by ammolitering7 | 2013-06-22 04:05 | 「コ・デザインの手法」

第16章 (イラスト込み)

第16章 子供たちと一緒にデザインする

1、子供たちが自分たちで運動場をデザインする:1986年5月アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校

教育委員会、都市計画者、政治家など様々な関係機関と協力し、子供たちも参加して、より良い運動場を作るためのデザインをしました。

1-1 概要

(第1段落)ブライアー・ヒル小学校の運動場は、官僚的な実利主義の対象となっていました。風に舞い上げられる砂埃をコントロールするために、教育委員会が運動場全体を舗装してしまっていたのです。治療が病を悪化させるということの良い例です。コミュニティーの人々と学校長は、もっと良い解決策があるはずだと感じていました。

(第2段落)コミュニティー委員会も運動場の改善に関心を持っていました。高速輸送機関の拡張によって公園用地が失われたことに対する補償金もあり、委員会はその資金を運動場の改善のために使うことを検討していました。公園用地は行政と市民との苦い戦いの後で接収されたので、落胆していた市民もこのプロジェクトで精気を蘇らせるかもしれないという期待もありました。

(第3段落)さらに、都市計画課はコミュニティーが将来的に必要なものを明らかにするための計画を開発中であり、運動場に関する議論を通じて出されるすべてのアイディアを歓迎する姿勢を見せていました。コ・デザインは、運動場の改善のためにアイディアを出すことに焦点を当てた一連のワークショップと、別に二つの市民ワークショップを開くように依頼されました。

(第4段落)ワークショップは春の間に一回45分のワークショップのシリーズとして開かれ、まず「壁の町」の絵で始まりました。学校の体育館に90人の子供たちが集まり、賑やかでエキサイティングな描画エクササイズを通して大きな町の姿を描きました。

(第5段落)自分では住みたくないような都市を描いてしまったことに気づいた子供たちは、自分たちが楽しめるような運動場を作ることに集中しました。最初の回は、改善された運動場での活動を書き出したところで終わりました。

(第6段落)体育館での次のワークショップの間、生徒たちは自分が描きたいと思う活動を選び、教室に戻ってそれぞれの描画を続けました。絵は20インチx30インチ(およそ50センチx75センチ)の紙に油性パステルで描かれました。

(第7段落)第3回目では、生徒たちはコ・デザインのスタッフに自分の絵を見せて語り、絵をさらに説明するために言葉を加えました。
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(写真)ブライアー・ヒルの改善前の運動場。(撮影:ビル・ラティマー)
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(写真)改善前、この運動場は完全に舗装されていた。前後の写真を比較のこと。(撮影:メリンダ・コンレー)

生徒たちは次に絵を評価するための基準を定めました。アイディアはどれも良いものであり、以下のように評価されました。

(1)実現しよう!
(2)もっとデザインが必要だ。
(3)お金が掛かりすぎるようだ。
(4)運動場より他のところに向いている。
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(イラストの写真)生徒たちは自分たちの描いた絵に投票し、空中ケーブルを最優先事項として評価した。そして望み通り、空中ケーブルが作られた。(撮影:ビル・ラティマー)
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(イラストの写真)水飲み場も子供たちの最優先事項の一つだった。(撮影:ビル・ラティマー)

アイディアは、造園に関する単純なアイディアから、大観覧車とビデオアーケードがある大いに込み入った賑やかな中道まで、幅広いものでした。最も人気のあったアイディアは、水飲み場、芝生、小山、木、空中ケーブルなどシンプルなものでした。
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(イラスト)子供のワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市イングルウッド地区)
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(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校)

1-2 子供、葛藤、そして合意
(第1段落)子供のワークショップのあとに行われた市民ワークショップには子供も含めた大勢の人々が参加し、より良い運動場のために多くの、時として相反するアイディアが出されました。例えば、あるグループは別のグループが静かな遊びのために取っておいた場所にアクティブな陸上スポーツを描きました。

(第2段落)そうした相違は、ワークショップで出されたすべてのアイディアをを大まかなデザインとしていくつかの部分にまとめることで解消されました。その後、コ・デザインのスタッフは一週間かけてワークショップの絵を分類しました。例えば、アイディアの一部は親が子供を送り迎えするときの待合場所に関するものでした。階段式の観覧席というアイディアもありました。こうしたパーツは、現地のおよその場所をあてがわれ、必要とされる空間の大きさが現地設計図上に吹き出しで示されました。重複、あるいは相反する用途が描かれた場所もありましたが、この時点では直接的な解決策を出そうとはしませんでした。

(第3段落)次に開かれたワークショップでは、前回の参加者たちが再び出席して、コ・デザインのスタッフが作成したこれらのパーツやコンセプトを評価しました。以前のワークショップからしばらく時間が経ち、考えを見直すことのできた参加者たちは、冷静にパーツの評価を行いました。

一旦時間を置くことの利点は多大なものがあります。これによって現地の用途に関する将来的な葛藤を排除し、何が最良かということについて一致した見方を得ることができました。
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(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校)

1-3 その他のユニークな側面
ブライアー・ヒルのワークショップは、その他の面でもユニークでした。まず、建築予算があらかじめ分かっていました。通常、コ・デザインのワークショップが開かれるときは実際の予算はまだ認可されていません。面白いことに、これは提案の種類や幅にあまり大きな影響を与えませんでした。予算によって制限されている、あるいは抑え付けられていると感じた人はいなかったのです。

また、ボランティアとして参加した造園建築家がプロセスの最初から最後まで深く関わりました。彼女の専門的な知識が得られたのはとても価値のあることでした。

1-4 結果
(第1段落)おそらく、コミュニティーにとって最も必要だったのは、新しい運動場そのものではなく、士気の高まりだったのでしょう。人々は何よりも達成感と満足感を求めていました。これはコ・デザインを雇用したコミュニティー委員会が初期の段階で述べたことでした。

人々は確かに士気の高まりを手にしました。参加した人々は皆、勇気付けられ、意気揚々とワークショップを後にしました。最終的なデザインと建設に向けて前進する心の準備ができたのです。

(第2段落)コミュニティー委員会は、このワークショップの結果、最終的なデザイン、融資、および建設を進めるための貴重な参照点として機能する基本的なコンセプトプランを得ました。コンセプトプランは、市、教育委員会、隣接する土地の地主たちなど、運動場の改善に実際に関わる多くの関係機関と対処する上で便利なツールです。

また、コンセプトプランには、最初に提示された必要条件が満たされていることを確認するために建設の結果を照らし合わせるときに使う評価基準も含まれています。

(第3段落)カルガリー市教育委員会とカルガリー市公園レクレーション協会は、ブライアー・ヒルのコミュニティー委員会と協力して新しい運動場の設計と建設を実施しました。唯一、子供たちの希望がそのまま満たされなかったのは、草で覆われた小山の代わりに岩の小山が作られたことです。カルガリー市の乾燥した気候の中で子供たちが頻繁に使うと、草の小山はすぐに埃になってしまうだろうと考えられたためです。

(第4段落)運動場は1987年秋にオープンし、子供たちがピエロと一緒にパレードしたり風船を空に飛ばしたりしてお祝いされました。
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(写真)空中ケーブルが設置された。(ソース:アルバータ州カルガリー市ブライアー・ヒル小学校)(撮影:メリンダ・コンレー)
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(写真)ワークショップは運動場の設計者に明確な方針を与えた。希望が多かったのは、待合用のベンチと登って走り回るための小山だった。(撮影:メリンダ・コンレー)
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(写真)岩の小山。(撮影:メリンダ・コンレー)
# by ammolitering7 | 2013-06-22 04:02 | 「コ・デザインの手法」

第15章 (イラスト込み)

第15章 特定の建物

1、特定の用途のための施設をデザインする:1986~87年アルバータ州カルガリー市ロバート・マククルア合同教会

未来の教会施設のプログラミングとデザインにおいて、信者たちがデザイナーを直接支援しました。

1-1 概要
1986年9月、ロバート・マククルア合同教会の建築委員会は、未来の教会施設の計画とデザインに参加型の手法を取り入れる意思を表明しました。委員会は、信者たちの創造的なエネルギーとアイディアを取り入れることでプロジェクトへの熱意と関心を高めようとしていました。

委員会は、(子供と高齢者を含む)信者全体の参加は有意義なもので、メンバーの「信仰の家族」としての感覚を強めると感じていました。また、カナダ合同教会に申請書を出して資金援助を要請する段階になったら、申請書に盛り込まれたデザイン案は信者全体が共同的な努力をした結果である、という事実はおそらく有利な結果をもたらすでしょう。

1-2 信者の参加を促す

(第1段落)コ・デザインのワークショップは、教会員がデザインの可能性を探ったり、共通の目標を明らかにしたり、優先順位を定めたりするのに役立ちました。信者は100人以上いて、その数はさらに増えつつありましたが、そのメンバーたちが合意を探るための手段となったのです。

(第2段落)信者たちは自らボランティアを組織化する仕事を買って出ました。最初のワークショップは、12月の肌寒い日曜日に建築予定地近くの学校の体育館で行われました。その頃、信者たちはその体育館で礼拝を行っており、ワークショップは礼拝の直後に開かれました。ワークショップ・イベントはまず子供たちから始まり、「壁の町」エクササイズを通して、自分たち自身の環境を計画することの問題と可能性について学びました。

(第3段落)続いて、信者たちは新しい教会で行うであろう様々な活動について考え、それを口々に述べて大きな紙に書き出しました。このエクササイズを通じて、新しい建物が内包することになる様々な機能のすべてが描写され、教会の「一日の暮らし」の完全な輪郭が生まれました。

(第4段落)それから皆が車に分乗し、近くにある建築予定地を訪れました。コ・デザインのアーティストたちの周りに信者たちのグループが集まって、これまで想像の中でだけ温めていたアイディアを熱心に議論し、アーティストはそれをメモに取りました。

子供たちは、新しい遊び場がどのように配置されるかと想像しながら、現地に盛り上げられた土の山の間を跳ね回りました。牧師と聖歌隊の指揮者は、聖歌隊の練習部屋に朝日が当たるように配置するにはどうしたらいいかと議論しました。

婦人信者たちは、例年の七面鳥料理の日に持ち寄った料理を車から運び出すのを便利にするために、搬出口をどのようにしたらよいか、と議論しました。誰もが自分がよく馴染んだ特定の活動との関わりで現地を見ていました。

(第5段落)午後の作画ワークショップは、創造的な議論と絵で賑わいました。コ・デザインのアーティストと信者たちは、活動を書き出したときに挙げられた項目からそれぞれどれか一つを選び、そのための理想的な環境を明らかにする作業を始めました。

夕方には、礼拝、社交的な活動、託児所、子供の教室その他の教育プログラム、運営とサービス、音楽のリハーサルおよびキッチンのための環境など、マククルアの信者たちの暮らしを描いた大きくてごちゃごちゃした絵が体育館の壁に並びました。
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(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市、ロバート・マククルア合同教会)
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(写真)現地の視察:新しい教会のための条件をあらかじめ調べる。(撮影:ジョン・マッケンジー)
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(写真)新しい教会のための作画ワークショップ。(撮影:ジョン・マッケンジー)

1-3 パーツのデザイン
(第1段落)コ・デザインのスタッフは、これらの様々な個々の絵をパーツとして描きましたが、次にこれらを一つの全体にまとめなければなりません。パーツは、そのままではまだデザインの問題への解決策ではありません。それはむしろ、問題は何なのかと明らかにするための、そして信者たちに礼拝の場をデザインすることの複雑さを理解してもらうための一歩なのです。

(第2段落)その後およそ2週間に渡ってコ・デザインのスタッフは絵に含まれるメッセージを分析しました。まず、それぞれの絵に秘められた活動のパターンを探し出し、クリストファー・アレキサンダーの「パタン・ランゲージ」に示されているようにパターンのリストをまとめました。

表れたパターンは、ワークショップで描かれた複数の絵の間に共通項を作り出しました。幾つかの要素が姿を変えながら繰り返し表れていることが分かりました。

(第3段落)続いて、教会の暮らしの中で特に重要なストーリー(側面)を表す絵コンテが描かれました。結婚式のストーリー、牧師のストーリー、日曜学校のストーリー、聖歌隊の練習のストーリーなどです。これらは、様々な活動の間の繋がりを一時的かつ物理的に探る助けとなりました。既に、建築的な形と設計図上の配置という形で、信者たちのコメントの結論が明らかになり始めていました。このようにして、コ・デザインのプロセスはプログラミングとデザインを融合させました。

(第4段落)また、ワークショップの絵と言葉による描写は、物理的な空間の必要条件、空間的な関係、隣接地との関係などの側面からも分析されました。これにはもっと伝統的なプログラミングの手法を使って、ワークショップの資料から情報を数量化し、プログラム的、技術的かつ建築的な用語で表現し直されました。

1-4 優先順位を明らかにする
(第1段落)コ・デザインのスタッフは調査の結果をもって信者たちのところへ戻り、信者たちにあらかじめ番号を振った回答用紙を使ってすべての絵を評価するように頼みました。用紙には、自分の個人的な好みに基づいて活動の優先順位を記録し、また、活動が行われる場所についてのコメントをするように指示されていました。評価は単純化された評価方式(1、2、または3)でなされました。

(第2段落)この2回目のワークショップは少々の時間を置いてアイディアを考え直す機会になり、最初のワークショップで出た多くのアイディアが改変され、あるいは明確化され、あるいは却下されました。信者たちがすべてのアイディアを一度に見直して比べることができたからです。これには活発な議論が伴い、信者たちの間で優先順位に関する討論と質問が交わされました。

(第3段落)「本当に託児所のための別の台所が必要だろうか?」、「これとこれは同じ部屋に組み込むことができそうだ」などです。こうやって信者たちは自分たちの前にあるエキサイティングな可能性に気づき始めました。重要なのは、彼らがこの結論に自ら達したということです。

(第4段落)教会の信者たちのような限定されたグループには、幾つかの特徴があります。おそらく、他のどのユーザー・クライアントグループよりも、彼らはずっと短時間で、非常に高い水準の合意に達することができます。おそらく、価値観の好み、文化的な繋がり、および社会的な背景におけるメンバーの相似が理由です。

これは、そのようなグループには内部の葛藤や相違がないということを意味するのではありません。コ・デザインの手法は、これらの相違に焦点を当てるのではなく、彼らが合意する部分に焦点を当て、内なるコミュニティーの感覚を強めるのを助けます。このワークショップによって、資金援助の申請時にカナダ合同教会に統一した意見を提出した際、信者たちにとって有利な結果となりました。
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(イラスト)ロバート・マククルア合同教会のためのコンセプト画:
A.立面図。
B.平面図。

# by ammolitering7 | 2013-06-22 03:53 | 「コ・デザインの手法」

第14章 (イラスト込み)

第14章 メディアの利用

1、革新的なコミュニティーテレビ:コ・デザインにテレビ上で電話参加する

コ・デザイン・ワークショップへのテレビ上の電話参加は、家でベッドから出ることのできない人にも、あるいは長時間に渡る市民会議に参加する時間のない人にも、計画過程への参加を可能にします。

1-1 概要
(第1段落)コ・デザインのテレビでの電話参加ワークショップは、都市計画とコミュニティー開発という事項にもっと幅広い市民参加を促すため、1980年に開発されました。この手法では、双方向の対話のためにテレビを創造的な方法で利用しました。視聴者がテレビ局に電話して画面上のアーティストと繋がり、アーティストが視聴者の指示に従って描く、というものです。

この手法では、デザイン対話の視覚的な面に重点を置くことで、テレビの視覚的な可能性を十分に利用します。視聴者はアーティストの姿を見ることも声を聞くこともでき、テレビ局のスタジオで絵ができていくのを指図することができます。

(第2段落)プログラムが進行するにつれて、電話の向こうの人とアーティストの間に緊密な一対一の対話ができていきました。同時に、目の前でできていく絵は視聴者の興味を引きつけ、市民参加が実現しているということを大勢の人々に証明しました。これはおそらく、テレビでの電話参加の最も重要な側面です。
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(イラスト)テレビでの電話参加:計画会議の様子。

(第3段落)能力のあるアーティストが絵を描いている様子は、それだけでも注目を集めるテレビ映像です。それに言葉による描写が伴うことで、テレビで作画の様子を見ている他の人々は、それを身近でリアルなものとして感じることができます。

1-2 テレビ参加の様々な適用例

コ・デザインの電話参加はカルガリー市で3回行われ、大きな成功を収めました。最初は1979年に都市部のアールトン地区で再開発計画のために開催されました。2回目は1981年にカルガリー市のシビックセンター地区を対象に行われました。これは全国建築競技会に提出するために市役所の増築デザイン条件を確立することが目的でした。

3回目は1983年に行われ、高齢者施設「ゴールデンエイジ・クラブ」のデザインのために優先する設備を決定することをテーマとしていました。

1-3 テレビのためのプロセス

(第1段落)プログラムはデザイン提案の紹介で始まり、現地の様子を見せ、現地に関係する活動を放映します。それから視聴者に向かって、テレビ局に電話して自分は現地をどのように使いたいか、どんな場所になってほしいかを描写するように頼みます。

電話をかけてきた人は、まず受付係と話して名前と電話番号と住所を伝えます。これは受付係がプログラムの後で電話を掛け直して、できあがった絵を一緒に見ることができるようにするためです。また、電話番号を調べて確認することによって、いたずら電話を防ぐためでもあります。

その後、電話の主はスタジオの中でテレビに出ている司会者に取り次がれます。司会者は電話の向こうの人に挨拶し、アーティストがどんな質問をするのかを伝えます。それから、アーティストの手が空くまで会話をもたせます。

(第2段落)順番が来ると、ヘッドセットを被って襟にはマイクをつけたアーティストが電話口に出て、前述の対話における描画のテクニックを使って作画が始まります。絵が出来上がっていく過程では、書記が詳しいメモを取ってアーティストを支えます。

スタジオのカメラは出来上がっていく絵の様子を撮影して放映します。画面分割のテクニックによって、同時に4つまでの絵の進行状況を伝えることができます。スケッチと対話は6~8分で終了します。電話の主は、番組を見続けるように、そしてスタジオから約20分後に電話がかかってくるのを待つように指示されます。

(第3段落)画面上でラフに作られたスケッチは、アーティストの助手が完成させます。助手はメモを読みながら色と細部を加え、完成したら壁に貼って放映に備えます。受付係が先ほどの視聴者に電話を掛け直し、スタジオの司会者に繋げます。出来上がった絵が画面上に現れると、アイディアを出した視聴者は期待通りにできたかどうかをコメントし、変更や追加があればアーティストにその旨を指示します。

(第4段落)2時間のプログラムが終わる頃には、およそ20件の電話が受付られます。すべての絵が放映された後で、各家庭の視聴者は電話で、またはあからじめ郵送されていた書式に記入したりして、優先順位の決定に参加することができます。

(第5段落)プログラムが進行している間、スタジオではコミュニティーからの訪問者グループによる小さなワークショップもライブで行われます。このライブのワークショップの様子は電話と電話の間に間断的に放映されます。

(第6段落)テレビワークショップは、スタジオ内の活動の様子も含むカジュアルなイベントです。視聴者、スタジオの受付係、司会者およびアーティストの間の複雑なコミュニケーションを滑らかに運ぶために、慎重な準備が必要です。
# by ammolitering7 | 2013-06-22 03:50 | 「コ・デザインの手法」

第13章 (イラスト込み)

第13章 都心部のコミュニティー

1、コミュニティーの活力の問題に取り組む:1987年5月アルバータ州カルガリー市イングルウッド地区

低所得の都心部のコミュニティーが町の中央商店街を改善する方法を模索し、合意されたコンセプトプランに達しました。

1-1 概要

(第1段落)ほとんどの都心部のコミュニティーには、買い物をしたり友人に会ったり、そぞろ歩きや食事やウィンドウショッピングをしたりするための昔ながらの中央大通りがあります。イングルウッドも例外ではありません。そして、他のコミュニティーの中央大通りと同じく、ここも都市部からの圧迫に苦しんでいました。

交通量が多く、建物は老朽化し、空き店舗が多く、中古車店といかがわしい夜の店が急増する、というものです。一方で、多くの良い点もありました。市役所での交渉に精通し、都会での生活勘のある強力なコミュニティー団体がありました。同地区には、地元のビジネスを改善するための特別な資金援助プログラム、および一般住宅地の調査が予定されていました。

また、通りには19世紀末前後に建てられた多くの建物があり、近くの川岸区域との連結の可能性もあり、毎週土曜日の朝に開かれる青空市場も賑わっていました。

(第2段落)商店街には改善が必要でした。コミュニティーに任命された都市計画者とコミュニティー委員会は、コ・デザインに依頼してワークショップを開くのが最良の手段だと考えました。

1-2 コ・デザインのプロセスを一歩先に進める

(第1段落)コ・デザインのスタッフは、コミュニティーの鍵となる人々や市の担当者と協力して、ワークショップの結果を実際のコンセプトプランへと拡大しました。子供たちを対象とした学校でのワークショップと大人を対象としたワークショップの後で、アイディア画は商店街のためのコンセプトプランにまとめられました。

これは、コ・デザインのワークショップで描かれた絵と、都市計画者や建築家が描く普通の初期デザインとを繋ぐ役割を果たしました。コ・デザインのスタッフは、ワークショップで出されたアイディアをもとに、単にそれを描き直す以上のことをしたのです。それは、市民ワークショップで描写された様々な活動を体系化する、という作業です。コンセプトの主な要素は、実際の物理的なデザインというより、方針と方策の開発でした。

(第2段落)例えば、「専門店街を作る」というアイディアは、ワークショップの直接の結果ではなく、ワークショップで出された「建物を保存する、小型の公園を作る、いろんな種類の買い物ができる」などの幾つかのアイディアを整理するための方法でした。言い換えると、ワークショップの結果は次のデザインの段階、すなわちコンセプトプランへと発展するのに使われました。
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(イラスト)ワークショップ画。(ソース:アルバータ州カルガリー市イングルウッド地区)

1-3 多くの人々に見せる
(第1段落)ワークショップでできた色付きの絵は、その後二週間カルガリー市の市役所で展示されました。絵にはワークショップのプロセスを短く描写した文章が添えられました。この展示は、市民デザインの過程の延長線上にあります。ワークショップに参加しなかった人々に、何が行われたかを知ってもらうことができるようにするのです。

(第2段落)イングルウッドのコミュニティーにとっては、ワークショップは終わりではなく始まりでした。彼らは、現在空き地となっている産業用地の見込み利用者を交えて、コ・デザインのワークショップを近い将来に2回開くことを検討しています。また、コ・デザインの手法を今後も継続的にガイドラインとして使う計画です。参加者の目から見たこのワークショップのさらなる詳細は、19章を参照してください。

(第3段落)都市計画者にとっては、コンセプトプランは作画ワークショップのばらばらなアイディアを実用的な方策にまとめるものになりました。
# by ammolitering7 | 2013-06-22 03:44 | 「コ・デザインの手法」